カニ鍋



アレは忘れもしない母の日。
俺は部活の書類仕事で一人部室でパソコンを叩き、近所の
アウトレットストアでヤンキーファッション一式を揃えて帰るところだった。

時刻は2時30分。このまま帰ってヒッキー化するのにはもったいない時間だ。
俺はいつもどおりGに電話し、ビリヤードでもどうかと誘い
ヤンキーファッションに身を包みススキノへと繰り出した。


3時過ぎにGの家に着き、一服して出かけた。
当初はビリヤードの予定だったのだが、何故か「新しくなったロビ地下を見よう」という話になる。早くも脱線。
そこで神の悪戯とも言える運命的な出会いを果たす。

G「カニ・・・安いなぁ。」

俺「ほんとだ・・・。カニ鍋でもしたいねぇ。」

軽はずみな発言が後々妙なネタに繋がる。
ロビ地下の六花亭で菓子を買い、スターバックスに持ち込む。早くも大空魂全開。

その後、俺の愛するYESが潰れた後にできたドンキホーテ(道内初)を覗きに行く。
その途中で若より電話が入る。

若「いやーやっとバイト終わったよ。疲れた疲れた。」

俺「お疲れ様。じゃあ来い。

K「えっ・・・。


半ば強制的に合流。電話をかけたが運のつき。
合流後もドンキホーテをうろつき、嫌な客としてのポイントを稼ぐ。
ソファー売り場のチャッカマンを笑いつつ退店。


その後、何か食べようという話に・・・なったと記憶している。
何せ唐突だったのでよく覚えていないのが悔やまれる。


若「アレだな、鍋でもやりたいもんだな。」

G「そういやロビ地下見に行ったんだけどさ、カニ安かったよ。」

若「カニ鍋なんてやりたいねぇ・・・。」

「今日やるか。」

若&G(始まったよ・・・。)


いつも通りなら言うだけで終わるところ。だが、今日の俺達は一味違っていた。
何故か3人が向かった先は狸小路の瀬戸物店。
店頭では母の日でカーネーションを配っている。

店員さん「お母さんにカーネーションでもいかがですか?」

3人「いえ、実家じゃないんで・・・。」

そして目的である、いや、いつの間にか目的となっていた土鍋を探し2階へ向かう。

俺「うわ・・・土鍋高いなぁ。」

若「値切るでしょうここは。」

G「どう言って?(つーか狸小路だぞここ・・・。)」

「母の日だって言って。」

俺&G「「いや、さっき実家じゃないって言ったやん!」」

若「ちっ。」


結局土鍋をあきらめ、とりあえずロビ地下へカニを買いに向かう。
しかし、安いといっても一杯1000円。貧乏学生にはちと辛い。
ここで、本日2度目のチャレンジが行われる事となった。

若&G「「んじゃ、管理人。任せた。」」

俺「(吐血。)いや、任せたって・・・。」

G「大丈夫だって、母の日だし。」

俺「・・・・・・・・・・・・・・・。」

G&若「「んじゃ、俺ら遠くで見てるから。」」

俺「・・・任しとけ!(虚ろな目)」


あの日の俺には神が宿っていたかもしれない。
普段、俺は札幌ではいつ関係者に発見されるかという恐怖から自分を押し殺しているところが多い。
だが、この日は違った。怖いものなんてない。母の日だし!

俺「すいません、この毛がに安くなりませんかね?」

店員「えっ・・・すいません、ちょっと聞いてきます。」

やはり決定権のない店員だったか・・・失敗したか。
いや!この程度で引いてどうする!今日は母の日だぞ!

店員「すいません、この値段もかなり無理してるそうですので・・・。」

俺「あの・・・母がカニが好きで、今日ぐらい食べさせて やりたいんです!

(店員、目に見えて固まる。)


店員「では、もう一回聞いてきますので・・・。」


勝った。勝ったぞ!俺は勝った!
見事値引き交渉に成功し、4杯のカニを手にドンキホーテへと向かう。
今度の目当ては土鍋。さすがにドンキホーテで値引き交渉する気はないが。


だが、意外にも土鍋が見つからない。どこを探しても見つかるのはチャッカマンばかり。
結局、鉄製のいかにも家庭科で使いそうな鍋を購入し、一路若宅へ。


若宅到着後、しばしデジカメでカニの写真を取って楽しむ。
包丁を突き立てた罰が当たりそうな写真。この写真が今回の話に大きなオチを付けてくれたわけだが・・・。

まずは4匹のカニを鍋にぶち込み、水だけで煮る。もとより茹でてあった物だけに、
硬くなるのを心配したがそうでもない。なかなか上々の出来だ。

3人「(゚д゚)ウマー」

しばしカニをむさぼる3人。

俺「・・・・・・・・・・・・・・・。」

G「・・・・・・・・・・・・・・・。」

若「・・・・・・・・・・・・・・・。」

俺「・・・・・・・・・・・・・・・。」

G「・・・・・・・・・・・・・・・。」

若「・・・・・・・・・・・・・・・。」

俺「・・・・・・・・・・・・・・・。」

G「・・・・・・・・・・・・・・・。」

若「・・・・・・・・・・・・・・・。」

俺「何か喋ろうや!?」

若&G「食えよ。」

俺「はい。」


カニを食べるとなんで人間は無口になるのかな・・・なんてことを考えつつ、
ビールを傾けながらの至福の時。しばらくカニなんて食べていなかった事もある。
しばらく後、大体片付いた皿を前に思い出したように雑炊を作ろうと誰からともなく言い出す。
100円ショップの土鍋と茹で汁を使い、ポン酢のみで味付け。シンプルイズベスト。

3人「・・・(゚д゚)ウモァー!」

こりゃすごい。カニさん万歳。カニ鍋マンセー。包丁突き立てたりしてごめんね。
そんなこんなで俺たちのカニ鍋の夜は更けていったのでした・・・。




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