ウェアラブルPCによる、新しいライフスタイル



1 ウェアラブルPCとは何か?

昨年から、「ウェアラブルコンピューター」 という言葉をよく耳にするようになった。日本語では 「身につけるコンピューター」として訳され、 HMD(1)型のディスプレイを装着していたり、 PDA(ペン入力機能やスケジュール管 理機能などを備えた個人向けの小型情報端末) サイズのコンピュータをベルトのように腰に巻いたり、 背負ったりして装着するのもある。 現在このような小型のPCは主に医療現場や建設現場で使われている、 例えば、 建設現場ではこのような小型情報端末が使われている。サンフランシスコのあるネット・ソリューション会社は、大規模建設プロジェクト用アプリケーションを構築した。このプログラムのおかげで、130ヵ所に散らばった建設チームのメンバーや市当局者たちは、ネットを通じてリアルタイムで書類業務の共同作業を行ない、連絡を取り合うことが可能になり、また建設計画の最新の変更から特定の建設現場の天候に至るまで、様々な情報を入手する事が可能だという。(3)

  2 現段階でのウェアラブルPC

少し前まで、インターネットに接するにはパソコンが必要だと 思われていたが、現在では様々な機器がインターネットに接続し、 情報を取り込む事が可能となっている。
その中で特に注目されているのは「スマートフォン」と 呼ばれているネットに接続できる携帯電話だ。 例えば、NTTドコモの「Iモード」は加入者数が100万人を突破した。 Iモードが短期間でこれだけの人数を集められた理由の一つとして、 情報をうけとるハードが「常に身につけている」 携帯電話だったいう点があるのではないだろうか?
今までは外出先でメールの確認やスケジュールの確認の時、 モバイル用のノートパソコンを使用しなければならかったが、 持ち歩くには重いし、使用電力が多いためバッテリィの残量には 常に気を付けなければならなかった
しかし、Iモードなどのスマートフォンでは常に電源が入っていても急激に バッテリィが減る事もないし、 何よりノートパソコンに比べれば圧倒的に軽い、さらにモバイルシーンで活用するツールはスケジュラーやメーラーといった「軽い」ソフトが中心となると考えられる、ノートパソコンの場合 そのようなソフトを使うには、まずパソコンを起動しなければいけないが、スマートフォンの場合電源が常には入っているので、すぐにソフトを起動させる事ができる。
そして一番重要な事はスマートフォンが常に身につける事が可能な機器 だという事である。スマートフォンは常に身につける事が可能なため、 すぐに情報(もちろん音声による会話やメール、自分が設定したスケジュール) を受ける事ができ、そして自分が情報(たとえば、電車の時刻表、天気予報、 ニュースのヘッドライン)が欲しい時には、すぐに情報を引き出す事ができる。
 
  携帯電話が、「身につけられるコンピューター」ならば、ウェアラブルPCなど 必要がないのではないかと思う方もいると思うが、携帯電話だけでは「身につけられるPC」 とは言えない、なぜなら携帯電話の小さな液晶画面では、表示できる情報が限られてしまうし。 メールを作成する時も、限られたキーだけでは送られる情報が限られてしまう。
そこで、現在「身につけられるコンピューター」は(現段階では主にモバイル機器と呼ばれているが) 現在はそれぞれに特徴がある、おおよそ4つに分類する事ができる。

 T スマートフォン(iモード、WAPなど)=メール端末、個人スケジュール表示など
 U PDA(パーム、ザウルスなど)=メール端末、細かい個人情報、業務連絡、メモ入力
 V サブノート(WindowsCEなど)=文章編集・修正、短い文章の編集、スマートフォン・ PDAの情報管理、
 W モバイルPC=情報管理 

スマートフォンやPDAは「情報」を表示し、見る事には適しているかもしれないが、 し入力するには不向きである。そこで、パソコンで入力した情報をネットにあげて スマートフォンやPDAを使いその情報をダウンロードする形になると思われる。

このようなサービスは既に始まっており、IDOの「cdmaONE」の一部の 機種では、専用のwebページで電話番号などを管理でき、それほ携帯電話のメモリー にダウンロードする事ができる。
また、iモードでも、「まいページ」というページで、自分スケジュールなどを 入力でき、Iモード端末でそれを見る事ができる。
サブノートでの文章編集・修正なども自分が作成した文章をネットにアップロードし サブノートでその文章を落として修正・編集し、編集し終わったらまたその文章 をネットにアップロードする形になるだろう。

つまり、今までは、メールならパソコンやポケットボードなどのメール端末、 WWWならパソコン、ワープロ文章ならワープロソフトとバラバラに存在していた 情報がインターネットを通す事で異なる機器でも、「情報」を共有できる という事である。

さらに、、今までのネットコンテンツは主にパソコンで使われる事を中心に 考えられていたが、これからは、「身につけられるコンピューター」に用の 「情報」が現れてくると思われる。
たとえば、将来的にはGPS(5)と携帯電話が合体し、(6) ドライバーの道案内や、地域の交通情報の提供にも利用できたり、 警察・消防用緊急電話番号へ電話をかけてくる、取り乱した通報者の居場所 を突き止めるのに役立つと考えられている。(7)
そのほかに、自分持っている携帯電話に地域の情報やお店の 割引のクーポン券が送信されてきたり、自分の友人が近くにいれば それを知らせてくれたりと、コミュニケーションに役立ちそうな サービスが色々と考えられる。

「身につけている」という特性を生かして、医療関連の情報 も得る事ができるかもしれない。人間の体温や血圧等の健康情報を毎日 ウェアラブルコンピューターで記録しておけば、日々の健康管理に役立つ はずだし、また、自分の健康情報を保存しておけば、外出先で事故や病気に あった時でも、すぐに自分に関する情報を医師に提示する事ができる。
実際に、「身につけているコンピューター」を使った医療サービスを始めている ところもある。ある医療ウェブサイトでは医療サービスに加入した医師にPDAを配り、 医師にこのPDAから様々な医療データーベースや、 患者の医療記録にもアクセスできるようになるという、 またこの医療サイトによればこのシステムは医療の質を向上できるうえ、 従来の管理手法より安上がりだという。(8)

我々が「身につけるPC」を持つようになれば、自分が欲しい情報が瞬時に 手に入る事ができるだろうが 情報過多といわれている今以上の「情報」を自分で処理しなければならない。 「情報」を有効に使えるか、それとも「情報」を処理できずに流されてしまうのか それはわからないが、いづれにしても、ウェアラブルPCがこれから、我々の生活に 浸透していくのは間違いがない  
 
 




(1)HMD →ヘッド・マウント・ディスプレイ。
ヴァーチャル・リアリティ技術のために、完全な視野を得る方法の一つとして考案されたディスプレイ装置。両眼にそれぞれ専用のディスプレイを用意し、顔面に装着する。液晶を用いた低価格のシステムと、高解像度の小型CRTを用いるタイプがある。網膜に直接レーザー光を当てる方式も研究されている。左右のディスプレイにはそれぞれ視差を持った映像が表示され、自然な立体感が得られる。磁気もしくは機械式センサーによって、見る人の回転や移動を検出し、 リアルタイムでCGを出力することで移動感も表現できる。

また、HMD型のウェアラブルPCは色々と試作されている。

  • 日本IBM、身につけて携帯するパソコン 『ウエアラブル・パソコン』を発表

  • Xybernaut Corporation

  • The Body Electric −人類はめざましく進化する(後編)

  • Wearables Central

  • IBM、Wearable PC写真



    (3)Wired Newsより 工具ベルトに『パームパイロット』

    (4)GPS →「Global Positioning System」の略。
    米軍が打ち上げた24個の人工衛星と地上の制御局,利用者の移動局から構成されるシステム。移動局と3つ以上の衛星との距離を計測することで,移動局自身の位置を知ることができる。4つ以上の衛星を利用すれば,3次元的な位置を測定できる。本来は,軍事用の車両,戦艦,航空機などの位置を測定するために作られた。(アスキーパソ単99より)

    (5)GPSと携帯電話が出逢う時

    (6)携帯電話の場所を正確に突き止める

    (7)米連邦通信委員会が携帯電話の位置追跡を承認

    (8)Wired Newsより 医療サイトが医師に『パームパイロット』を配布

    リンク確認は1999年9月19日です。

    1999/09/19

    作成 横田真俊

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