病棟の窓から職員用駐車場が見渡せるのであるが、
そこに一際目立つのは、窓に暗色のフィルムを張った渋いベンツクーペ。
落ち着いた雰囲気の4ドアセダンではなく、何と2ドアクーペなのである。
ビデオシネマ『ナニワ金融道』の主人公が乗るあのベンツなのである。
2ドアクーペのベンツを颯爽と駆り、病院に出勤するなどとは、
嗚呼、余りに格好良すぎるではないかっ！（羨望）
......と勝手に断定すれば、
誰があの車のオーナーなのであろうかと、皆考えることは同じ（笑）。
医師だから収入は一般よりも高めであることは想像に容易いが、
所詮は公的病院の勤務医である。
年収は、一部上場企業の高給社員並みくらいではなかろうか？
例え院長であれど、大きな差は無いと考えるのが普通である。
開業医や医療法人のオーナーでもない限りは、
気楽に乗れる車ではないことは確かであろう。
いや、しかし。
相手は何と言っても医師である。
実家が開業医で、金銭的にはかなり恵まれているのかもしれない。
代々の資産家ならば安い買い物なのであろう。
いやいや、もしかして。
単にカーマニアで、高給をつぎ込んでいるだけなのかもしれない。
いやいやいや、ひょっとしたら。
奥様の実家が金持ちで......と我々患者の興味は尽きないのである（爆）。
さて、私の同室者に、
長期の入院で病棟の主のような人物がいることは奮闘記の最初の頃に記した。
この主、同じくこのベンツに興味を持つや、
朝夕と駐車場の出入り口に張り込み、オーナーを突き止めようとしたらしい。
結局、この愛すべき主が退院するまでにはオーナーが判明しなかったのだが、
とても残念がっておられたので、犯人探しは私が引き継ぐことにした（笑）。
朝早く歩行訓練がてらに駐車場をチェックしてみたり、
夕食前にもチェックしに行ったり。
或いは、ベッドを離れる度に病棟の窓から観察してみたり。
しかし、所詮、医師の顔を知るのは哀しいかな整形外科しかなく、
オーナーを突き止めたところで何処の誰なのかはわかる筈もない（苦笑）。
結局、分からず仕舞いだったけれど、
暇つぶしの格好のネタになったことは言うまでもないことである。
ただ、オーナーが医師ではなく、
技師や薬剤師、そしてナースだったりして.......。
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