ビットに合わせて端末を持つ(下)



ラスベガスで開かれた、コンピュータ業界最大規模の展示会「Comdex/Fall '99」 の中で、大きく注目を集めたキーワードがある。それは「インフォメーション・アプライアンス」という新しい試みである。 (1)

「インフォメーション・アプライアンス」は,PC以外のインターネット接続手段を提供しようという試みであり, より簡単に,そして誰でもインターネットを利用できる環境作りを目指したものだ。

今までは、インターネットを見るにはパソコンなど限られた情報端末でしか見る 事がでなかったが、これからは携帯電話や情報家電と言われているものなど パソコン以外の情報端末でも、インターネットから情報を取り入れる事ができる ようになっていく。そして、今後はパソコンではなく、このようなインフォメーション アプライアンスがこれからのインターネットの中心になってくるだろう。
このような動きが広がっているのは、今年の「Comdex/Fall '99」 を見ても明らかだ。
例えば、MicrosoftのCEO(最高経営責任者)のBill Gates会長は 基調講演の中で「Web companion」を発表した。 Web Companionは,同社のインターネット接続サービス「MSN」専用の接続端末。電源を入れるとすぐにMSNを利用してインターネットに接続できる。 (2) Windowsにより、パソコンOSで圧倒的なシェアを誇っている Microsoftでさえも、もはやパソコンだけではインターネット接続に不十分であり Web Companionのような新しい情報端末も必要であると考えたのであろう。

また、SUNのScott McNealy会長は基調講演の中で未来のコンピューティングの主役は、システムクラッシュの多いPCではなく、強力な中央サーバーにつながれた携帯電話やPDAなどの無数のインターネット情報家電になると語り、未来のコンピューティングの主役は、システムクラッシュの多いPCではなく、強力な中央サーバーにつながれた携帯電話やPDAなどの無数のインターネット情報家電になると語り、 (3) StarPortalと軽量クライアントパソコン「SunRay」を使用したデモを行なった。SunRayはキーボードとマウス、ディスプレイという単純なマシンで、処理はすべて中央サーバーが行なう。リモートネットワーク接続を瞬時に行なうデモでは、マシンを変えてもスマートカードとID番号でユーザーを識別し、自分のデスクトップにアクセスできる。また、電源が落ちて再起動するデモでは、数秒で以前と同じ画面に戻った。
パソコンのように不安定で、つねにクラッシュの危険性を含んでいる 事を考えればこれは画期的な事だろう。

さらに、オラクルのLarry Ellison会長は「人々が気にかけているのはデータであってOSではない。データベースが中心となり、クライアント側では、データを見るためのビューワー、いわゆるブラウザーがあればいい。つまり、どのOSであっても関係なくなるのだ」と語った。同氏は、無数のアプリケーションを使用するためにユーザーが必要なデスクトップソフトウェアは、ブラウザーのみでいいというわけだ。 (4)

このような、パソコンのように複雑な端末で接続するのではなく、もっと安くシンプルな端末でインターネットに接続できるようにするという考えは新しいものではない。 今までも、このような考えはあったが、ネットワークを中心とした情報端末は、回線が貧弱であったり使えるサービスが少なかった事であまり普及しなかった。

しかし、このような「インフォメーション・アプライアンス」という試みは、 今年に入って急速に広まりだした。
例えば、セガが販売しているゲーム機「ドリームキャスト」は日本では苦戦しているが 英国ではドリームキャストを手に入れた人たちが一斉にインターネットに接続したため BT(ブリッテッシュテレコム)のサーバーがパンクするほどの人達が インターネットに接続した。これは、ヨーロッパではパソコンを持っている家庭が少ないためドリームキャストを手にした人達がインターネットに押し掛けたためだという。 (5) 日本でもドリームキャストが発売して一ヶ月でドリームキャストを使って インターネットに接続した人達が20万人もいるという。

また、99年の2月からサービスがiモードはわずか半年で100万ユーザーを突破し その2ヶ月後には200万ユーザを突破した。これに合わせ NTTドコモは2000年2月に800万,2000年7月には1200万ユーザーを収容できるように設備を強化する計画だ。 (6)

今まではインターネットに接続するのには、高価で複雑なパソコンを使うしかなかったが、このような端末が普及すれば今までインターネットに興味がなかった人達が インターネットに接続するようになるだろう。そうなれば、また新しいコンテンツが生まれてくる。そうなれば、今までのようにパソコンユーザーを中心としたサービスは 成り立たなくなるなるのではないのだろうか?





(1)ネットへのアクセスにもうPCは必要ない? COMDEX/Fallで離陸するインフォメーション・アプライアンス

(2)PCは今後も繁栄する――COMDEX/FallでGates氏基調講演

(3)Sun Microsystemsのスコット・マクニーリ会長 「ソフトウェア企業は消え去る運命に」

(4)OracleのLarry Ellison会長――「どこでもWindows」から「どこでもWeb」へ

(5)ドリームキャスト発売で英サーバーがパンク

(6) iモート゛が200万台突破


1999/11/28

作成 横田真俊

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