インターネット上のプライバシー考察


インターネットの普及に伴い我々は様々な情報を容易に修得する事が可能となった。
しかし、同時にコンピューター上の我々の個人情報を悪意ある第三者がのぞき見、改竄、 悪用、また、たとえ悪意がなくとも漏洩してしまうケースもある。
そこで、ここでは、「今、私達の個人情報をめぐる現状をどうなっているのか?」 「これから私達の個人情報はどうなっていくのか?」を中心考えていきたい。


インターネットプライバシーについての小レポート

1匿名性が弱いインターネット

「インターネット」の問題点として匿名性かよく指摘され、実際に匿名性を利用した 「サイバーストーカー」や掲示板での個人中傷といった問題がおこっている。 (1.2) しかし、インターネットは実際には匿名性の強いメディアとは言い難い メディアと考えた方がよい。  

むしろ、個人情報の収集、加工、改竄がしやすいデジタルの特性ゆえ従来よりも個人情報を流出する危険性を 含んでおり、実際に個人情報が流出するといった事件も起きている。 最近では、京都府宇治市の住民基本台帳データが流出(3)したり NTT職員を電話番号漏えいで逮捕される(4)という事件も起こっている。  

ブラウザのセキュリティホールも大量に見つかっている。(5) これらはブラウザのバグを利用して、キャッシュやブラウズ中のディレクトリを 悪意あるサイト管理者が見る事を可能にしてしまう。 たとえ、悪意の無いサイトでも我々の個人情報が簡単にわかってしまう事がある。 例えば、webページIPアドレス、使用OSとブラウザの種類とバージョン、 そのページにくる前はどのページを見ていたかはすぐにわかってしまう、 IPアドレスはインターネットにつながっている一つ一つのコンビューターに ついている番号で原則的に同じ物があってはいけない事になっている。 また、普段私たちが日常的に利用する電子メールからも使用メーラOS送信時刻どのような経路でメールが送られてきたか程度の情報はヘッダを見れば簡単にわかってしまう。

さらにcookieという技術もある。cookieはコンピューター上のテキストファイルで、通常はサイトにくり返し訪れるユーザーをで識別するのに用いられ、ブラウザー経由でウェブサイトへと伝送される。cookieを使えばユーザーの性向を反映した個人情報を蓄積して様々なサービスに活用できる。たとえば、Yahoo!では「MyYahoo!」というパーソナライズサービスを始めている。これはユーザーが好きなニュースや情報を選択し自分の好きにページをカスタマイズできる、サービスである。しかし、このことはユーザーがプライバシーを侵害される恐れがある。なぜなら、cookieデータと個人のアクセスIDをつきあわせればその人がどんな趣味をしているか、どんな用語での検索が多いかなどがすぐにわかってしまうからだ。

2 個人情報をめぐる動き。

このような個人情報の扱いについて色々と動きがある。 例えばアメリカのゴア副大統領はオンライン上で個人をまもる 「電子人権規制」の制定を求めた(6)ゴア副大統領は声明の中で、 このように述べている。 「アメリカ人は自分の個人情報を開示するかどうか選択する権利を持つべきだ。 その情報がどのように、いつ、いくらで利用されているかを知る権利を持つべきだ。 自分でその情報を確認し、それが正しいかどうか知る権利を持つべきだ」 プライバシーの推進者は、副大統領の電子人権規定要求を、 プライバシー問題に注目を集めるものだとして高く評価するが、演説中の個々の 事柄については一概に賛成はしていない。

プライバシー保護団体「TRUSTe」(トラスティー)が子供の個人情報保護 プログラムを発表している。 (7)TRUSTeは、個人情報の保護利用レベルをWWWサイトが明示化することを 推進している団体。「ユーザーの個人情報を何の目的で収集するのか?」などに ついての断り書きがされているサイトに関して「Trustmark」 というマークを付ける運動を進めている。 今回の「Children's Privacy Seal Program」 は13歳以下の子供が個人情報を提供する場合、 親の同意を得るようサイトに記載しているサイトにTrustmarkと同様に 「TRUSTe Children's Seal」のマークを貼るというもの。 これにより、個人情報を正しく使っているサイトのがある程度わかるというものである。

また、米ゲーム業界団体が個人情報収集についてのガイドラインを策定している。 (8)これは、インターネットの普及によりネットワーク対戦ゲームが急速に広まる一方、デモ版の配布やユーザー登録、アップデートなど、メーカーとユーザーの関係もインターネットの利用を通して、より親密なものとなってきた。その際にやり取りされる個人情報を保護しようという内容である。

日本でも個人情報に関する動きが現れている、政府の高度情報通信社会推進本部(本部長・小渕恵三首相)は16日、インターネットなどを柱とする新しい情報化社会の実現を目指すアクションプラン(行動計画)を決定した。(9)この中で「電子商取引の本格的普及」を目指すために電子署名を現在のサインや押印と同じように使える信頼性を持たせるため、郵政省、通産省、法務省が'99年度中に法制度整備に着手する。ネットワーク上の個人情報の保護対策も急務として取り上げ、今年夏をめどにコンピュータ上の個人情報保護の在り方を話し合う検討部会を設置。病院のコンピュータに保存されている個人の医療情報や、個人信用情報の保護に必要な法律による規制を検討する。(10)電子取引での4割近くがプライバシーについて不安を持っているので(11)、電子署名が実現すれば、よりオンラインショッピングが普及するだろう。世界的にも米国と欧州連合とで個人情報保護に関する基本合意が成立するなどプライバシーに対する関心がますます高まっている。


注釈・参考サイト

1   電子的ストーカー防止法の適用1号    ワイアード・ニュース・レポート

2  女性の掲示板にわいせつ画像   毎日新聞社インターネット事件取材班

3  宇治市、差し止め仮処分を検討 データ流出事件で販売業者に対し   毎日新聞社インターネット事件取材班

4  NTT職員を収賄で逮捕 電話番号漏えいで   毎日新聞社インターネット事件取材班

5 ブラウザバグ一覧(別紙)

6  ゴア副大統領、ネットのプライバシー保護を要求 CNET

  プライバシー保護団体「TRUSTe」が子供の個人情報保護プログラムを発表   INTERNET Watch    98.10.14

8 米ゲーム業界団体 個人情報収集についてのガイドラインを策定    INTERNET Watch     '98/12/1

9 電子署名の法制度整備に着手政府がアクションプラン    INTERNET Watch    '99/4/16

10 この中で「電子署名の法制度整備」の他にも2)公共分野の情報化、3)情報リテラシーの向上、4)高度な情報通信インフラの整備−−の4つを当面の最優先課題とし、その実現を目指すという事が決定している。

11  「考えて見ませんか? プライバシー保護について」    YOMIURI ON-LINE Bit By Bit

   


作成:横田真俊
1999/06/12
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