#005 無印ジェネレーション
 
今から約10年前、僕が初めて無印良品の店を見つけたとき、中に入ることが出来なかった。なぜなら店内は女子学生とOLばかりだったからだ。外から覗き込むと、お菓子、服、布団カバーなどが見える。「ああ、ここは女の子のための雑貨店なんだ」とその時は納得して帰ったくらいだ。
 若い女性中心の客層は無印良品が誕生して20年が経過した今もさほど変わっていない。紳士服が充実してきて若干若い男性客が増えたという程度だ。なぜ客層が偏っているのか?それは「立地条件」「商品構成」の2つにヒントが隠されている。
 
■立地条件
 京阪神の多くの無印は、集客力の高いターミナル駅付近のショッピング街やショッピング・ビル内にある。それらは圧倒的に若い客が多い場所であり、それゆえ中年層の人は無印良品の存在すら知らない可能性が考えられる。
 

■商品構成
 例えば冷蔵庫。2ドアで135リットルという大きさである。まあ一人用であろう。洗濯機も洗濯容量4.2kg、その他14型テレビ、掃除機、レンジなどのサイズを見てみても全て一人用である。また、「ヘルス&ビューティー」においても女性向きの商品は多いが、ひげ剃り刃など男性向きの商品は少ない。資生堂等のメーカーが男性用コスメを次々と出している中で明らかに後れをとっている。さらに衣料品も婦人用と紳士用とでは種類に大きな差がある(ある程度は根本的にやむを得ないが)。
 このような商品構成から、自然と客層は「若い女性」へ絞られることになる。男性や熟年層が魅力を感じる商品が少ないのだ。
 
★90年代末、変わりつつあるターゲット
 大抵のブランドはターゲットとする年代層を設定している。無印良品も例外でない。短期間で老若男女すべての層をターゲットにするのは不可能であるから、まず設定されたターゲットが「独身女性」だったのだろう。
 しかし、ここ数年ようやく無印は次なる顧客の獲得に向けてターゲットを拡大し始めたようだ。その新ターゲットとは、「新婚家庭」である。前述の冷蔵庫・洗濯機・テレビも中型のものが新発売されたし、寝具のダブルサイズ、ベビー服も充実しつつある。
 また、店舗の立地もロードサイド店などが徐々に増え始め、郊外の住宅地に住む新婚家庭をターゲットにしていることがうかがえる。
 これが将来ターゲットの拡大に繋がることを願う。やがては熟年層、シルバー層に支持される無印良品を目指して欲しい。いつまでもファッション誌の”かわいい雑貨特集”に紹介されるような存在ではスケールが小さすぎると思う。
 老若男女あらゆる年代層の人が無印の店頭で見かけられるようになってはじめて「ノンセックス、ノンエージ」という"うたい文句"を使用できる。
 
■無印良品 com KIOSK の誕生
 '99年10月、首都圏を中心にJRの主要駅で無印のKIOSKがOPEN。利便性だけでなく、サラリーマンなど他の店舗とは違う客層を取り込むチャンスでもある。ターゲットの拡大に向けて注目すべき店舗形態だと思う。

コラムindexへ