12月

『ルールズ・オブ・アトラクション』
 
アメリカ某所の一流芸術大学に通う学生達。講義にはほどほどに出て、もっぱらパーティー(日本だったら合コンか)とカレ氏カノジョゲットに労力を注いでいる。ローレン(シャニン・リサモン)は女たらし(というより、基本的にオレ大好き人間)のヴィクター(キップ・ドパルデュー)に夢中。ローレンのルームメイト・ララ(ジェシカ・ピール)はモテモテの遊び人。学内ドラッグディーラーのショーン(ジェームズ・ヴァン・ダー・ビーク)は手当たり次第に女の子と寝ているけれど、どうもローレンに一目ぼれしたらしい。ローレンもショーンが気になるが、お互いに相手の気持ちには気付いていない。ローレンの元カレ・ポールはバイセクシャルで、目下ショーンに片思い中。混線気味の恋愛ベクトルの行方は?
 恋愛とは思い込みと勘違いの賜物、とは誰が言ったか知らないが、正にそんな感じの物語。ローレンはヴィクターに夢中だが、彼が自分の名前すら覚えていないとは考えもしない。ショーンは自分宛の匿名ラブレターはローレンからだと思い込んでいる。挙句の果て、ララとセックスしている現場をローレンに見られて、「君が好きだからやったんだ!」。・・・なんやそれ。大して好きでもない相手は気軽に口説けるし平気でセックスできるのに、肝心の本命に対してはどう接していいのか分からない。自分の気持ちだけ空回りしている。いやそれは妄想だからね!相手の気持ちも確認しようね!それぞれの言動があまりにも頭が悪げで、若さって・・・と遠い目をしてしまった。好感を持てる人が一人もいない、かなりダルダルな青春群像。一番普通な片思いをしていたのは、案外バイのポールだった気がする。
 映画はローレンが最悪な体験をするパーティーシーンから始まり、時間を逆行させてそこに至るまでの人間模様を描く。この手法がちょっとくどかった。

『ラスト・サムライ』
 今年一番のキワモノかと思っていたが、意外や意外。トムにはさっぱり魅力を感じないが、渡辺謙にはちょっとくらっときた。
19世紀アメリカ。南北戦争の英雄・オールグレン(トム・クルーズ)は虐殺に他ならなかった原住民討伐に失望。酒まみれの日々を送っていた。そんなおり、軍隊時代の上官のつてで、近代国家樹立を目指す日本政府が作った軍隊の教官に抜擢され、日本へと向う。しかし反乱軍との戦いで負傷し、反乱軍を率いる勝元(渡辺謙)の村へと捕虜として連れていかれる。勝元は天皇に忠義を捧げているが、武士を一掃しようとする財閥・大村に反抗し、官軍に反旗を翻していたのだ。彼らと生活を共にするうち、オールグレンも侍の精神に惹かれていくのだった・・・
 要するに(同じことを言っている人はたくさんいると思うが)、日本版「ダンス・ウィズ・ウルヴス」であり「セブンイヤーズ・イン・チベット」である。アメリカ人が異文化に触れ、その中に入っていく話なのだ。少なくとも作っている側は大真面目。日本の村や町並みのセットはかなり丁寧に作ってあるし、監督が日本文化を一生懸命勉強したのだろうなぁという感じは伝わる。が、いかんせんこちらは日本人なもので、若干の違和感は否めない。侍道にしても何かものすごく美化されているようで、正直こそばゆい。何より、勝元が命を懸けて、更に言うなら部下や農民を巻き込んでまで反乱を起こしたのは何故なのか。そしてオールグレンは何故それに共感したのか、そこの所がぼけてしまっている。勝元がやっているのは明らかに負け戦なので(絶対刀より飛び道具の方が強いと思う)、なぜそれでも闘ったのかという説得力がほしい。
 だが、日本人のキャストがこれだけ大勢出演し、真っ向から日本を描こうとしたハリウッド映画は今までなかったと思う。そういう意味では一見の価値はある。そしてちゃんばらシーンと騎馬シーンは、大量エキストラを投入してすごい迫力なので、ここも必見。個人的には渡辺謙の熱演にやられた。英語のセリフもそこそこ流暢なのでは。
 主演にトム・クルーズを持ってきていることで一目瞭然だが、明らかにヒットを狙っているし、大資本が投入されているのが分かる。映画の造りとしては豪華なのだ。が、この映画がアメリカでヒットするかというと、どうも微妙な気がする。日本文化云々はともかく、映画として長すぎるし冗長すぎる。せめてあと30分短ければ・・・

『バッドボーイズ2バッド』
 「アルマゲドン」の監督マイケル・ベイと「パイレーツ・オブ・カリビアン」の製作ジェリー・ブラッカイマーのコンビと聞けば、それだけで派手派手で大味な映画だろうと思ってしまうが、正にその通り。主義主張・メッセージ・涙も感動も一切なしで、徹底してアクションを見せる、いっそ潔い良い映画。何と8年ぶりのシリーズ第2作だが、これは3作目も期待できそうだ。
 麻薬密輸ルート壊滅の為、刑事マーカス(マーティン・ローレンス)とマイク(ウィル・スミス)のコンビが活躍するというストーリーはあるものの、とにかくカーチェイスと爆破と銃撃戦ばっかりやっている感じ。後半はもう警察官のやることですらない(笑)。いやダメだろそれ!マーカスの妹が麻薬王の人質に取られた為、2人だけで立ち向かおうとするマーカスとマイクを見た同僚達が、「仲間だろ!俺もやるぜ!」と次々立ち上がって国境まで越えてしまうあたりの安易さには思わず苦笑した。でもアクションシーンの迫力とノリの良さには、それも許せてしまえる。なんと全て実写・CGなしだそうだ。この迫力だけでも一見の価値あり。
 全体的に「男子」的ノリで、「オレ達仲間!」感に満ちている。キレイなお姉さんのサービスショット(特に足)もしっかり入っている。そしてバディ・ムービーとして、主演の2人の会話のノリの良さが楽しい。この2人だからおおざっぱなストーリーでも引っ張っていけたのだと思う。電気屋での2ショットが忘れられない(笑)。
 至って大味で繊細さ細やかさは皆無だが、ストレス発散にはぴったり。ただし、結構血肉が飛ぶので苦手な人は要注意。あと、PG12なのでお子さんは見られませんよ〜。

『東京ゴッドファーザーズ』
 正直、今年の日本映画はこれといって飛びぬけたものがなく、淋しいなーと思っていた。が、そんな中キラリと光っていたのがこの作品。老若男女が楽しめる良作。心温まるクリスマス映画として皆様にお勧めしたい。
 自称元競輪選手のギンちゃん(江守徹)、元ドラッグクイーンのハナちゃん(梅垣義明)、家出女子高生ミユキ(岡本綾)の3人のホームレスが、クリスマスイブの夜に赤ん坊を拾う。3人は赤ん坊の両親を探して、雪の東京をさ迷うことになるのだった・・・
 今敏監督は、これまでの作品『パーフェクトブルー』でも『千年女優』でも、キャラクターのデフォルメ度の低い、リアルなアニメーションを作っている。今作も実写でやろうと思えばやれるくらいだが、そこを何故アニメーションでやるのかという、監督からのアンサーになっていると思う。ストーリーは捨て子の親探しという、いたってオーソドックスなもの。もちろんハッピーエンドで、ともすると甘くなりすぎな話だが、それをアニメーションにすることで「これは作り話ですから」という大前提を強調してカバーしているのでは。そしてアニメだからこそ、最後のファンタジーが生きてくると思う。終盤のアクションの連続は、アニメーションならではの動きの楽しさがある。
 今までの今監督の作品では、セリフが説明過剰になっていたり、中盤がたるんだりという所が気になったが、今回は演出が格段に上手くなっており、こういう欠点が殆ど見られなかった。特に、セリフの使い方、笑い要素の入れ方は格段に上手くなっていると思う。様々に貼られた伏線が全て活かされており、テンポも爽快だ。
 何より、ホームレス3人の声を当てている役者たちが上手い。ベテランである江守徹や梅垣義明はもちろん、ミユキ役の岡本綾が予想外に良い。スネた女子高生(やや声にドスがきいている)役がぴったり。そして、丁寧に書き込まれた東京の風景も、もう一つの主役と言えるだろう。地元民としては、知っている知っている!とにこにこしてしまう。風景と文字が溶け合った、オープニングのクレジットは必見。更に、テーマソングとなった鈴木慶一の『No9』。あの「第九」に鈴木慶一が歌詞を付けたものなのだが、この歌詞が人を食ったもので、思わず笑ってしまった。でも素敵な歌詞ですよ!(笑)

『ブルース・オールマイティ』
 アンカー・マンになるのが夢なTVレポーター・ブルース(ジム・キャリー)。しかしライバルにアンカーの座を奪われ、生放送を台無しにするわ恋人のグレースに八つ当たりするわ、とうとう神さまにも文句をたれる。すると神(モーガン・フリーマン)はブルースに一週間限定で全能の力を授ける。ただし自分が神だと人に言ってはいけない、他人の意思には干渉できないという条件付き。全能になったブルースは有頂天だったが・・・。「世界中で記録的大ヒットの感動のヒューマンストーリー」だそうだが、・・・皆さんどのへんに感動したんですか?さっぱりわからないんですけど。
 主人公ブルースの子供じみた言動には、最後まで好感をもてなかった。そもそも、ブルースが「運が悪い」と嘆いていることの大半は、自業自得というか、別に悪運とも呼べないようなことだと思うが。アンカーになれないのは運が悪いんじゃなくて、明らかに実力がないからじゃないの?アンカーがライバルに決定したショックのあまり、ブルースは生放送中に硬直してしまう。その程度じゃとても務まらないと思うのだが。何とか話し始めたと思ったら段取りは目茶目茶。腹いせにTV局側に馬事雑言を浴びせる始末。どこの子供だ貴様!少なくともプロのレポーターがやることじゃないね。全能の力でやることもショボショボ(お約束通り、スカートめくりは実行。ついでに恋人の胸も大きくしてみました)かつ後先考えないもので、正直うんざり。そんなんじゃ恋人にも去られるさ!むしろ今までよく続いてたよな・・・
 ヒューマンドラマとしてはどのへんがヒューマンなのか分からず、コメディーとしてはジム・キャリーの顔芸とテンションの高さを活かしきれていない。ジム・キャリーのファン以外にはあまり見る意義なし。この程度で大ヒット飛ばせるのかー。ふーん。ま、一番の問題は、私がジム・キャリーを嫌いであるということでしょう。

『ファインディング・ニモ』(吹替えで見ました)
 名作『モンスターズインク』に続く、ピクサースタジオの新作アニメーション。ピクサーの技術力を、これでもかと見せ付けられる。ある意味ピクサーのプロモーションビデオ。
 珊瑚礁に住むカクレクマノミのマーリンは、一人息子ニモのことが心配でしょうがない。しかしある日、ニモが人間に連れ去られてしまう。マーリンは人間が乗ったボートの行き先を見たという、ナンヨウハギのドリーと共に、ニモを捜す旅に出る。一方水槽に入れられたニモも、水槽仲間の協力を得て、海への脱出を試みるのだった。
 キャラクターの動きや表情はもちろん、海中の風景や水の動き、光の表現が素晴らしい。ストーリー自体には全く意外性がなく、父子のいさかい・別れ・再会・和解と共同作業と、しっかりプロセスを見せてくれ、安心して見ることが出来る。キャラクターも一捻りしてある。ニモは片方のヒレが小さい、人間で言うなら障害を持っている。マーリンは妻と子供(卵)を一度に亡くしたせいで、外の世界に対して臆病で極度に心配性。マーリンの相方となるドリーは病的な健忘症。他にも「禁魚」したサメ3匹組(アメリカではポピュラーな「禁酒の会」ならぬ禁魚の会を開いている。笑った。)、湘南走り屋風カメ(吹替えの喋りが絶妙だった。英語だとどんな感じだったのか気になる)など。子供はもちろん、大人でもしっかり楽しめる。
 ただ個人的には、心配性のマーリンにも超楽天的なドリーにもイライラしっぱなしで、正直素直に楽しめなかった。やたらと構うマーリンにニモがうんざりする気持ちも分かる。と同時に、父親はここまでしないと子供の尊敬を勝ち得ないのか・・・とちょっとかわいそうになってしまうのだ。

『昭和歌謡大全』
 原作は村上龍の同タイトル小説。全く関係がなかった6人の少年スループと6人のおばさんグループ。事の発端は、睡眠不足だった少年スギオカ(安藤政信)が唐突におばさんヤナギモト(内田春菊)を刺殺してしまったこと。おばんさんたちは復讐に乗り出し、スギオカを刺殺。少年達も負けずに復讐の実行犯イワタミドリ(鈴木砂羽)を殺害。復讐に継ぐ復讐で、いつのまにやら全面戦争に突入していたのだった。
 原作は今まで何度か映画化の話があったそうだが、内容的に難易度が高く(バカ&バイオレンス)、実現しなかったそうだ。それが今回、篠原哲雄監督によって実現した。私は原作は未読なのだが、映画としてはかなり健闘しているのでは。意外と勢いがあり、掘り出し物的な面白さがあった。ブラックな笑いを求める方にはお勧め(やや物足りないかもしれないが)。
 何よりキャストが健闘している。主人公イシハラ役の松田龍平は、決して演技派ではないが(歌も上手くなかったし)、独自の存在感があって今後も期待できる。そしておばさん達が皆良い。樋口可南子、岸本加世子、細川ふみえ、森尾由美、鈴木砂羽、内田春菊、皆みごとに「おばさん」を体現している。映画の中で原田芳雄演じる怪しい金物屋が「オバサンてのは進化を止めちまった生物だ」と言うのだが、毎日ダラダラ過ごし、たまにステージを組んでナツメロを歌って遊ぶくらいで、何をするわけでもない少年達も進化をやめてしまったように見える。似た者同士で戦争しているわけだが、どうみてもおばさん達の方が日々楽しそうでたくましそうだったよ・・・。
 ちなみに、スギオカ役の安藤政信は、同じく村上龍原作の『69』に主演することが決まっている。高校生役だそうです。・・・10歳もサバよみやがって!(でもかわいかったから許す)

『この世の外へ クラブ進駐軍』(試写会で鑑賞。04年2月公開予定)
 太平洋戦争が終結してから2年後。焼け跡だらけの東京にやっと復員してきたサックス奏者広岡(萩原聖人)は、軍楽時代の先輩・平山(松岡俊介)と再会し、天才肌のトランペッター浅川(MITCH)、キーボードの天野(村上淳)、そしてなりゆきで加入した素人ドラマー池島(オダギリジョー)とジャズバンド「ラッキーストライカーズ」を結成する。戦争直後の町並みのセットがよく出来ていて、細かい所まで目が行き届いている感じの映画だ。エキストラの人たちの顔が、本当に当時の日本人ぽい。物語の流れはやや緩慢でメリハリに欠ける所もあるが、群像劇としては面白い。
 『顔』、『KT』などを撮った阪本順二監督の新作。戦後の混乱の中での、若者達の青春群像劇である。あの頃の日本の若者達が何を考え、新しい文化がどんどん入ってくるのをどう受け止めていたのか。この映画では当時のある種の熱気が伝わってくる気がする。と同時に、戦後を舞台としているが戦争の映画である。戦争は終わったのだから過去を引きずってもしょうがない、これからのことを考えるべきだと言う涼子(前田亜季)に対して、普段は温厚な池島が「まだ戦争が終わってない場所もあるんだよ」と怒鳴る。彼の妹は長崎に落とされた原爆で被爆しており、彼は家族に仕送りを続けていたのだ。新しい生活を始めると意気込んでいた涼子も、アメリカ兵に襲われた所を危うく娼婦達に助けられ、現実を思い知らされるのだった。
 それぞれの事情を抱えたバンドのメンバーが、皆良い。人気がありそうなのはオダギリジョーだが、個人的には、一見クールな平山の哀しみが印象に残った。平山の兄はレッドパージ(赤狩り)にさらされている。平山は兄に反発しているが、多分、自分には危険を冒してまで自分の思想を貫くことはできないという劣等感もあったのだろう。戦争中、押入れに籠もって禁止されていたジャズのレコードを聞くことしかできなかったと言って、押入れの中で泣く平山のかっこ悪さが心に刺さった。このあたりの、普通の人が普通に持っている弱さを描くのが阪本監督は上手い。
 浅川の「白い紙(浅川は海外の戦地で終戦を迎えており、飛行機で撒かれたビラで終戦を知った)は信じられなかったけど、あの音楽(飛行機から流れてきたジャズ)は信じられた」というセリフが良かった。そしてジャズが浅川たちとアメリカ兵ラッセル(シェー・ウィガム)の心を通わせることになる。音楽に国境はない、とは決して思わないが、やはり音楽は良い。エンドロールでは日本の、それこそ終戦直後から活動してきたベテランミュージシャンの方々の映像が流れるので、席を立たぬよう。

『ジョゼと虎と魚たち』
 田辺聖子の短編小説の映画化。監督は大島弓子のマンガ『金髪の草原』を映画化した犬童一心。大学生・恒夫(妻夫木聡)はある日、坂道を走る乳母車と遭遇。中にはジョゼ(池脇千鶴)と名乗る少女がいら。ジョゼ(本名はくみ子)は足が不自由な為、祖母が乳母車に乗せて連れ歩いていたのだ。こうして恒夫とジョゼとの生活が始まる。
 原作小説では、深い諦念を伴った恋愛を描き、その結末は読者に委ねていた。しかし映画では一組の男女の出会いから別れまでを描いてしまった。映画冒頭から、これはいつかは失われる物語であると匂わせている為、甘いだけのラブストーリーにはなっていない。ファンタジーと現実の苦味が溶け合って、なかなか良い味わいになっている。
 演出も役者の演技もとても上手かったと思う。ジョゼと恒夫が台所に立っている姿を背後から撮っているシーンがあるのだが、ジョゼ恒夫に煮物の味見をさせる。恒夫がジョゼが箸でつまんだ煮物をパクッとかじる。その瞬間、ジョゼの体がこわばり、彼女はこの時、もう恒夫のことが好きだったんだと分かるのだ。池脇の演技力はさすがで、たくましさと繊細さの入りまじった、そして一種の諦念と共に生きているジョゼを演じられるのは彼女だけだろうと思わせる。また、恒夫役の妻夫木は、自分の欲求に正直だがちょっと優柔不断な青年にぴったり。
 この恒夫の弱さがとてもリアルだった。ファンタジックな物語ではあるのだが、この部分がリアルへと引き戻し、。2人の関係はいずれ終わるだろうと思わせる。恒夫が弟に電話で「(ジョゼを両親に会わせるのを)ひるんだろ」と指摘されるシーンにはひやりとする。そしてジョゼも恒夫との関係の終わりを思い、「でもまあ、それもまた良しや」と言い切ってしまうシーンでもまたひやりとする。
 甘く、やるせなく、ほろ苦い、恋愛が始まって終わるまでの映画。しかし、男性はやはり楽な方へ流れるのでしょうか(笑)。

『パリ・ルーブル美術館の秘密』
 「ぼくの好きな先生」のニコラ・フィリベール監督が手がけた、ルーブル美術館の裏方さん達を追ったドキュメンタリー。派手な展開も演出も音楽も全くないが、ルーブル美術館に行ったことがある人はもちろん、行ったことがない人でも楽しめる。実際に美術館に行きたくなる映画だった。
 巨大な絵画をどうやって室内に運び込むのか、普段はどうやって保管しており、展示品の入れ替えはどうやっているのか、職員は館内をどうやって移動しているのか、ガラスのピラミッドはどうやって掃除するのか。そんな疑問が全て解消されます。まるで秘密基地を探検しているような面白さがある。
 そして何より、職員が皆自分の仕事に誇りを持っているのが分かる。キュレーターやを始め、作品の運搬作業員、清掃員、食堂の調理師など、様々な人たちの努力で美術館が運営されているのだなと。大変地味ではあるが、良作です。小学校とかで上映しても良さそう。

映画日和TOP  HOME