||||| リブギゴ |||||


出る......のである。しかも、この病棟だけに。

私が入院したとあーる総合病院は病棟が新館と旧館のふたつに分かれるのであるが、ここ整形外科は旧館の3階にある。検査入院のときにも感じたが、病棟に入ると暗くて陰気臭い香りが立ち込めているのは、建物自体が古いからであろう。

奴等の存在に最初に気付いたのは、深夜、病棟のトイレに入った時であった。
便器や手洗いの洗面台をちょろちょろしているではないかっ!
ああ、清潔であらねばならぬ筈の病棟なのに、何故におまえさんらは出てきなさるのだ?
不潔だわっ、なんて不潔なのっ!!

救いとしては、奴等があの真っ黒で大きな種類ではなかったことである。あんなグロテスクな野郎にうろうろされなんかしたら、もう病棟にはいられない(苦笑)。

しかしながら、奴等が出現するのはトイレだけではなかったのである。日中の病室に現れたかと思えば、ナース達が口を揃えて言うには、なーんとナースステーション(......と言えば聞こえはいいが、今時のオープンスペースにあるようなものではなく、旧式の詰所なのである)にも出るというではないか。
しかも、掃除のお兄さんに聞くところによれば、奴等はこの整形外科病棟にしか現れないと言うのである。不審に思い、ナース達に効けば同様に答えるではないの。

ある者に言わせれば、奴等は白昼堂々と病室に現れ、時にカーテンを這いまわり、時に病室の壁を這いまわり、ある時は人間を恐れもせず床頭台にも這い登ってくると言うではないかっ!
また、ある者が言うには、消灯後、かさこそと音がするので目を覚ましたら、なーんと飲物が入っているマグカップを這いずり回っていたり、ベッドの周囲にあるパイプの上をちょろちょろとしていたと言うではないの......。

原因は定かなようで定かではないが(笑)、最も怪しいのはここが整形外科病棟であるということに基づいているようだ。
つまり、我々には基本的に食事制限はない。
であるから、病室ではお菓子だの何だの食べ放題なのである。
そこに仮にちょいとお行儀の悪い方がおられ、食べかすを床に撒き散らしたり、お菓子の袋を開け放しにしてあちこちに放置したりでは奴等を呼び込むようなものである。

幸いにして私に被害はなかったが、ナースステーションには同情を隠せなかった。
いくら小さくても気持ちのいいものではあるまいし、増してや衛生状態に最も気を配らなければならないのであるから大変であろうとは容易に想像ができるというものである。

どうぞ皆様もご注意を(苦笑)。



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