アジアンダイニング ホアンタム
~最後に裏切る飲食店の章~
この店に初めて足を踏み入れたのは去年11月ごろだったと思う。
その日、Gの家に遊びに行った管理人は何も食べていないことに気づき、
時間的にも余裕のあることからGとともに夜のススキノへと繰り出した。
こういった場合には居酒屋へ直行というのが普通だろうが、あいにくそうはならない。
管理人も友人Gも普通ではないのだ。あらゆる意味で。
俺たちは人ごみを嫌い、狸小路横の路地へと迷い込んでいった。
俺もGもかなりのラーメン好き。この辺り一帯のラーメンは二人でほとんど食べ尽くしてしまっていた。
いまさらラーメンもなぁ・・・と思いつつ俺達は当てもなく歩いていた。
すると、妙に気を引く店を見つけた。
その店は店頭に松明を灯し、エキゾチックな雰囲気を醸し出していた。
まさにアジアンライク。
店の入り口には池まであり、さながら異国へ迷い込んだような印象を受ける。
俺達は誘い込まれるように店内へ足を向けた。
席に座る。おぉ、いい店内ではないか。
バーのような造りで小洒落ているのだが、天井の、そう、
ガンダムに出てくるコロニーのようなファン。これが実に気持ちいい。
メニューに一通り目を通す。
む、少し高いか。しかしテレビ等でよく聞くようなメニューが並ぶ。
「食べたい」と思わせるメニューだ。
とりあえずは飲み物を注文。俺はこの店でタイガービールと巡り合った。
Gはソフトドリンクを頼む。軟弱な奴だ。
・・・そう。このGのオーダーが考えてみればすべての始まりだったのかもしれない。
「ジャガイモとブルーベリーのスムージーを。」
・・・・はい、アウトぉー。
メニューハズシ王G誕生の瞬間である。
マズイ。あまりにマズイ。何だこの味。何かを思い出す。
俺のビールは美味かったのに悲惨な男である。
彼はこの後、ありとあらゆる飯屋でハズシていくのだが、それはまたの機会。
俺達はその後レッドカレーやタイ風焼き飯などを頼み、穏やかな一時を過ごし店を出た。
料理の味は実によく、ベトナム風生春巻きなどは実に秀逸であった。
そうして、俺達は一度目のホアンタムを後にした。
そして、12月も半ばに差し掛かったころ。
俺達は再びホアンタムへと足を向けた。
それが大きな間違いであると知らずに・・・。
再び訪れた店内。前と変わらないいい雰囲気だ。
俺はタイガーを、Gは無難なソフトドリンクを頼む。
今回は冒険はしない。妙な暗黙の了解が俺たちにはあった。
ラオス風焼き飯、牛肉のタタキなどに舌鼓を打ち、2時間を経過しようとしていたころ。
俺達は実に甘い物好きで、前回デザートを頼み損ねたことを後悔していた。
そこで俺はココナッツミルクのパフェを頼む。無難。つーか食べたかっただけだが。
そして、真打。メニューハズシ王G。
「ジュレとグラニテのレモンムースパフェ。」
またもや、またもややってくれた。
酷い。これを酷いと言わずして何を酷いと言うのか。それくらい酷い。
不味いとかいうレベルではないのだ。
だって床屋の髭剃りクリームの味したもの!
まぁ、誰か連れてきてこれを食べさせるっていう楽しみはできたがな。
俺達は半泣きで店を後にした。
冒険とかじゃないんだ、という事を知り、また一つ大人になって・・・。
ホアンタムの話はここまで。
店のマッチにはホワンタムって書いてあるけどまぁいいや。
最後に裏切る店ホアンタムよ、また行くぜ。
ジュレとグラニテのパフェよ、永遠なれ。
メニューから消えたりすんじゃねぇぞ。
アジアンダイニング ホワンタム