第2話 株主優待制度の皮肉 *太字は、記事引用部分


株式の持ち合い解消により、個人投資家に株が廻ってきた昨今、それら個人投資家を呼び込もうと様々な業種が手厚い株主優待制度を導入しています。電鉄ならば施設利用券、メーカーは自社製品の提供、外食は食事券、小売は利用額に応じたキャッシュバックや株主特別割引、或いは優待価格での販売、等々。

これらは消費者密着を標榜し、自社の安定株主の拡大に向けた手段として、そして、引いては業績の向上に直結する拡販として考案、提供されたのでしょうが、市場から思わぬ反撃を食らっている企業もあるようです。その最たる例が、外食産業でしょうか。
食事券とは、消費者の視点でメニューやサービスを点検、店作りに協力してもらう(和民フードサービス 渡辺社長)のが本来の趣旨であるのに、個人株主が金券ショップに食事券を持ち込み換金し、そしてその株主優待の食事券を購入した一般利用者が週末に店舗に押し掛けるという事態を引き起こした模様です。従って、この食事券の使用に曜日制限をかける見直しを行ったようです。つまり、週末はどの店舗も書き入れ時であるのに、優待券での飲食には売上が立たず、またそれらの方々で店舗が混雑すれば一般客が入店できず、一夜の売上が噴き飛んでしまうことにもなりかねないのです。
それは、配当を期待し、応援する良心的な投資家を上回る規模で「目先の単なるお得感」を狙った投資家達が雪崩れ込んだ為に、優待制度利用に制約が掛かってしまったというものです。要するに、企業の経営に直結する大きな問題となってしまうからなのです。

それでは、結局、悪貨が良貨を駆逐したのでしょうか。
いいえ、綿密に計算された打算からすれば、それは正しいことだと私は思います。株をより多く所有する方々にとっては、実際的なお得感は非常に高いと言えるでしょう。
人が増えれば、必ずモラルハザードは起こるものです。
事前に想定することができなかった優待制度の活用方法が噴出するのは致し方ないことでしょう。提供する企業側にとっては、株主の良心に期待するところのものの方が余りに大きいでしょうから。
因みに、同社が今期発行する食事券は金額換算で5億円強。前期の配当総額の8割強にあたると言うのですから、腰が引けるのも無理なかろうと思います。

ただ、私が思うに、投資家に対する報酬の基本は配当だと思うのですが、如何なものでしょうか。これでは全くのDomestic onlyな訳で、国外の機関投資家には歓迎されないでしょう。それは、資本の増強には繋がらない結果を生むかもしれません。
企業はあくまでも株主のものです。その株主に公平に報酬が配当できないとすれば、それは問題だと思うのです。

とは言え、有り余る金銭があれば、私もこれらの尻馬に乗るでしょう。調べてみれば、様々な生活特典がありますから。されども、そんな余裕は我が家計に、家系(笑)にも無い......。
ああ、悔しい(涙)。

「貧富の差は確実に拡大しているっ!」と、ちょいと僻み根性が入った関心事でした(笑)。


日本経済新聞朝刊より。 [ 2003.9.21.SUN. ]

Copyright(C) 2003 猫ぢぃ All rights reserved.