お見舞いの花


お見舞いの花
夕食前にベッドで寛いでいると、
にゅっと青年がベッドサイドに現れ、
「猫ぢぃさんですか?これにサインしてください(にこっ)。」と仰るではないか!

伝票にサインを終え、顔を上げるとそこには綺麗にディスプレイされた花......。

なんともいい香り......。花っていいなぁ(ぐすん)。

本当に病室の雰囲気がパッと明るくなるし、ほのかな香りと美しい花が心を癒してくれるのであった。

この花は、術後1週間が経過し、コルセットを装着して歩行器を使って歩くことができるようになると、真っ先に勤務先の上司に電話したのであるが、それを聞きつけた関連部署の上役(女性)が直ちに手配してくださったのである。

この病院は、勤務先から遠い上に、術後の悲惨な姿を見せたくはないが為に、上司は勿論、同僚等にもお見舞いは固くお断りしていたのである。ならばと、この上役は花をプレゼントしてくださったという訳であった。
彼女も長期入院の経験があり、痒いところは知り尽くしているかのようで、退院後、職場に復帰してからもいろいろとこの身を気に掛けてくださり、非常に嬉しく思ったものである。

さて。
本当に花って贈られて嬉しいもの。
そりゃーこの年まで生きておりますから?
色恋沙汰を含め、花を贈られた経験など数え切れないほどある訳だが(ほんまかっ!)、今回だけは違った。

プライバシーもない、ともすればストレスでギスギスしがちである大部屋生活にも、たったひとつ、この花がいらっしゃった(笑)だけで、雰囲気は変わるものだと全く感心してしまったのである。
何故なら、同室者の家族等が病室に訪れた際には決まって、
「うわぁー、綺麗なお花ねぇ。いい香りー。」と口を揃えるし、
また、家族にもそれぞれストレスが溜まるのであろうが、花が病室にあるとその表情も柔和になり会話も温かみが戻るように見受けられたのであった。

......そして。

かんちょーされたり、ベッドの上で排泄の儀を執り行ってウォシュレットならぬ人の手でお尻を洗ってもらい、増してや、「大事な部分は自分でやりますから......。ナニには手が届きますから、足だけ拭いてください!」と涙目で懇願したのに聞き入れられず、忌まわしい記憶を拭い去るこのできないPTSDにも罹ったのではないかと嘆いた『清拭』を3度も経験して心がボロボロになった私をまず癒してくれたのは言うまでもないところである(啜り泣き)。


私のベッドサイドで一晩お過ごしになられたこの花は、翌日からは入院患者の癒しとして病棟の廊下でその役目を果たすことになったのであった。めでたしめでたし(涙)。


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