CFP田井秀道の「相談事例シリーズ・・・84歳の相談者」最終回
「84歳の相談者その4」
《84歳の相談者は、日経平均株価が一定以上に変動した場合償還金が連動して削減される高配当投資信託を購入していました。》
相談者である84歳の未亡人に仕組み商品を勧めた金融機関と二度ほど直接会って話し合いました。金融機関側の言い分は、概略すると以下の通り:
「本人(私の相談者)は5年ほど前から投信を購入しており、一部商品の売却もしており、現在保有の2商品もその流れで購入したものであり、金融商品売買の経験者であると認識している。勿論、各商品を勧める都度に商品説明をしており、本人もその内容を理解した旨の担当者の内部メモもある。従って、当行としては、行内規定に則り、適切に処理していると考えている。」

開示できる唯一の書類として、各商品の購入申込書と投信口座開設申込書をみせてもらいました。7年前(本人77歳時)の日付がある投信口座開設申込書には、有価証券投資経験:なし、資金の性格:使途確定資金、投資目的:貯蓄型と記されています。この点を質すと、「金融商品購入申込書〈“リスクを理解した”との文言が印刷してある〉に本人が署名・押印しているので口座開設当時の申告内容は変更され、その旨行内の記録が更新される」との返答。三千万円強の定期預金のうち、その半分以上の資金をリスク性のある商品購入を勧めた理由を問いただすと、「本人は比較的裕福であり、当行以外にも資産があると認識しており、この程度のリスク資産の割合でも問題ないと判断し、且つ、本人の理解のうえで購入してもらっている」との返答。本人は預金や年金等で十分暮らしていくことができ、年齢的にも今更リスク商品を購入して利回り向上を図る必然性は全くないと思うが、貴行は当件に関して「適合性の原則」をどう考えているのか、との問いには、無言のまま、返答なし。 結局、話し合いは平行線をたどったまま、終ってしまった。
今回の相談事例で、身近に相談できる相手が居らず、且つ、自己責任で投資判断ができるだけの知識を持ち合わせていない人が社会にいることを実感しました。そういう人達に少しでも役に立つためにFPとしてどう行動していったらよいのか、考えさせられた事例でした。 《終了》
CFP田井秀道の「相談事例シリーズ・・・84歳の相談者」第3回
「84歳の相談者その3」
《84歳の相談者は、日経平均株価が一定以上に変動した場合償還金が連動して削減される高配当投資信託を購入していました。》
どのような経緯でこの商品を購入したのか、そのいきさつを聞いてみました。相談者は長年に亘りこの金融機関を利用しており、幾ばくかの金額を普通預金に残し、あとはすべて定期預金にして、満期ごとに更新していました。5年ほど前に勧められた外国国債型投資信託の購入を手始めに、定期預金の満期毎に勧められた投資信託に乗り換えていったとの事。新しい担当者に替わってからも、定期預金の満期毎に自宅に訪問してきて、定期預金の満期金をもって仕組み商品の購入を勧めてきたという。ご婦人は低い利率の定期預金よりずぅーっと高い分配金が出て、しかもそれが毎月支払われる商品性に魅力を感じて購入したとのことです。担当者からは高率の月次分配金の説明はあったが、元本保証については詳しくは聞かされていないとの事(少なくとも本人の頭の中には入っていなかった)。
日を改めて、娘さん二人の応援を得て、購入状況の精査をおこなったところ、定期預金の満期毎に数回に亘り、同じ金融機関からここ数年ほどの間にこの仕組み商品と別の投資信託(バランス型)を購入していた事が判明。結果として、老後生活の資金である総額3千万円強あった定期預金のうち、約1千6百万円がこの二種類の投資信託に買い換えられており、しかも1千6百万円の投資額は現時点でその約半額に減価していたのです。現状を未亡人と娘さん二人を交えた三人と話し合った結果、この商品を勧めた金融機関と話し合う事にしました。《次月に続く》
CFP田井秀道の「相談事例シリーズ・・・84歳の相談者」第2回
「84歳の相談者その2」
《先月の相談事例の続きです。84歳の相談者は、日経平均株価が一定以上に変動した場合償還金が連動して削減される高配当投資信託を購入していました。》
正直言って、FPとしてどのような属性の投資家にこういう仕組み商品を薦められるのか、答えに窮してしまいます。極論すれば、「平均株価が今後一定期間中は絶対にX%以上一度も下がらない」という確信を持つ投資家のみに限定されるのではないかと思います。しかし、投資の世界では、「絶対」という言葉は禁句なので、これではFPとしては答えになりません。「元本割れのリスクを負ってでも、ある程度の利回りを確保したい人」当たりが想定される投資家像なのでしょうが、具体的にどういう人かすぐに思い浮かびません。
元本割れを承知の上なら、日経平均株価指数連動ETFを買えば、ある程度の配当利回り(2.6%前後)を得ながら、将来の株価上昇を100%享受でき(勿論、下落リスクも100%負い)、また、この仕組み商品と違って、3年後に損益を確定させる必要もなく、長期運用に徹する事ができます。 なお、仕組み商品の場合、組成側・販売者側の利益がしっかり組み込まれていて、最終購入者は確率的に割りが合わない立場にあります(勿論、それらも必要な手数料の内と考えればそれはそれで良いのですが)。 いずれにせよ、相談者である未亡人の置かれた状況とはおよそ不釣合いな商品です。
相談事例に話を戻します。未亡人は二年ほど前にこの仕組み商品を購入していました。昨今の世界的金融危機を経て日経平均株価指数は購入時以降50%以上下落しており、商品説明にある「30%分岐点」をゆうに超えた為元本保証がはずれ、現時点では購入時の投資元本が大幅に毀損している事が容易に想像できました。本人に金融機関発行の最近の月次残高報告書を探してもらい、確認してみると案の定、既に30%程度の元本割れを起こしていました。本人は残高報告書の読み方も解からず、過去の残高報告書は全て廃棄していたとの事。元本割れ状況の説明をしても、未亡人は事の重大性を直ぐに理解できないのか、あまりの驚きで戸惑ったのか、明確な反応が見られませんでした。 更に聞いてみると、本人は、この商品の元本割れ可能性の認識はなかったとのことです。《次月に続く》
CFP田井秀道の「相談事例シリーズ・・・84歳の相談者」第1回
「84歳の相談者」
相談者は当年84歳の未亡人。長年連れ添ったご主人は8年程前に他界し、娘二人とは別居しており、本人は自宅で一人住まいをしています。幸運にも亡くなったご主人がそれなりの財産を残しており、住宅ローンもなく、毎日の生活費は年金で賄う事ができ、金銭的には全く心配のない状況です。存命中はご主人が家計全般に亘り仕切っており、本人は家事以外には何ら考えることなく人生を過ごしてきており、「箱入り娘」ならぬ、「箱入り妻」でした。従って、財産の運用などは全く考えた事がなく、金融商品といえば定期預金位しかやったことがなく、債券と株式の違いが一応解かると言った程度で、いわゆる「金融リテラシー」が非常に低い方です。
ある日ひょんなことから、本人が大手金融機関から購入し、保有しているという金融商品のパンフレットを見せられ、目を見張りました。それは、大手金融機関名を冠に戴いた「償還条件付株価参照型…云々」という長い商品名が印刷された数ページのカラーのパンフレットです。直ぐに中身を読んでみると、案の定「仕組み商品」です。商品自体は月次分配型投資信託の形をとっており、初年度の分配金の確定利回りは年率6%と最近の情勢下では非常に高いレベルです。しかし、勿論これには理由があります。要約すると、元本保証はなく、購入時点から3年後の償還日までの間に日経平均株価指数が購入時点のそれより30%以上に一度でも下落した場合には、償還金額はその償還日における日経平均株価指数に連動して決まる(削減される)としています。つまり、投資期間中は高い利息を保証する替わり、ある一定の事象が起きた場合(即ち、投資期間中、株価に一定の大きな変動が一度でもあった場合)には償還金の元本保証はなくなるという、利益限定・損失無制限の商品です。 《次月に続く》
CFP藤村紀美子の「米国最新経済情報シリーズ」第4回
「米国の医療保険事情について」
アメリカには日本のような政府が管掌する皆健康保険制度はない。公的保険としてあるのは低所得者に対するメディケイドと65歳以上の老人に対するメディケアである。カリフォルニア州にはもう一つ低所得者のためのメディカル(Medi-Cal)という公的保険がある。低所得者は無料で、老人は安い保険料で健康保険に入ることができる。しかし、一般の国民はそれぞれが働いている会社等を通して、または自分自身で健康保険に入らなければならない。そして健康保険を扱うのは民間の医療保険会社である。民間の保険会社であるということは会社が儲けなければならないということである。会社は損失が出ないように、保険に入ることを希望する人に対して健康診断をし、病気があれば健康保険に入れないか、ただでも高い保険料をもっと高くして保険に入れる。知人に血圧が高くて健康保険に入れない人がいたし、私自身も血圧が高いので、保険料はかなり高くなった(夫婦2人で月10万円位)。
そのため米国人の約20%、4700万人が健康保険に入っていないし、企業の3分の1が健康保険を完備していない。そして毎年18,000人が何の治療も受けられず死んでいく。これでも先進国といえるのだろうか。日本でも近年、医療機関の株式会社化の議論がされている。医療機関が株式会社化し、健康保険が民営化されたらと想像するだけで、背筋が寒くなってくる。映画「シッコ(Sicko)」を製作したマイケル・ムーア監督は「外国には国が保険制度を持っているところがあるけれど、われわれアメリカ人から見たら夢のようじゃないかい?」と言っている。日本はアメリカも羨む素晴らしい健康保険制度を持っている。この皆保険制度は守っていかなければならない。生きていく上で最低限必要なことは国が英知と責任を持ってやらなければならないと、思いませんか。
CFP藤村紀美子の「米国最新経済情報シリーズ」第3回
「米国の住宅事情について」
アメリカの住宅には、アパートメント(賃貸)、コンドミニアム(所有―日本のマンションと呼ばれるもの)、タウンハウス(長屋のように壁を隔てて隣の家があるもの)、ハウス(一軒家)、マンション(大邸宅)がある。どのタイプの住宅もカリフォルニアでは南向きのものは殆ど無い。ほとんど東向きである。私が住んでいたタウンハウス、一軒家(借家と自宅)の3軒とも東向きだった。理由は日差しが強いため、南向きだと暑過ぎるからだ。また、角地は敬遠されて価格が安い。平均的な家の敷地は150坪から200坪位、住宅の広さは40坪前後である。セントラルヒーティングで冬は温度を20度くらいに設定すると、家中が常に20度に保たれる。夏は日本のように暑くなく、からっとしているので、特に暑いときだけ冷房すればすむ。冷房の無い家がかなりあるのには驚いたが、考えてみれば、1年に1週間くらいしか冷房は使わなかっただろう。バス・トイレは2つあるのが通常で、小さめのタウンハウスでもトイレが3つもある住宅がある。日本に帰国後、増改築した我家は2バス(バスタブのある浴室とシャワー室)、3トイレになってしまった。
日本に帰るまで値上がりしていた不動産だが、その後サブプライムローン問題が大きくなるに従って不動産価格はじりじりと下がり始めた。アメリカ全体では家の価格は40%下がったとも言われているが、2008年10月現在、シリコンバレーと言われるカリフォルニアのサンノゼではそれほど値下がりしていない。オープンハウスを数軒見て回ったところ20%前後の値下がりのように思えた。大きく以前と変わったのは、誰も家を見にきていないことだ。我家のオープンハウス(2007年4月)の時はひっきりなしに訪問者があり、3時間でなんと160組の人が訪れた。現在のように買手がいなければ必然的に不動産価格は下がっていくだろう。今年も値下がりするのではないだろうか。
CFP藤村紀美子の「米国最新経済情報シリーズ」第2回
「米国のスーパーマーケット事情について」
アメリカのスーパーマーケットの多くはショッピングモールの中にあり、売り場、買い物用カートはとても大きく、通路、駐車場は広々としています。果物は山盛りに積まれていて、自分で欲しい量だけビニール袋に入れて買うことができます。レモンを1個、オレンジは4個というように。日本のスーパーと同じように何でもありますが、リーフティー(ティーバッグでない葉っぱの紅茶)はあまり売られていません。紅茶好きの私はリーフティーを求めて東奔西走しましたが、今まで売っていた店もどんどんリーフティーを置かなくなってしまうのには閉口しました。また、ウイスキー(例えばジョニ黒)は日本の価格の倍くらいの値段がつき、鍵つきのガラスのケースに入っていることもあります。レジでは現金、小切手、クレジットカード、デビットカードが使えます。年配の婦人はレジでよく小切手を書いていますが、いちいち小切手を書くのは面倒なので、私はデビットカードを使っていました。
このカードにはもう1つ利点があります。レジで「キャシュバックプリーズ」(現金を下さい)と言うと商品と共にお金も渡してくれます。金額は大きなスーパーだと100ドル位、小さなスーパーだと20ドルしか受け取れないことがあります。現金が必要なとき、銀行にわざわざ行く必要がないのでこの預金引き出し方法はとても便利でした。アメリカでの買物に関して、ぜひ書いておきたいことは消費税です。アメリカでは各州により、消費税が存在したり、しなかったり、また税率も各州で異なります。因みにカリフォルニア州の消費税率は8,25%です。でも食料品には消費税がかかりません。生活の基本の食に関して税がかからないのは消費者にとって重要なことだと思います。日本では3年後に消費税が10%になるとか、ならないとか。消費税が上がっても食料品はせめて無税にしてもらいたいものです。
CFP藤村紀美子の「米国最新経済情報シリーズ」第1回
「日本と違う住宅ローン・・・ノンリコースローンについて」
アメリカで不動産を買った場合のローンはノンリコースローンである。ノンリコースローンとは責任財産限定型ローン、責任財産限定特約つきローンともよばれ、借り手は債務全額の返済責任を負う必要がない。不動産が担保に供されるだけで、保証人も必要としない。借り手は万一、ローンを返済できなくなれば不動産を手放せばよいのである。不動産を手放しさえすれば、ローンから開放され、借金は無くなる。そのため、アメリカでは気軽にローンを組んで、家を買うことができる。家が値下がりし、債務者が家を手放した場合に損失をこうむるのはお金を貸した銀行等である。そこでお金の貸し手はその債権を分割し、様々な金融商品に紛れ込ませて販売したことが、今回のサブプライムローン問題を発生させた。
日本の住宅ローンは借金の借り手が債務全額の返済責任を負う。不動産に抵当権が設定されるだけでなく、連帯保証人または保証会社の保証も必要になる。ローンが払えなくなり、不動産を手放したとしても債務は完済するまでついて回るのである。日本のようにローンを返済できず、住宅を売っても債務が残るので、自殺して保険金でローンを返すというような悲惨な状況は無くしたいものである。アメリカのように住宅を手放しさえすれば、ローン地獄からは開放されるような制度をどうしたら作れるのだろうか。
くらしの経済コラム第一回掲載
あなたはどっち? ダイエット可能なメタボ家計、将来が不安なメタボ家計
このところ話題の「メタボ」こと「メタボリックシンドローム」。内臓に付きすぎた脂肪を支出になぞらえると、支出でパンパンにふくらんだ「メタボ家計」のご家庭は、けっこうありそうですね。我が家でも、子どもがまだ一人で幼く、収入も少ないけれど支出も少なくてすんでいたスリムな頃に比べると、現在の家計はかなりふくらんでいます。メタボ家計は、体と同じく中年以降に、どうも多いようです。メタボ家計には、当然のことながら支出のダイエットが必要です。早くダイエットを始めないと将来大変なことになりますよという赤信号のともった「メタボ家計」を見つけるための基準はあるのでしょうか? 家計の健全度を確認する方法として、現在の収支を把握することに加えて、ぜひおすすめしたいのが今後のライフプラン表を作ってみることです。時間の流れとともに家計の収支がどのように変化していくかを数字で示したのがライフプラン表。支出を項目別に分けることで、支出がふくらんでいる原因は何かがわかります。教育費が一番かかる時期であるためにメタボ家計におちいっているけれど、この時期を乗り切れば支出が減って、通常の状態に戻ることが予想されるライフプラン表もあるでしょう。そういった特別な支出はないのに、そもそも、収入に対する支出が多すぎるとか、今はメタボではなくとも10年後にメタボになり、それが原因で、その後の家計が破綻してしまいそう……など、ライフプラン表はいろいろなことを教えてくれます。
ライフプラン表は、家族の年齢、今後の予定、現在の収支をもとに作成するので、家庭ごとに違ってきます。つまり、我が家がメタボ家計であるかどうかの基準は、その家族の収入と生き方によって、一軒一軒違ってくるということです。体の場合の、腹囲が男性で85センチ以上、女性で90センチ以上のように単純には決められないわけです。そして、もしメタボ家計におちいっていることがわかったとして、どんな方法で支出を減らし、家計を改善していくかも、家庭ごとに違ってきます。ファイナンシャル・プランナーの仕事のひとつに、ライフプラン表を作って、これからの家計運営のアドバイスをすることがあります。ライフプラン表は、年度ごとに数字を入れて、自分で計算して作ることもできますが、ファイナンシャル・プランナーに依頼していただければ、今後数十年という長期にわたり、より詳細に作ることができます。家計の見直しも、単なる節約のみならず、保険や住宅ローン、教育費、老後資金などまで、全体を把握した上で提案を行います。不必要な不安を感じずにすむように、危険が迫っているのに気づかないまま放置しないために、ライフプラン表と、ファイナンシャル・プランナーをぜひ活用してください。
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