はじめてのホークス(2)

山本選手のサインを胸に、球場内をうろついていると、テレビのインタビューを受ける選手を発見!
何とドカベン香川選手だった。
おおおお!!唯一顔の分かるホークス選手じゃあ!!
うれしさのあまりサインをもらおうと近づくものの、当然のごとく取材中なのでだめ。
横の方で取材の終わるのを待っていた。
取材終了後、近づくとものすごい形相で睨まれ・・・・
それでもおそるおそるサインペンとノートを差し出すと、無言でサインをしてくれた。
「あーー、怖かったあ。。。」
思わずため息をついてノートを見るとサインの横に「ドカベン」の文字が!!
ああああ!あまりに怖くてお礼言えんかった!!
などと後悔をしていると背中に「KADOTA」の文字が!
あのホームラン王門田じゃああ!
しかし今思うと選手の周りにファンとかがあまりに少なかったのが非常に印象的だ。
近づくと「ん??サインか??」とノートにサインをしてくれた。
少年の私はあまりにも簡単にホームラン王のサインを手に入れてしまった!
今では考えられないな。。。

そうこうしているうちにキャンプも終わりの時間が近づいてくる。
選手がバスに乗り込んだとき、友達の一人が叫んだ・
「山内じゃああ!!!」
何と、エース山内選手がバスに乗っているではないか!!!(って顔もしらんのに)
(冷静に考えるとエースじゃない山内選手かもしれなかったし。。。)
ちょうどサインをしている選手がいたのでまだバスは動いていない!
バスの外からみんなで叫んだ。
「サインくださーい!!」
私は温存しておいたボールを最後のチャンスとばかりに取り出し、バスの窓へと精一杯差し出した。
すると。。。
満面の笑みでそのボールを門田選手が手に取り、「しゃあないなあ」的な笑みでサインを始めるではないか!!!
「コラコラ〜〜!!!!違わあ!!!それは山内選手用のボールなんじゃあ!!!大体おっさんのサインはさっきもろうたで!!こんだけしか人おらんのに覚えとらんのんか!ああああああああ!!」
見事にボールは門田選手サインボールへと姿を変え、私の手元へと帰ってきた。

帰りの電車の中、みんなで誰にサインをもらったか見せ合った。
門田選手だけは全員持っていた。
「門田は全員かあ」
「でも、門田ってホームラン王なんじゃろ??」
「そうで。」
「おまえらコージ(現広島カープ監督・門田と同じくホームラン王・ピーコ似)のサインもっとる??」
「ないわい!」「もっとらん」
「なんでそんなすごい人が簡単にサインくれたんじゃろ」
「もしかして南海の人らってすごいええ人なんかのう?」
「パリーグは人気ないけんかのお??」

小さな冒険は私にとって十分な刺激と感動をもたらしてくれたのであった。
そして、この日を境に一人のホークスファンが誕生したのであった。
あまりにも懐かしい、その割に鮮明に覚えている1日である。