第1話 「薔薇の花嫁」
「それは、昔々のお話です。あるところに、お父様とお母様を亡くし、深い悲しみにくれる幼いお姫様がいました。そんなお姫様の前に、
白馬に乗った旅の王子様が現れます。凛々しい姿、やさしい微笑み。王子様はお姫様を薔薇の香りで包み込むと、そっと涙をぬぐってくれたのでした。」
「たったひとりで深い悲しみに耐える小さな君、その強さ、気高さを、どうか大人になっても失わないで、今日の思い出にこれを」
「私達、また会えるわよね」「その指輪が君を僕のところへ導くだろう」
「王子様がくれた指輪は、やはりエンゲージリングだったのでしょうか? それは、いいとして。お姫様は王子様に憧れるあまり、
自分も王子様になる決意をしてしまったのです。でも、いいの?本当にそれで?」
のっけから、「昔々、…」で始まる昔話風のナレーションとイラストによる説明。もう既に、頭は混乱。何が始まるのかと思っていたら、
次は学園内でのエピソード。しかも、お目目パチパチの少女漫画風。慣れない人はこの辺で挫折か?
私も、その日の気分が幸いしたか、ここで止めてしまいましたが、この先には凄いことが待っている。(大袈裟だな。)
しかし、到る所に薔薇、また薔薇のオンパレード。ギャグを通り越し、味わいにもなってしまった感がある。
主人公の天上ウテナ、女性なのだが、「ボクは守られるお姫様よりカッチョイイ王子様になりたいの!」と言い放つ。事実、親友の若葉のために、
剣道部主将の西園寺夾一に抗議に行き、決闘となってしまう。
この西園寺だが、姫宮アンシーについて、「花嫁は現在、僕とラブラブの状態にある」と言う。アンシーは「私は今、
西園寺様の花嫁です。全て、西園寺様の思うがままです」と答える。思うがままですよって。
何がどうなっているんだ。しかも、「世界の果て」って?。
「かしら、かしら、ご存知かしら?」の影絵少女も、楽しみの一つ。箸休め的ながら、微妙に本編にリンク。
決闘場への螺旋階段も凄いが、流れる「絶対運命黙示録」(J.A.シーザー作)もインパクトあり。決闘場の上空に浮かぶ逆さの城に参ってしまった。
光輝く、デフォルメされた天空の城。これだよ、これ。この感覚がいい!。
とどめは、赤いドレスのお姫さまスタイルの姫宮アンシー。メガネっ娘に若干弱く、しかもお姫様コンプレックスの気があるので、狂喜乱舞?。
ウテナがしている指輪は「薔薇の刻印」、しかも西園寺もしている。「薔薇の刻印」、ネーミングの勝ち。いいですね。
うつろな目で薔薇の花をウテナの胸に飾るアンシー。そして、「この胸の薔薇が散らされた方が負けですから。頑張ってくださいね」。
それを聞き、アンシーの頬を打つ西園寺。「ふざけるな、アンシー。お前は薔薇の花嫁。つまり僕だけの花だ。なのに、他の奴に頑張れとはどういう意味だ」
こいつの性格も凄い。敵役にいい感じ。
決闘が始まると、「気高き城の薔薇よ、私に眠るディオスの力よ、主に応えて今こそ示せ」のセリフと共に胸から剣が出現。
「世界を革命する力を!」と西園寺が剣を引き抜く。ゾクゾクするシーンの連続ですね。
「ディオスの剣」。謎めいたものが、続々。ますます期待してしまう。
決闘シーンも決闘歌をバックに展開され、かっこいいです。結局、胸の薔薇を散らされた西園寺が負け、呆然自失の状態。とどめは、アンシーのセリフ。
「ごきげんよう、西園寺、センパイ」。恐るべしアンシー。でも、これって女性が持っている怖さの一部のような気が。
決闘をオペラグラスで見ていた生徒会長の桐生冬芽。「いいね、ベイビー。俺のハートに火を着けたぜ」。こいつもわからねー。笑わせてくれる。
帰りのウテナの前に現れて、アンシーは「私は薔薇の花嫁、今日から私はあなたの花です」。おいおい。
決闘歌「When Where Who Which」
第2話 「誰がために薔薇は微笑む」
生徒会エレベータにて。
「卵の殻を破らねば、雛鳥は生まれずに死んでゆく。我らは雛だ。卵は世界だ。卵の殻を破らねば、我らは生まれずに死んでゆく。世界の殻を破壊せよ
世界を革命するために。」
なんとも、意味深な言葉。登場人物の現状と目指すものを言い表している。この世界観もいいなあ。心を射抜かれてしまう。
確かに、殻を破りたいと思いはする。しかし、なかなか出来ない。
世界の果てからの手紙。そして、「決闘に勝ち“薔薇の花嫁”とエンゲージするものが、やがてはあの城に辿り着き、"世界を革命する力"
を手に入れるのだ。我々はだから闘い続けなければならないのだ」と桐生冬芽は言う。
"世界を革命する力"とは?。興味ある言葉ですね、ワクワク。私も切にその力が欲しい。
ジョーカーを2枚入れたババ抜きをやるのは、なぜに?。ジョーカーさえペアにする必要がある?
寮の新しい部屋割りでアンシーと同室になったウテナ。部屋の掃除をするアンシー。でも、その姿はジャージに割烹着、姉さん被り。アンシーの
センスが凄い。
そして、「一緒の部屋になったのは、薔薇の刻印の掟なのです」「私は薔薇の花嫁ですから。私は決闘で勝った方とエンゲージしなければならないのです」
と、平然と説明する。
「あの蜃気楼の城や、手品の剣は一体なんなの?」と問いかけるウテナに、「不思議ですよね」と部外者のような返答のアンシー。
そして、友達の「チュチュ」というサルのような生き物を紹介する。
ますます、判らなくなるアンシーだが、そのアンシーと交換日記をしていたという西園寺には、笑える。
その西園寺がアンシーに復縁を迫るが、「それは、過去のこと。あなたとのエンゲージは終わったのです。あきらめてください」と素気無く、
言い放つアンシー。もはや、過去の男なんか関係ない。割り切りの凄さ。男は未練タラタラ。男女関係の縮図か?。
結局、また西園寺とのリターンマッチに臨むウテナ。なんと今回からは、決闘場で、ウテナが変身する。おおー。
ディオスの剣を引き抜き、「世界を革命する力を!」と叫ぶウテナ。剣の腕では西園寺の方が上か。窮地になった時、ウテナの指輪が光煌めく。
天空の城からディオスが降臨、ウテナと重なり西園寺の薔薇が散る。
全ての人が驚く。勝ったウテナ、負けた西園寺、オペラグラスで観戦していた桐生冬芽、そして無表情で決闘を眺めていたアンシーでさえ。
ようやく、物語の形が見えてきた感じ。
冬芽がつぶやく。「あれが、ディオスの力なのか?」。うーん、なかなか、ディオスの力にも興味が湧きます。
部屋に帰って、アンシーの「わざと負けるんじゃなかったのですか」に対し、「君のためじゃない。チュチュのためさ」と答えるウテナ。
ウテナの真意を聞いて、静かに微笑みを浮かべるアンシー。謎の微笑みでしょうか?。
決闘歌「肉体の中の古生代」
第3話 「舞踏会の夜に」
アンシーの「ウテナ様」という呼びかけをやめるように説得するウテナ。そこに現れる桐生冬芽、気安い冬芽をはねつけるウテナ。かっこいい。
しかし、おぼろげな記憶にある王子様と冬芽が結びつく気がしてしまう。
冬芽の妹、七実と手下の3人組みの登場。少女漫画的意地悪なお嬢様の登場。兄の関心がアンシーにあると思い込んだ七実は、アンシーに恥をかかせる
ため、舞踏会でのダンスクィーンにノミネートされたと、ドレスを送る。
防虫剤をかじるチュチュがナイス。
七実の仕組んだ罠に対し、ウテナの機転でその場を収め、アンシーとウテナはダンスをするのだった。
ストーリー的には、本筋との関わりは薄い。七実の登場用であろうか?。アンシーの危機に、冬芽から送られたドレスを脱ぎ捨てると、決闘衣装となる
のも、演出?。ストーリー的にも、決闘はなし。
でも、アンシーとウテナのダンスシーンは、それなりに良かった気がする。
第4話 「光さす庭・プレリュード」
前後編の前編。いきなりの決闘場面から始まり、その経過が示される。
ピアノを弾く薫幹。音がずれている様に感じるが、調律したばかり。「なら、調律が必要なのは僕の方かもしれない」とつぶやく幹。
全ては、この言葉に集約されている気がする。
「自分の中に永遠の美しさを持っていなければ、引けない曲なんだ」。でも思う様に引けないと嘆く幹。かなりの思い入れと理想を
投影している。ありますよね。他人から見ると十分なのに、まだまだ理想ではないと嘆く感じ。
七実の手下の3人組み登場。今度は、アンシーに薫幹のことで因縁をつける。助けに入る幹。アンシーの「ありがとう」に動揺する。
うーん、ありきたりだけど、ありますよね。こういうことって。いいなあー。
ピアノを弾きながら、冬芽の「前に言っていた、”輝くもの”でもみつけたのかな?」の問いに、「そうかもしれません」と答える幹。彼の望むものは
”輝くもの”。う〜ん、輝くものですか?。確かに、望むものですね。
影絵少女の話も面白い。恋する者よ、ホントの彼女の正体を、果たしてあなたはご存知かしら?。知らない方が幸せという場合もありますから。
で、勉強を教えることになり、寮へと出向くが、七実もついて行く。ある秘策をもって。
七実のアンシーを貶める秘策の小道具は、「でんでんむし」「青大将」「生タコ」。しかし、アンシーの「名前の付いた大量のでんでんむし」
「マングース」「大タコのアドバルーン」のカウンターに遭う。用意した夕飯もチュチュに食べられ、アンシーの手料理のかき氷が出される始末。
七実の作戦も笑える。その落ちもまた最高。テレビの前でゲラゲラ笑ってしまいました。得意料理がかき氷だなんて。凄いぞアンシー。
最後に何気にアンシーの弾く「光さす庭」に、”輝くもの”を見い出す幹。「妹の音色と同じだ。あの”光さす庭”だ…」。
楽器の弾けない私としては、女性がピアノを弾くだけでメロメロですけどね。
第5話 「光さす庭・フィナーレ」
前後編の後編。有栖川樹璃とフェンシングをする薫幹。1本取る幹に「完成されていないことが君の強さなんだ。純粋さゆえの勢いだな」と言う樹璃。
純粋さゆえの勢い。今の私にとって、それが”輝くもの”かも知れない。
音楽室でピアノを弾くアンシー。「光さす庭」と言う曲は幹ら兄妹で作曲した曲。その兄妹の関係を壊した過去を語る。二人でコンサートを開くこと
になった。最初は嫌がってた妹を説得したが、幹は直前に、はしかになってしまう。妹だけでコンサートを開くが、突然舞台から逃げ出し、一切ピアノを弾く
ことを止めてしまった。
「そうなって初めて、僕はどれだけ妹のピアノが好きだったか気づきました」「だけど、彼女の…姫宮さんのピアノにはそれがあるんです」
「僕はついに”輝くもの”を見つけたんだ」と説明する幹。
妹への愛情の代用なのか?。過去の想いを美化した妄想なのか?。でも、誰でも持っていそうな感情。
幹が真剣に話しているのに、チュチュと一緒にメトロノームに関心が行っているアンシー。もう、あんたは一体…。
幹は生徒会の解散を提案する。姫宮アンシーを決闘で奪い合っていることの、卑劣さを訴えるが、失敗に終わる。椅子の上のりんごが、何時の間にか
カットされ、りんごのウサギになっている演出は凄い。同じ物でも、形を変えると別物になってしまうことの比喩か?
音楽室前で、妹の梢と出くわす。「ねえ、また私としてみたい?」と訊く梢。ドキッとするセリフ。ピアノの話でした。うーん、私なら、したいしたいと
返事するでしょうか。
「別に音楽室はピアノを弾くためだけの場所じゃないわよ」と言いながら、制服を直す梢。中に入ると服をはだけた冬芽の姿。ねえ、音楽室は何の
場所と訊きたくなる。
冬芽は言う、「本当に大切なものは自分の手に入れて守らなければ、人に取られてしまうものだ」と。
「天上センパイがピアノを止めろって言えば、止めるの?」と訊く幹に、「もちろんです。私はエンゲージした方の思うがままですから」と答える
アンシー。この時、幹は決闘の決意をする。
影絵少女の話も意味深い。望むものを手に入れたと豪語する海賊の頭。でも、本当に手に入れたい物は?。そうでなければ、今も海賊の頭でいる必要
はない?。確かに。でも、人間の欲望は限りなし。
決闘場にて、「僕はどうしても、あの音楽を取り戻さなきゃ。だから、どうしても花嫁が必要なんだ」と訴える幹。盲目になっています。非難した他の
生徒会役員と同じになってしまっている。それでも、やらないと気がすまない。若さゆえの勢いか。
それでも、ウテナを応援するアンシーに愕然とした隙に敗れてしまう幹。「どうしても誰も、”輝くもの”になってくれないんだ。誰も」
わかるよー、その気持ち。誰もが、抱く気持ち。鋭すぎる。
呆然とする幹に、アンシーは「ご苦労様。また勉強教えてね」と微笑む。アンシー、非情。さすが、アンシー。この場合、
男はどう対処すればいいんでしょうか?
後日、幹はウテナに「昨日は油断しました。でも、この次は負けませんから」と、宣言する。
実は、妹の梢は全然ピアノが弾けなかったことが判明。幹の思い込みの強さが明らかになる。しかし、過去の出来事を美化してしまうことや、よりどころ
にする事はあると思うのですが。
決闘歌「スピラ・ミラビリス劇場」
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