ちがう、そうじゃなくて……


言葉は声にならなかった。


別にこだわることもない。
きっと誰もが背負っているのだ。
こんな傷跡(いたみ)の、一つや二つ。


目をあげればキミがいる。
迷宮の中でまどろむ時間は過ぎたのだ。
未来(あすへの道は開かれた。


    さあ、行こうか」

差しだした手を、握りかえしてくれるよね?



約束する。



蜃気楼は、もう、見ない。







「蜃気楼」
一部改定・01・08・16
掲載 01・09・23