9月 

『クイーン・オブ・バンパイア』
 
試写会にて。アン・ライス原作のヴァンパイア・レスタトシリーズ第2弾。今回は現代が舞台。そしてB級の臭いがプンプン。突っ込みどころがありすぎでかなり笑えた。
 とにかくあの音楽と洋服のセンスはどうかと思う。今時ヘビメタはないだろうよ・・・
 歌姫アリーヤのデビュー作。そして遺作。彼女の蛇のような動きは魅力的だった。肉食系だなぁ(笑)

『オースティーンパワーズ・ゴールドメンバー』
 
OP20分の凄さばかりが話題になっているが、たしかにこのOPは凄い。映画史上に残りそうなくらい凄い。いかにオースティンが愛されているかの証明に他ならないだろう。
 中盤以降の展開がユルイとかくだらないとかいう声もあるが、オースティンはいいのですよ、これで。ベタな下ネタの連発がこのシリーズの持ち味なのだから。「おバカ映画」と言われるジャンルを確立した映画だが、「お」はいらない。「バカ」なんですよ。レトロなファッションを展開しているのは、下ネタ(男子小学生レベル)をかます為のカモフラージュでしょ?マイク・マイヤーズさん!

『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』
 
やり手弁護士ロイヤル・テネンバウム(ジーン・ハックマン)には天才な3人の子供と妻エセル(アンジェリカ・ヒューストン)がいた。が、別居。子供たちは妻に引き取られた。やがて子供たちは成人し、家族はバラバラになる。が、突如ロイヤルが別居先から帰宅。「余命いくばくもない病気なので、家族と過ごしたい」と言う。
 ここまでは『父帰る』を彷彿とさせ、ちょっと良い話系な臭いさえする。が、この映画、とにかく絵ヅラが変。長女(実は養女)マーゴ(グィネス・パルトロウ)は常にラコステのミニワンピースと毛皮のコートを着用。長男のチャス(ベン・スティラー)は常にアディダスのジャージ。子供の頃から全く同じファッションだ。彼らは子供の頃は「天才」と言われたけれど、20過ぎればただの人、才能に行き詰まっている。妙なファッションは大人になりきれていない象徴なのだろうか。家族がと思ったけれど、結局映画の最後までファッションは同じなのね(笑)。一家の再生の物語と見せつつ、子供たちが成長したのかどうかは、どうも怪しい。アメリカのホームドラマのパロディなのか、上流階級への皮肉か?監督は新人らしいが、カットや美術など、いたるところに才気が感じられた。ともかく魅力的な映画ではある。

『メルシィ!人生』
 
存在感は極薄で真面目だけが取り得な、ゴム製品会勤務のサラリーマン・ピニョン(ダニエル・オートゥイユ)。リストラ回避の奇策として自分はゲイだという噂を流したら、自体は思わぬ方向に。
 ダニエル・オートゥイユは美男ではないが、気弱な男をユーモラスに演じている。個人的には「鳩」がツボだった(何のことかは見てのお楽しみ)。更にマッチョな人事部長を演じるジェラール・ドパルデューが傑作。ゲイ嫌いを直そうとして(彼らの勤務先はコンドーム製造もしているので、購買層にはゲイもいるのだ!)、ミイラ取りがミイラに?というナンセンス。ピニョンにしても人事部長にしても、「違う自分」を演じているうちに「本当の自分」が出てきてしまうというのが興味深かった。そういうことって実際にあると思う。思ってもいなかった自分の一面ってのがあるんだよなぁと。
 全編シニカルな笑いに満ちているが、決して意地悪ではない。弱い人間に対する愛がある映画なのだ。登場人物全員が愛しくなってしまう。正に「メルシィ!」な映画なのだ。

『サイン』
 意味深な予告編でお馴染み、『シックスセンス』、『アンブレイカブル』のシャマラン監督の新作。私は『アンブレイカブル』で「なんじゃこりゃー!!」とがっくりしたので、今回は全く期待していなかった。が、これが意外と面白かった。あまつさえちょびっと感動した。
 ただ、今までのようなサプライズは、正直言ってない。予告編のミステリーサークルから連想されるとおりのことが起こる。ラストも結構読めてしまう。しかし、この映画のキモはそういう部分ではないのではないかと思った。主人公(メル・ギブソン)は神父だったのだが、妻が事故死したせいで神を信じられなくなり、信仰を捨て今はトウモロコシ農家をやっている。元神父が神を信じられなくなったのだから、これはアイデンティティの危機というやつだろう。現に妻の死後、彼を心配してか弟(ホアキン・ファニックス)が同居している。子供たちに対しても「祈るなんて時間の無駄だ」等と言ってしまい、息子が「叔父さんがお父さんだったらいいのに」とつぶやいたりする。この物語は、主人公の男が信仰を取り戻せるかどうかの話なのだ。タイトルの「サイン」は、予告編のミステリーサークルを指しているように見える。しかし、実はそうではない(実際、あれはそう大切な要素ではないと思う)。映画を見終わると、あの予告編とタイトルが最大のフェイクだったことに気付くだろう。
 ちなみに、ヒッチコックよろしく、シャマラン監督も映画に出演している。今回は結構セリフもあるぞ。

 

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