第1話 スローフードで行こう。


「ファストフードを食べてはいけません。」というものではなく、
気長に時間を掛けて食の大切さを訴えていこうというのが主旨だそうです。

伝統的な食材や料理を見直そうとも言えるこの活動は、
遥かフランスで始まったのが起源であるそうな。
料理人や料理ジャーナリストの呼びかけで実施されたのは、
その地域でしか取れない農産物が消える中で、この流れを止めることや
食材の味を忘れないようにすることが目的とされていたそうです。

地元で取れる食材をどのように調理すれば美味しいか、
または体にいいか.......?

ん?ちょっと待ってください。
これって、私達がまだ幼い頃からの自然な食事の風景ではないでしょうか?

当時は、現在のように豊かで物が溢れていたわけではないので、
こうした重要性に気付かなかっただけかも知れませんね。
今や、生活が効率化、合理化されていく一方で、
家庭での細々とした作業が省かれていっていると感じませんか?
スーパーどころか、コンビ二でさえもが惣菜を扱うようになっている今では、
家庭の味も消えがちです。

そう言えば、一時期所得の減少で土鍋が売れたことがありました。
外で飲む回数を減らさなければならなくなり、
その代わりに手軽で美味しく、尚且つ家族で食卓を囲むという一石三鳥な
ものとして持て囃されていたことがありました。

ただ、このスローフードはもっと深く意味を見つめて織り込んだものなようです。

料理や食するという行為は、他人とのコミュニケーションを取る場でもあり
また、たとえ小さくとも社会的なルールを覚える場でもあると思うのです。

現代社会では生活様式も多岐に渡り、
一様には行かない事くらい重々承知はしております。
しかしながら、家庭から地域社会へと、健全なコミュニティーの発展に
食を通じての文化の伝承に留意してみたいものですね。


日本経済新聞夕刊より。 [ 2001.3.3.SAT. ]


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