クリスマス 1


ミニツリー
クリスマスが近づくと、病棟の備品の中からクリスマスツリーが面会所の前に設置され、ジングルベルのオルゴールと共に詰所前に電飾を飾るのだという。

ということは、七夕ならば笹が......?
「早く退院できますように。」とか、
「食事を美味しくしてくれー。」とか、
「先生、ちゃんと説明してくださいね。」とか、
「看護婦さん、もっと優しくして下さいね(涙)。」とか?
或いは、医師やナース達が、
「患者さんが、私たちの指示を守ってくれますように。」と、
反撃する短冊をこっそりとかけたり......(苦笑)。

それはさて置き。
新館の小児科病棟では、キャンドルサービスなる面妖な儀式が粛然と執り行われるらしいとの情報を得る。

ちなみに、私の出身校では聖歌隊による本格的なキャンドルサービスがあり、正しく幻想的な雰囲気が醸し出されるのであるが、医療関係者達で行われるものってどんなのだろう......と興味津々であった。
白衣を着た医師が先頭に立ち、後をナース達が蝋燭を手に持ってハミングしながら病棟を練り歩くのだろうか?
そして、病棟中央に揃った医療関係者達は、徐に聖歌の数々を混声合唱でもするのだろうか?
とにかく噂話の域を出ないので想像果てしなく、いつもの深夜の徘徊で盛り上がってしまうのであった。

きっと、子供達には、それでも充分に楽しめるのであろう。

しかし、口が悪く、人生の甘辛(辛酸?)を知る我が整形外科病棟ではどうなるのだろうと仮想してみた。
新館の病棟は、中央にオープンスペースのナースステーションあり、その周囲に個室や4人部屋がある。
当然、館内はまだ新しい。少しは絵になりそうでもある。
対して、我々が巣食う旧館の病棟は一時代前の狭く古い作りである。
建物中央に細い廊下があり、その両側に個室や6人部屋、風呂・トイレなどがある。
ナースステーションとは名ばかりの詰所であったりもする。

そこに、いきなり照明を落とし、医療関係者達の聖歌隊がハミングしながら歩けば、一体どうなるのか?
顔を良く知る医師やナース達であるから、想像してみるにも現実味が増してくるのだが、おしゃべりな深夜の徘徊メンバーもこの時ばかりは黙って想像の限りを尽くしたに違いない。
ゆらゆらと揺らめく蝋燭の灯火が、顔の下半分を照らす模様は怪奇と......。

うちでやると、まるで死者の弔いみたいで怖いですよねぇ。

沈黙を破ったこの私のひと言が大受けに受けた様子で、たまたまそこに居合わせた方々の大爆笑をも誘ってしまったようである。

ああ、ごめんなさい。
悪く言うつもりなどなかったのですよ、関係者の皆様方。
ほんとに、ふと脳裏に過ぎったことを口に出してみただけなんです(苦笑)。

......と言いつつ。
深夜集会から暗い病棟に戻った時に再び想像してみたが、やはり怖いでしょうね。
既に退院した身とは言え、是非とも、これだけは実現しないように祈るばかりである(笑)。

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