外出


退院を控えているが、楽しみにしていた外出に心は躍る。
京都なんて何時でも来ることができるとは言え、退屈な日曜日には外に出たいという耐え難い願望に刈られてしまうのである。そこで、思い立ったが吉日、前日の土曜の夜、消灯前に仲の良いナースを見つけては無理を言って申請書をいただくのであった。

「えっ......。どこ行くん?......誰かと会うん??」

あんたにゃ、かんけーなーい!......と邪険に扱えば、申請が却下されると非常に困るので、「外の空気が吸いたいんだよねー。」(心の声/お好み焼き喰いたい、ビール飲みたい、ラーメン・炒飯・餃子を喰いたいんじゃー)と答えておいた。が、読まれていたかも知れない(笑)。

何故ならば、とあーる日のナースとの会話を再現してみれば......。

「猫ぢぃさーん、だーいじょーぶ?」
うん、ありがとー。
「退屈やんねー。」
うん。ビール飲みたい。
どあほっ!なーにをゆーてんのっ!!(怒)」
ふにゃふにゃ......。

「猫ぢぃさん、煙草やめたんやって?」
うん。
「えらいー♪」
ふふっ......んな訳ないやろ(にやっ)。
バシッ!!(体重が利いたパンチの音)
院内暴力、はんたーい!(涙)
おとなしー、しときっ!(怒)
はああああああい(泣)。

万事、こんな調子であったのである(笑)。

哲学の道
さて、無事に許可をいただき、病院前のバス停から、銀閣寺行きのバスに乗車。 今日はいいお天気なのが嬉しい。

が。心はもう、とりあえず、ビール♪なのである(笑)。

銀閣寺を堪能し、平安神宮までは、哲学の道を哲学しながらトボトボ歩くのである(笑)。
しかしながら、深部静脈血栓症に罹患した右足用の弾力性ストッキングは未着であったから、当然、歩を進めるたびに右下肢は浮腫んでいくのであった(うぅっ)。

*この写真は休憩時に、ベンチに座って撮ったもの

そして、法然院、安楽寺、禅林寺、南禅寺と立ち寄ってはお参りしながら、ちょうどお昼頃に平安神宮、そして岡崎公園に辿り着いた。懐かしい屋台が、そこここにお店を出している。

でかしたぞ、ぢぃ!今やお前の目の前に、お好み焼きもビールもあるではないかっ!(我が心の叫び♪)

心が命ずるままに、500円でお好み焼きを買い、300円でビールを買って、ベンチに陣取る。
この為に、今朝の食事にはほとんど手をつけなかったのである。涙ぐましい(浅ましい)行為ではないか(笑)。

嗚呼、天に召します我らが神よ。ぢぃは、ついにビールを飲みます(ぐすん)。

ビールを胸に押し抱き、暫しの祈りをしたのかどーかは不明であるが、寒風吹き荒ぶ公園のベンチで、おっさんがひとりにやけながらお好み焼きをガツガツと喰い、ビールを咽喉を鳴らしながら飲む絵は、甚だ挙動不審であったには違いない(苦笑)。

清水寺
こうして欲望のひとつを満たした私は満足しながら、次へと向かうのである。
知恩院、そして八坂神社では本日2度目の初詣(笑)。
右足の痛みはピークを迎えようとしているが、ここまで来たからには......と、清水寺を目指し、2年坂、3年坂を必死の形相で登り、やっとの想いで辿り着くのであった。

時折、小雨がぱらついたが、何とか天気は持っている。
まるで私の外出にあわせてくれるかの如く......。

*しかし、35万画素では綺麗に撮れないものですねぇ。


右下肢は、もうパンパンに腫れ上がってしまい、歩くにも辛くなった。どないしょー(泣)。
が、もしもの事を想定し、実は、当時のネット仲間相手に某コミュニケーションサイトのBBSに、事ある如く逐一行動を報告していたのである。私の休日、ネットライブな感じで♪(笑)
あ。それに、携帯メールも大活躍(爆)。

長い休憩も、そろそろ下山せねばと焦り始める私であるが、ここからは京都市内へは下りだから楽勝?......ってことで、意を決して河原町を目指す。
途中、鴨川で休憩を挟み、一気にJR京都駅へ......と恰好良く言いたいところであるが、実は道に迷ってしまったのである。途方に暮れる私であるが、追い討ちをかけるようにお空も暮れてくる(笑)。

恐れてはいたが、実際に右足を引き摺るようにして歩くようになってしまうと、果たして無事に病院に帰ることができるのだろーかという恐怖が芽生えてきた。ま、タクシーのお世話になれば、何てことはないのであるが。

しかし、忘れてはいけない。
もうひとつの欲望を果たすことを。

京都タワー
死に物狂いで京都駅に辿り着いたころには夜となった。

そう、地下街ポルタdeお夕飯タイムなのであーる♪

適当な中華屋さんに入り、味噌ラーメン、炒飯、餃子、それぞれ1人前をオーダーする。
小食な私には食べ切ることができるのだろーか?ちと不安であるが、入院中に、味が濃いものには餓鬼となった私である。
見事、完食でございました(笑)。

*病院へのバスを待つひとときに撮影。

あんまり美味しくなかったけれど、満足した私は勇躍病棟に戻ったのである。
が、待ち受けていたものは......。

「あれー、猫ぢぃさん。晩ご飯食べてきたん?ごはん、あるでー。暖める?」
へ......?いらんって、ゆーといたのに。
「誰にー?」
◎■◇×さん。何やったら、病棟のせんせーにでもあげてー。
「ええーっ?!でも、◎■◇×さん、何にもゆーてへんかったけどなぁ。ほんまにゆーといたん?」
これこれ......(苦笑)。

つまり。
申請書には必要なしと書いた筈であるし、また◎■◇×さんが申し送りで忘れていたのか?は不明であるが、足が痛いのだし、どーせさっさと泣きが入りながら帰って来るだろうと高を括っておられたのであろう。
ならば、夕食は当然必要だろうとの温かい思い遣りだったのかも知れない。

こうして、我が外出は無事に果たされたのであったが、その夜から満足に歩けなくなったのである(涙)。
とは言え、深夜の徘徊には頑張って参加し、ナース達には呆れられてしまったのであるが(笑)。


おまけ。

最後に、外出に纏わる秘話を。
外出には、前日までに申請書を提出し、担当医の許可を得なければならないのであるが、とあるナースに申請書を提出したところ......。

はぁつもーで?(ぷぷっ)」

......うん。折角京都にいるんやし、平安神宮でも行ってこようかなぁー。

「いろいろ見てきたけど、理由を正直に書く人、初めて見たぁー(大笑)。」

......。

よーするに、「お前はアホか?!」と言われているのであった(ぐすん)。くっそー、許さーん!(泣)


もうひとつ。
翌日の朝、別のナースがベッドサイドに来ては、「昨日、何処行ってたん?誰かと会ったん?(伏目)」と聞くので、「いやー、当てもなくあちこちぐるぐるっと歩き回っただけ。疲れただけ(苦笑)。」と答えるに止まったが(だって事実だし)、「ふーん......。」とひと言を残して、さっと詰所に戻られたのであった。
何しに来たのじゃ(苦笑)。

しかし、腑に落ちない私は、ちょこっと頭を使ってみるのであった。
......もしかして。
......いや、もしかして。
そんなことはあるまいと自制したのであるが。
実は私は密かな人気を集め、好かれていたのではないかと......。

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