「その名はシチュー」
ねえ、あなた、シチューを作りましょう。
ぶきっちょサンでもすぐに作れる、お手軽、お気軽、あったかシチュー。
じゃがいも、にんじん、たまねぎを切り、
豚肉と炒めて、コトコト煮るの。
アクを取り取り、約十五分。
市販のルーと牛乳を入れて、
ほら!簡単!!もう出来上がり。
おお、もちろん。
お料理上手は、ルーから手作り。
野菜の面取り、お手のもの。
余りものをチョイスして、個性豊かなオリジナル・レシピ。
だけど、たった一つだけ。
忘れてならないスパイスがあるの。
『誰かのために作ること』
仕事で疲れたお父さんに。
がみがみうるさいお母さんに。
宿題がんばる子供のために。
たまに頼れる兄貴のために。
最近キレイな姉貴のために。
こしゃくでナマイキ弟のために。
おしゃまでおしゃべり妹のために。
おじいちゃんとおばあちゃんには、隠し味に醤油をポトリ。
バイトで疲れた友人のために。
一人暮らしの彼のために。
わがまま高ビー、彼女のために。
くされ縁の同居人に。
作りすぎたら、隣のひとに。
そしてこの世でただ一人の、
間抜けで情けない自分のために。
さあ、シチューを作りましょう。
特別なものは何もいらない。
世界で一番簡単で、世界で一番幸せな魔法。
あつあつ湯気をそのままに、お皿いっぱいに取り分けたら、
両手を合わせて唱えましょう、とっておきの最後の呪文。
「いただきます!」
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