個室 その4


だぶる点滴
動けないからと、天井に水飲みバッグをぶら下げているのではないのである。

確か、炎症防止のステロイド系輸液と抗凝血剤のヘパリンだったか?、ふたつの輸液が3方活栓によって私の静脈に注入されているのだ。

テレビを見る気にもなれず、読書は痛みで集中できないし、ノートPCでネットサーフも飽きてくると後はただ天井をぼーっと眺めているだけ。
術後の痛みにじっと耐える私には、この点滴が唯一のお友達なのである。

早く点滴終わらないかなぁーと、輸液の落ち具合を勝手に触っても様子を見に来るナースに元に戻されてしまうので、所在無く輸液のチューブを持って揺らしてみたり(苦笑)。

しかし。
こんなことやってて、もしも天井にぶら下がっている点滴用のスタンド?が外れて落っこちたらどうしよっかなぁ。
ちょうどお腹辺りだから、突き刺さって血まみれになるのかなぁ......と想像してみたが、余り洒落にならないので、「どうか落ちてきませんように......。」と祈ってみることにした(笑)。

結局、私の祈りが通じたのか、スタンドは落ちてこなかったのであるが、時折輸液の落ち具合を見に来るナースが揺れているスタンドを見ては不審そうな目で私を見るのであった。

さて、話は変わる。
ナースふたりがいきなり入ってきたかと思うと、「さぁ、身体拭きしまょうねー。」と言うではないか。
ちょうどこの画像の左右に別れてふたりのナースが私を見下ろしていると想像していただきたい。

身体に掛けていた毛布を取っ払い、そして寝巻きを引き剥がし、徐に4本の手が伸びてきて私の身体を上から下へとせっせと拭き始めたのである。
あっ、あっ。そんなこと、いけませんわっ!あああああああああぁぁーっ!!

そう、そうなのである。
わずかにT字帯1枚が辛うじて全裸になるのを防いでいるというのに、4本の手はついにそのT字帯にかかったのである。
......暫し呆然となるわたくし。
何せ心の準備というものができていない。
犯されるってこういう心理状態になるものだろうかと、心の中で涙をはらはらと流しながら、黙々と続けられる作業をただ受け入れるだけなのであった。

「はーい、お尻をあげてー。お尻の下にオマルを入れますからねー。」

ええい、もうどうにでもしやがれってんだ(泣)。
4本の手が見事なコンビネーションでナニの辺りを生暖かい消毒用ローション?で洗っていくのである。
ナースの皆様は仕事として慣れていらっしゃるのでしょうが、このような衝撃的な体験が初めての私としては無感動ではいられないのであった(号泣)。
確かに、すっきりするので気持ちは良いのではあるが(笑)、精神衛生上は極めてよろしくないのである。所謂有料サービスならともかく、ここは無感動な病院のベッドの上であり、且つ術後2日目の痛みを堪えながらなのであるからにしてからに(爆)。

この後、立ち上がることを許されるまでに2回の身体拭きを受けたが、最中でもリラックスしてナースと話ができたのは最後のみ。

視線を何処に置こうかと戸惑いながら、ついナースの顔を眺めては、上から見下ろされるナースの目と合ってしまうのには参ったなぁ。いや、ほんとに参りました(笑)。


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