Case:12
大空BR法


昨年の夏、それは起こった。
あまりに暇な住人たち。
暴れたいだけのバカガキども。
そして調達された水鉄砲。
恐るべき計画は実行へと移された。


大空BR法序文

第1条 武器は水鉄砲と限定する。

第2条 服装は上に限り白のワイシャツと限定する。

第3条 携帯は濡れるとまずいので置いていくように。

第4条 タバコの携帯は自由。

第5条 行動範囲は大空中央公園(以下犬公園)と限定する。

第6条 敵前逃亡は死刑。

第7条 煙幕(煙玉)の携帯を許可する。

第8条 補給地点(東屋)は非戦闘区域とする。

第9条 水鉄砲にはケチャップを溶かした水を使用する。

第10条 ワイシャツが赤く染まった時点で死亡。

第11条 一人を残して全員が死亡するまでゲームは続けられる。



第1回大会報告


午後12時を回った頃、作戦行動を開始。
各自自宅へと戻り、白のワイシャツとジャージを調達。
犬公園東屋へと集合した。
すでにそこには人数分以上の水鉄砲とケチャップ臭い水の入った
ペットボトルが数本用意されていた。
現場に漂う妙な緊張感。
おのずと口を開いた御月が言った。

「やりましょう!」

それを合図に各人がワイシャツ姿へと着替え始める。
多くを語る必要はない。わかっているのだ、何が起こるのかを。
全員着替えたところで、ジャンケンで順番を決める。
一人は後ろへ回り、水鉄砲を思い思いに並べ替える。
その状態で後ろを振り返らず「右から2番目」などの指定をして
装備する水鉄砲を選択するわけだ。

そしてジャンケンで勝った者から順に水を装填し、東屋から走り去っていく。
後ろを振り返るものはいない。というか既にテンぱってる。


開始から10分程度が経過した時点で、すでにお互いに見失っている。
意外と狭いと思われた戦場だったが、夜の帳の中で木陰などに身を隠すと
不思議なくらい発見されないことがわかる。
だがやはり白のワイシャツは目立つため、木陰から移動した一瞬に戦闘に入ることが非常に多い。

「オイ、誰だ!?いるんだろう!?」といった声が公園に響く。
そこはさながらゲリラ戦。木陰から飛び出し銃を向ける。
その途端にもう一方の木陰からもう一人が飛び出し、銃を構える。
この場合はこの3人目の男が鍵を握ることとなる。
この者の判断により情勢は一挙に傾くわけだ。
だが、2人で一時的な共同戦線を張った際ももう一人に常に気を配らなくてはいけないわけだ。
このゲームに味方など存在しない。最後の一人になるまで繰り返される殺人ゲーム。
その中で、第1回大会において筆者がほとんどダメージなしで優勝した事は
まさしく奇跡と呼べるに相応しい出来事であるだろう。




だが、本当に奇跡なのは

夜中の公園
20歳の男
数名でワイシャツに身を包み
明らかに不釣合いな
水鉄砲を肩に掛け
煙玉を投げながら
大声を張り上げて
写真まで取りながら
3時間暴れまわっても
逮捕されなかった事だろう。

・・・これが大空っ子です。


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