一番笑ったが、深夜の徘徊中に最も憤りと哀愁を感じたのがこれである。
入院中の家族を見舞う妙齢の女性。それが哀しきこの主人公である。
少し精神遅滞かと感じたが、人懐っこく、病棟に来ては他の患者達に愛想を振り撒いていくのである。特に、若くて恰好が良い男性患者にはその傾向がより強く、機嫌良く相手をすれば傍らをなかなか離れようとしない程であった。
まあ、私は若くもなく恰好が良い訳でもないので、「あらー?奥さんお見舞いに来てくれへんのー?!かわいそー。」......程度で済んだ訳であったが(苦笑)。
「いや......。3年前に交通事故で、妻とふたりの息子を......(伏目ちょっぴり涙)。」などと、その無邪気さに圧倒されて、冗談を言う気にもなれなかっただけのことであるが(笑)。
さて、そんな彼女が目をつけたのが、とある既婚男性患者であった。
いつものようにベッドサイドまで押しかけては楽しい語らいを始めるのであるが、その患者にとっては余り快いものでもないらしい。従って、「俺、結婚してんねん。」と彼女に通告する羽目になったのであるが......。
「へぇー。あんた子供おるん?」
......おー、ふたりな。
「ふぅーん......。」
......どないしたん?
「あんた、上手いんやね?(にやり)」
彼は、その言葉を聞いて、驚きの余りひっくり返ったそうである。
深夜の喫煙所で、彼が「ちょっと、聞いて下さいよぉー!」と話し始めた時には笑い転げていたのであるが、それが冷めると次には怒りが私を覆ったのであった。
一体、誰がそんなこと教えたんやっ......!(怒)
胸の中に、悲しみが溢れた。
因みに、私は大学時代、精神遅滞児・者の為のボランティアサークルで東奔西走した経験を持つのである。
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