個人情報を狙うwebサイト達

 

 

 

 

はじめに。

ついに、日本でのインターネット人口は2000万人近くになり、(1)インターネット人口はますますふえつつある。また、携帯電話でインターネットに接続できるサービスiモードも1200万人を超え、(2)パソコン以外のインターネット接続の機会もふえつつある。

また、インターネットの使用方法も都によって様々になってきた。従来はメールやWWWの閲覧などの情報検索が主流だったが、最近ではEC(電子商取引)の分野の成長も著しい。(3)日本でのECも最近は活発になってきており、従来の企業と消費者の取引(BtoC)だけでなく企業間取引(BtoB)や消費者間取引(CtoC)も活発になってきた。

しかし、インターネット上のECはまだ登場したばかりという事もあり、様々な問題がある。例えば、ネットオークションや企業と消費者の取引はインターネット上での取引という事もあってネット上の写真と実物が大きく違うという事もあるし、さらに、注文した商品が届かないという事例もある。また、商品の決算にはクレジットカードを使うので、貧弱なセキュリティシステムでは暗証番号を盗まれる心配もある。

このように、インターネット上の取引には様々な問題がある。しかし、このような問題だけでなく、インターネットでの取引はさらに大きな問題も出現している。

それは、様々な業者が集めている私たちの個人情報の問題である。現在インターネット上では、様々なサービスが無料で提供されているが、それらは主にユーザーの個人情報を集めるために利用されている。例えば、大手ポータルサイトのYahoo!やLYCOS ではユーザがYahoo!やLYCOS のコンテンツの一部にアクセスする場合、個人情報の提示を求められる事がほとんどだ。大手ポータルに限らず中小のwebサービスのほとんどはこちらの個人情報の提示を求めてくる。このような個人情報はそのサービスだけで利用されるだけならば消費者にとってもメリットはあるだろうが、同じグループや他の業者に売り渡したり共有されて使われる場合もある。

また、webページに表示されるバナー広告の中にはユーザーが何を見たか、またそのユーザーの趣味や嗜好を記録・判別しユーザーにあった広告を表示するものも登場している。

実際の取引をしていなくとも、ネット上の無料サービスを利用したり、インターネットのwebページを見るだけで、自分の個人情報を見られてしまう事になってまう。日本ではこのような事はあまり問題になっていないが、インターネットの先進国である。アメリカで既にこのような「個人情報」をめぐる争いは一種の社会問題にもなっている。

<(1)自分のソフトから知らない間に自分の個人情報が抜かれている。

去年の11月ごろ、インターネット上のストリーム技術で有名なRealNetworks社の人気ソフト「リアルジュークボックス」がユーザーの音楽の好みなどを監視し、その情報とユーザーの身元を同社に送信しているという記事が掲載された。(4)RealNetworksはその後、「リアルジュークボックス」を使って情報収集していた事を認め正式に謝罪した。

このニュースはアメリカのニュースとして取り扱っているが、RealNetworksのソフトは人気が高く日本のユーザーもかなりの人数が使っていたと予想される。日本のユーザーの中にも、RealNetworks社に個人情報が送られた事になるだろう。

もちろん、このような問題はRealNetworks社だけでない、Microsoft社の「Windows98」にもユーザーの情報を無断で送信してしまう機能が搭載されていた。Microsoftはこのことを認めている。

このようにパソコンの中のソフトウェアを使って、ユーザーの個人情報集める行為が行われている。しかも、このような行為で問題になったのはユーザに事前に通知されていない事が問題になったので、事前に通知した場合はこのような行為は堂々と行われている。

例えば、先ほど問題になった、RealNetworks社だが、「リアルジュークボックス」がユーザーの個人情報を盗んでいる事が明るみに出た後、リアル社はユーザーの好みに合わせた音楽を配信するサービスを無料で行っている。言うまでも無いことだが、RealNetworks社はこのサービスの提供によってユーザーの音楽の趣味・嗜好を集める事ができ、ユーザーに合わせた広告の展開などを行うことができる。

「音楽の趣味・嗜好程度の事はプライバシーの問題なのか」と考える人もいるかと思う。確かに音楽の趣味・嗜好程度ではあまり大きな問題ではないかもしれない。しかし、このような細かい情報が集まった場合どうだろうか?さまざまな情報があつまった場合われわれの個人情報はさらに細かく特定されないだろうか?

次はさまざまな「個人情報」があつまった場合どのような事が起こるか考えてみようと思う。

(2)様々な「個人情報」が結びつく。

今年のはじめ、オンラインバナー広告を手がける「DoubleClick」社に対して、アメリカの様々なプライバシー団体から「プライバシーが守られなくなる」とFTCに苦情を申し立てた。(5)DoubleClick社はクッキーと呼ばれるユーザーの記録を監視するツールを使い、ユーザーの傾向に合わせたバナー広告を提供してきた。この機能は例えば、クラシック音楽が好きなユーザーがいたとして、そのユーザーはクラシックのページを主に見るとする。そうすると、サイトに表示されるバナー広告がクラシック音楽に関係するものが多くなるという仕組みになっている。

DoubleClick社はこのようにして「個人の趣味・嗜好」を集めてきたが、さらにデータ蓄積企業を買収し自分達が持っている個人情報と買収した企業の個人情報を結びつけようとした。DoubleClick社はカタログ会社からの個人情報を蓄積した会社Abacusを買収した。

Abacus社は1100以上ものカタログ販売のデータを蓄積はしている会社で、DoubleClickはこのデータと自分達が持っているデータを結びつけ、ユーザーがwebサイトを訪れた時にユーザーにあった広告を提供しようとしている。

プライバシー団体はこのようなDoubleClickのやり方に大きな懸念を抱いている。なぜなら、DoubleClickとAbacusのデータ結合が可能になるという事は複数の会社が消費者の個人データを利用できるという事にもなるからだ。確かに、AbacusはDoubleClickが買収した企業ではあるが、これから様々なオンライン企業が合併する時に我々の個人は強い会社に集中する事になる。また、DoubleClickのようなオンラインで個人データを集める企業と、Abacusのようなオフラインで様々な個人情報を集める企業が合併した場合。今まで以上に個人情報によって「個人」が特定される可能性があるからだ。

当初、DoubleClick社も強気の姿勢に出ていたがプライバシー専門家や世論の反対にあい、DoubleClickはこの計画を撤回している。(6)

もちろん、個人情報を狙っているのはDoubleClickだけではない、様々な会社が個人情報を狙っており、個人情報を入手する争いは私たち、一般の消費者を巻き込んだ争いに突入している。

例えば、破産した企業が自社の個人データを売却しようとして大きな問題になっている。(7)インターネットにねらいを定めて様々な企業が創設されたが、いわゆる「ネットバブル」も終わり様々な会社が破産したり、業務を停止している。

そんな中、破産したネット企業の中で自社の持っている個人情報を売却しようとしているところも現れてきた。これらのサイトは、顧客に「個人情報」の提出を求める時に「絶対に開示しない」と言っていたのにも関わらずこれらのデータを売ろうとしているのである。

また、このような「顧客情報」を売ると可能を明記したサイトもある。ECサイトの中で圧倒的な人気を誇る「Amazon.com」は今年の8月31日に同サイトにある「セキュリティポリシー」を変えAmazon.comが取得しているユーザーが自分で入力した個人情報すべてと、サイト内動作のトラッキングや運輸・配送会社からの情報などをAmazon.comの子会社や他の企業と共有する可能性がある事を明記した。加えて、他の企業からの顧客情報を同社の顧客情報に追加する可能性があることも示している。(8)Amazonは23000万人の会員数を誇る、世界最大のECサイトという事もあり、この動きは他のECサイト(もちろん日本にも)にも影響を及ぼすだろう。

さらに、「個人情報」を利用しようとしているのは破綻した企業だけとは限らない、例えばYahoo!ハホームページ作成サービスをする「GeoCities」やインターネットでの放送コンテンツを扱う「ブロードキャストコム」などを買収している。これらは一見個人情報とは関係ないように見えるが、「GeoCities」の場合はYahoo!無いのコンテンツを補強するという意味のほかに、GeoCitiesの持っているユーザの個人情報などを集める事ができる。

無料のメーリングリストサービスを提供していた「eグループ」もYahoo!に買収されている、メーリングリストいう非常に個人的な情報を持っている「eグループ」がYahoo!に買収された事によって、Yahoo!はさらに多くの個人情報を手に入れる事になる。Yahoo!のヒット数はアメリカでは世界最大のプロバイダーである。AOLには一歩及ばない物の、日本では圧倒的なヒット数を誇っている。

このような巨大なサイトも着々とユーザーの個人情報を入手し、私たちの生活を「囲い込む」用意をしている。

おわりに

このように様々なインターネット関連の企業が我々の「個人情報」を狙っているという事がわかってもらったと思う。現在ではこのようなインターネット上での「プライバシー」の問題はあまり大きな問題とはなっていない。しかし、インターネットの発達によって我々の知らない間に自分の「個人情報」は大手ポータルや有力なソフトメーカーにわたってしまうようになっていくだろう。

さらにこれからは、携帯電話などからも自分の個人情報が漏れる心配もある。既に現在の携帯電話の5分1以上がインターネットに接続でき、様々な情報やりとりする事が可能だ。しかも、携帯電話のインターネット情報は「モバイルバンキング」や「位置情報」と連動したコンテンツが多まなると予想される。しかも、今年の冬に登場するJAVA対応の携帯電話は携帯電話でゲームや情報をつねに送るエージェント機能などにも対応している。今後は携帯電話の代金回収システムと連動した、「モバイルウォレット」(=電子財布)も登場する構想もある。つまり、携帯電話に自分の関心のあるデータや自分の所持金などのデータ保存しそれを持ち歩く事ができるという事になる。そうなれば、今以上の「個人情報」のやりとりが予想される。

しかも、このようなインターネット接続だけでなくBluetoothによる端末同士の更新も可能になる、そうなればインターネットだけでなく、店の看板やATM、デジタルキオスクなどから私たちの携帯電話にアクセスする事も可能になるだろう。そうなれば、街を歩いているだけで我々の個人情報を収集されてしまうかもしれない。

インターネット上のプライバシーの問題は今は小さな問題だ、しかしいずれ大きな問題になる事は間違いがない。今のうちから対策を講じる必要があるだろう。

 


 

参考リンク・

(1)日本のインターネット人口は6月末にも2000万人超 http://www.zdnet.co.jp/news/0006/12/impress.html

(2)iモード加入1200万超す・NTTドコモ社長会見 http://it.nikkei.co.jp/it/tel/telCh.cfm?id=20000921eimi166121

(3)2000年の消費者向けEC市場、前年から85%増の610億ドルに拡大 http://www.watch.impress.co.jp/internet/www/article/2000/0418/bcg.htm

(4)『リアルジュークボックス』がプライバシー情報を収集 http://www.hotwired.co.jp/news/news/culture/story/3288.html

(5)「プライバシー侵害」と消費者団体から反発受けるDoubleClickのデータ照合 http://www.zdnet.co.jp/news/0001/28/doubleclick2.html

(6)ダブルクリック社、問題のプライバシー戦略を撤回 http://www.hotwired.co.jp/news/news/business/story/3821.html

(7)破産したドットコム企業が個人情報を売却? http://cnet.sphere.ne.jp/News/2000/Item/000701-2.html?rm

(8)Amazon.com、プライバシーポリシーで顧客情報提供の可能性を明記 http://www.amazon.com/privacy-notice/


作成・ 横田真俊

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
このworkは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの下でライセンスされています。