「その名はシチュー」





ねえ、あなた、シチューを作りましょう。
ぶきっちょサンでもすぐに作れる、お手軽、お気軽、あったかシチュー。


じゃがいも、にんじん、たまねぎを切り、
豚肉と炒めて、コトコト煮るの。


アクを取り取り、約十五分。


市販のルーと牛乳を入れて、
ほら!簡単!!もう出来上がり。


おお、もちろん。
お料理上手は、ルーから手作り。
野菜の面取り、お手のもの。
余りものをチョイスして、個性豊かなオリジナル・レシピ。


だけど、たった一つだけ。


忘れてならないスパイスがあるの。


『誰かのために作ること』


仕事で疲れたお父さんに。

がみがみうるさいお母さんに。

宿題がんばる子供のために。

たまに頼れる兄貴のために。

最近キレイな姉貴のために。

こしゃくでナマイキ弟のために。

おしゃまでおしゃべり妹のために。

おじいちゃんとおばあちゃんには、隠し味に醤油をポトリ。


バイトで疲れた友人のために。

一人暮らしの彼のために。

わがまま高ビー、彼女のために。

くされ縁の同居人に。

作りすぎたら、隣のひとに。


そしてこの世でただ一人の、
間抜けで情けない自分のために。


さあ、シチューを作りましょう。
特別なものは何もいらない。
世界で一番簡単で、世界で一番幸せな魔法。


あつあつ湯気をそのままに、お皿いっぱいに取り分けたら、
両手を合わせて唱えましょう、とっておきの最後の呪文。



「いただきます!」










掲載 01・11・1