共有ソフトによって「エージェント」機能が登場する。インターネットの登場により、我々は多量の情報を手に入れるようになった、 以前ならば、6時のニュースを待たなければ最新のニュースを入手できなかったが今は 新聞社のwebページに行けば最新のニュースを入手する事ができるし、一般のニュースでは取り上げられない専門的なニュースもwebで簡単に入手できるようになった。 しかし、インターネットの世界が広がれば広がるほど情報を入手するのか簡単になり、 自分にとって価値のある情報を探す事が難しくなってきた。例えば一日に更新される多量のニュース記事から自分が関心のある記事をさがすのは難しいし、そのニュース記事を探し回るだけでも、かなり骨が折れる作業だ。 このような問題の解決策として「プッシュ」という技術が世に出た。「プッシュ」 というのは自分で情報を引っ張ってくる(プル)のではなく自分の関心のある分野の情報を自動的に送ってくる(プッシュ)という技術だったがこの技術は現時点では失敗に終わっている。(1) 「プッシュ」が失敗した原因として、日本では常時接続が難しかった事、 データを自動的に取得してくる機能が企業の社内通信ネットワークの混雑を招き,従業員がこのプッシュサービスを利用するのを禁止または制限する企業が出てきた事、などが原因としてよくあげられるが、私は「プッシュ」されるコンテンツが非常に限られていた事も原因の一つであると思う。例えば、「プッシュ」の代表的なソフトであった「ポイントキャスト」は朝日新聞などの代表的なサイトが選択しそのサイトの情報をダウンロードできるだけで、欲しい情報を様々なサイトからその人専用にカスタマイズして送るという機能が無かった。ただサイトの情報を全部ダウンロードするだけならば、わざわざ「プッシュ」を使う事もないだろう。 もちろん「プッシュ」が失敗したからと言って、「プッシュ」のような自動的に情報を集めてくれる機能の需要がないわけではない。しかし、現在では自分の代わりに情報を集め、カスタマイズして送ってくれる「エージェント」機能は現在では実現していない。 ではどのようにすればそんな夢のような技術が実現するのだろうか? 私はこのような「エージェント」機能の実現には「共有ソフト」の一つである、 「知識(コメント)」交換型のソフトが「エージェント」機能の実現のヒントになるのではないかと考えている。 前述した通り、「検索バディ!」や「blink.com」などは互いのコメントやブックマークを「共有」する事で情報を得る仕組みだが、これらの機能が進化するにつれコミュニティと連動した機能が出てくると考えられる。 例えば、「blink.com」や「STARTDASH.COM」はブックマークを他人と共有する事で 検索をしやすくするサービスであるが、ブックマークの性質上集めたデータを使って趣味が合いそうな人間を集め「コミュニティ」形成の手助けになったり、既に形成されている「コミュニティ」の中からその人にあった「コミュニティ」をマッチングさせる事ができるかもしれない。そうしてできた「コミュニティ」の中だけで、自分のブラウザ履歴の共有や「コミュニティ」の中でもリーダー的存在の2.3人の情報活動の共有など、または現在見ているトピックのリアルタイム(2) でのランキング表示などを組み合わせ、現在そのコミュニティで流れている情報をカスタマイズして送る事が予想される。 もちろん、現在でも様々な検索エンジンが検索されたキーワードをランキングしていたり、大きなニュース系のサイトも選んだトピックごとのランキングを発表しているが、これは様々な人間が見た回数を数えているにすぎない、それに対して「共有」ソフトは様々な「共有」情報を組み合わせて提供される事が予想され、よりその人に会った情報が提供される事が予想される。
「共有」ソフトによって完全な「オン デマンド」が実現する。Napster、Gnutellaの登場は音楽業界にとって衝撃的だった。しかし、これらの「ソフト交換型」ソフトの影響はそれだけでは止まらないだろう。現在ではADSLやCATV回線など高速回線はまだまだ発達していないがこれらの整備が整えば、Gnutellaはより多量で質の高いコンテンツをながす事も可能になる。 例えば、ビデオファィルなどもGnutella技術を使い「共有」する事ができるかもしれない、もしビデオファイルが「共有」される事になればMP3ファイル以上の衝撃になる事は間違いがない。 例えば次世代テレビの目玉機能の一つに自動的に自分の好きな番組を自動的に録画し、いつでも好きな時間にその映像を呼び出す事ができる「ホームサーバ」機能があるが、ビデオファイルが共有できる技術があればこのようなホームサーバ機能は時代遅れになる。なぜならビデオファイルが共有できるようになれば、現在流れているテレビ番組の他にも過去の映画の名作やアニメしかも最新の音楽ミュージッククリップが共有されるようなる。しかも共有されるファイルは国内で放送されているものだけではなく、世界中の映像コンテンツから自分の好きな番組を選択できるようになる。しかも共有できるのは映像だけではい、音楽、写真、活字、あらゆるものが流通する。 「テレビ」にとって、ビデオファイルを含んだ「共有」ファイルは今までのメディア(携帯電話、ビデオゲーム、レンタルビデオ)以上の脅威となる可能性がある。「共有ソフト」の特徴が現在のままの「ソフト交換型」のままであるならば、膨大な数のファイルの中から情報をさがしたり、曖昧な情報しかわからない場合目的の情報を手に入れ事ができないかもしれない。 しかし、「ソフト交換型」と「知識交換型」の特性を備えた「共有ソフト」ならば膨大な 情報の中から、他者やコミュニティに属している人間の「知識」を「共有」する事で今までの検索エンジン以上の知識を得る事ができる。 例えば、昔見た映画だがタイトルなど主要なキーワードがわからない場合でも 出演者の一部でもわかれば、その出演者の「コミュニティ」にメッセージに送れば ただちに、答えてくれるだろう。ここまでは今までの掲示板でもできたが 「ソフト交換型」の「共有ソフト」があれば映画のタイトルや出演者などの情報 を入力すればその映画を検索してくれるので、すぐに見る事ができるかもしれない。 今までは、「おすすめの映画」などと紹介されてもネット上ですぐに見る事ができずに レンタルビデオショップか映画館に行くしかなかったが、「共有」ソフトが発達すれば すぐに自分の好きな情報を見る事ができるようになる。 「共有」ソフトの問題点情報の流れを円滑にするという点で「共有ソフト」の存在は大きいものとなる可能性がある。ブックマークやコメントなどいわば自分の知識を共有する事でより情報の検索をスムーズにしたり、MP3ファイルの共有で自分の所有していない音楽を経験できるGnutellaなどこの二つの要素が融合すれば、我々の情報経験はよりよいものになるだろう。ではこのような「共有ソフト」に問題は無いのであろうか? 実は問題は山ほどある。特に大きな問題は「コンテンツ」と「プライバシー」だ。 特に「コンテンツ」の問題は大きい、現在(2000年5月)でこそGnutellaが「共有」しているファイルが10万程度と少なく、回線のスピードも十分でないため一曲のダウンロードするのに一般的な回線で30分〜1時間程度必要だが、これが数百kbps〜数Mbpsになれば、もっと早くダウンロードできるようになるだろう。現在は海賊版が横行しているのにも関わらずCDの売り上げが落ちていないが(3)、いずれCDの売り上げにも影響が出てくるのは間違いがない。 テレビや映画などに「共有」ソフトの影響が出るのは当分先の事になるだろう。 なぜならば、回線やファイルの容量をはじめ現在のインターネットには様々な問題があり。(4)インターネットで動画ファイルを利用するためにはこれらの問題を解決する 必要がある。また現在のパソコンに装備されているハードディスクでは動画ファイルをいくつも扱う事はできないだろう。だからと言って「動画」ファイルを共有する事は不可能ではない、ハードディスクの容量は年々すさまじい勢いで増加しているし(5)、新しいビデオ圧縮技術(6)が出現する可能性もある。 今後GnutellaやNapsterなど「共有ソフト」の注目は日に日に高まっている。 CDを販売している限り音楽のデータが「共有ソフト」を使って流通しつづける事は間違いがないだろうし、動画ファイルは現在の状況では扱えないかもしれないが 既にパソコンでテレビを録画し保存できる機能があるため、潜在的には「共有ソフト」を使って動画ファイルを流す事も可能である。インターネットで動画ファイルを扱えるにはまだ時間が必要であるが、ネットを使って動画ファイルを使うようになればパソコンやハードディスクレコーダで記録した映像が「共有ソフト」を使ってやりとりできるようになるだろう。 今までは、CDやビデオテープでコンテンツは流通していたが、これらは「共有ソフト」に よって無料で流通させてしまう。ではどうしたら良いだろうか?これらのコンテンツ業は逆に「共有ソフト」を利用するしかないだろう。現在ではGnutellaからソフトをダウンロードするのは無料であるが、これからは「共有ソフト」を使って有料で提供せざるをえなくなるであろう。日本ではまだまだ「共有ソフト」の影響は少ないが必ずや問題になる。 そのときはただ反対するだけでなく、いかに利用するかを考えた方が良いだろう。 「プライバシー」の問題も深刻だ。先日、Gnutellaを使ってポルノ画像を検索した人間のIPアドレスが 公開されるという事件が起こったが(7)、その他にも「プライバシー」の問題はある。 例えば、「共有」し「公開」した情報によって個人データが漏れてしまう事も考えられるし、今後文章ファイルも共有できるようになれば、自分の不注意でメールのバックアップやパスワードを記録したテキストデータも「共有」されてしまうかもしれない。 おわりに「共有」ソフトはまだ登場したばかりで、まだその力は未知数だ。 しかし、私は今まで述べた通り「共有」ソフトには様々な可能性があると考えている。 まずは、従来以上の検索システムが「共有」ソフトによって実現する可能性がある 現在でもブックマークや検索した際のコメントを共有し検索に役立てているが、 今後はGnutellaのようなソフトと連動したり、検索のコメントをコミュニティごとに ふれ分けられ、より精度の高い検索が出来ることが予想される。 次に、より深いコミュニティが「共有」ソフトによって実現する可能性がある。 プロフィールや自分のブラウザの履歴を公開する事で自分にあったコミュニティ を形成する事ができるようになるだろう。これは以前のようなアンケート式で コミュニティを探すよりも、より自分にあったコミュニティを探す事ができるだろう。 「コミュニティ」が形成されれば、その中から自分の関心のある情報をカスタマイズ し自動的に送ってもらう事ができる「エージェント」機能が実現するかもしれない。 そうなれば、あてもなくインターネットをさまよう無駄な時間が減るだろう。 以前のような「プッシュ」機能では選べる情報が限られていたが、「共有」ソフトに よって実現される。「エージェント」は様々なユーザーからの情報を手に入れる事ができる。 そして、「共有」ソフトは「オン デマンド」も実現する可能性がある。 既にGnutellaやNapsterでは膨大な数の音楽ファイルが「共有」されている。 次は恐らくビデオファイルが「共有」されるであろう。 さらに「エージェント」と結びつけば、自分の関心のある「音楽」や「映像」なども 自動的に送ってくれるだろう。
今までは、検索エンジンを中心に「ポータル」と呼ばれるサイトを中心に 「情報」を一つの場所に集め、そこに人を集めてきた。(8) このような方法ではどれだけ多くの情報を持っているかが勝負の分かれ目で あったが 分散された「情報」を共有するという新しいアプローチによって、 「どのようにして情報を集めるか」ではなく、「共有された情報から 必要な情報にナビゲートできる方法」が必要になってきた。 なぜならば 「情報」を持つだけなら「共有」という所有方法によりあらゆる情報を手に入れる 事ができるようになったが、いくら多くの情報を持っていてもそれを見つけられなければ意味がないからである。今後必要になっていくのは共有された情報からユーザーの 欲しい情報をナビゲートするサービス、いわば知識の流通経路を確保しなければならない。
関連リンク (1)眠りにつく「プッシュ」技術 (2)検索バディ!では現在検索されている、トピックをティーカで表示するという機能を既につけている。 (3) 海賊版音楽の氾濫にもかかわらずCD売上は増加 (4) バックボーンのボトルネックで広帯域バブルがはじける? (5)ハードディスクも更なる飛躍の時期を迎えている 「ハードディスクを変えた起業家魂」
(6)ビデオ圧縮のハッキング技術がMP3並に普及する?
(7)ポルノ画像ダウンロードで「恥の殿堂」入り? (8)「検索サイトの生き残り」は可能か 00/05/10 作成・横田真俊 協力・梅田 英和 |