はじめに「共有」をテーマにしたソフトが増えている。例えば、MP3共有ソフトの「Napster」や「Gnutella」。検索結果を共有できる「検索バディ!」、webサイトに付箋紙を貼る事ができたり、他のユーザーが貼り付けた付箋紙を見る事ができる、「Thired voice」、ブックマークを共有するサイト「ブリンク・コム」(1)など続々と「共有」をテーマにしたソフトが現れている。 このようなソフトが登場した背景にはインターネット自体が「共有」空間ではあったが、あまりにも巨大になってしまい、現在では自分が欲している「情報」を入手できにくくなっている。例えば、最近の検索サイト(特にロボット系)は検索式を上手く使わなければ、あまりにもヒット数が多くなり、そこから目的のページを探すのは非常に難しくなっている。しかもどんなに優良な検索サイトでも日々変化するインターネットの世界で個人々にあった情報を提供し続けるのはかなり難しくなっている。 しかし、「共有」型のソフトはインターネットの急激な変化にも耐えられるようなモデルになっている。例えば「ブリンク・コム」は自分のブラウザーのブックマークを「ブリンク・コム」に登録し、このブックマークを他人に公開する事ができる、もちろん非公開にする事もできるが、「ブリンク・コム」によると75パーセントもの人達がブックマークを公開しているらしい。そして登録したブックマークはそのまま「ブリンク・コム」に登録されるので「アクセスの高いサイト」や「登録された人が多いサイト」などがリアルタイムでわかる事ができる。たくさんの人達を雇って多くのサイトを登録するのではなく、お互いのブックマークを共有する事によって常に新しく人気があるサイトを登録できるのである。 「コメント共有型」と「ソフト交換型」さて、私はこのような「共有ソフト」は現在大きく分けて二つの種類があると考えている。 一つは、「検索バディ!」や「Thired voice」に代表されるソフトは様々なコメントを共有する事から「コメント共有型」とし。「Napster」「Gnutella」などはMP3など様々なファイルを共有する事から「ソフト交換型」とする。 まず、「コメント共有型」は従来のBBSのような書きこんだコメントをソフトの使用者で「共有」しようとするものだ、これらのソフトの使用者は「検索結果」のコメントやホームページに書き込まれたコメントを共有する事で従来よりも効率よく情報を集められようとしている。 例えば「検索バデイ」はキーワードを入力して[検索]ボタンを押せば、検索サービスでそのキーワードを検索し、結果が表示される。と同時に、「検索バディ!」のウィンドウ上では同じキーワードで検索した人達からのコメントやお勧めサイト情報が、さらに、関連したキーワードがBBSのように表示され、見る事ができる。 さらに表示されたコメントの中で気に入ったものがあれば「投票」できる、つまり同じコメントでも投票数が多ければ多いほど「役に立つ」コメントという理由である。従来の検索エンジンでは膨大な数の検索結果と味気ないヒット率しか表示されないが、この検索バディ!を使えば検索エンジンの検索結果と同時に自分の入力したキーワードと関連したコメントを見る事ができ、しかも投票機能により検索エンジンのヒット率よりも有益な情報を得る事ができる。検索を巨大な検索サイトだけに頼るのではなく、ユーザーのコメントを共有する事によって今までの検索サイトよりもわかりやすく検索結果を表示させる事ができる。さらにコメントを共有できる機能を使えば簡易的なBBSとして使われる事も考えられる。同じサイトを見ているユーザー同士でチャットする「gooey」 というソフトが人気を集めているが、「検索バデイ」などのソフトを使って、興味ある「キーワード」を検索(もしくは選択)したユーザー同士でのチャット機能も考えられるだろう。 「共有」ソフトの問題一方「Napster」や「Gnutella」に代表される共有ソフトは「ソフト交換型」と考えられる。これらは、MP3などの様々なファイルを共有するソフト。 例えば、私の持っているファイルをその他のユーザーが「Napster」や「Gnutella」を 使って直接アクセスして持っていく事が可能だ。 ところが、この「ファイル交換型」のソフトが今インターネットの世界で大きな問題となっている。 例えば「Napster」は米レコード協会,著作権侵害で提訴されている。RIAAの申し立てによると、「Napster」は巨大な海賊版市場と類似しているという。 「Napster」は各自が持っているMP3のコレクションを共有し合えるが「Napster」で交換できるMP3は違法コピーされた海賊版も流通している。さらに、ヘビーメタルバンドのメタリカ(Metallica)が「Napster」と3つの大学をやはり著作権を著しく侵害したとして訴えている。(2) また、「Napster」と同類のソフトと言われている 「Gnutella」(3)というソフトはSpinner/WinAmp音楽ソフト部門に属する社員ったプログラマー達が作ったもの、AOLはGnutellaはAOLとは何ら関係のない個人的な行為であるとの見解を発表し「Gnutella」を同社のサイトから削除したが、削除される前にGnutellaをダウンロードした人間達によってインターネット上で広がっている(4)「Gnutella」は現時点ではMP3ファイルだけでは無く様々なファィルを検索や入手する事ができ、音楽ソフト以外の様々なソフトの海賊版や違法幼児ポルノ(5)が出回っているらしい、しかも「Napster」がファイル交換のために中央の1台のサーバに接続する仕組みなのに対し,「Gnutella」は,何台のサーバにでも接続できる。このため,ユーザーは基本的に「Gnutella」は基本的に,Gnutellaを実行するすべての人に対して接続が可能であるため,このアプリケーションの利用を封じ込めるのは,ほとんど不可能だという。 さらに、「Gnutella」と同じ集中型のインフラを持たない、「フリーネット」(6)というものが開発途中であったり、「Napster」のようなファィル交換ソフトが今後も増加していく事が予想される。 違法、合法関わらず様々なソフトが交換できる、「ファィル交換」ソフトの登場は今までの様々なソフトの方向性に大きな影響が現れていくだろう。特にMP3などの音楽ソフトや今後現れてくるだろう電子書籍やDVDなどの映画ソフトはこれからの計画を大きく変更しなければならなくなるかもしれない。 現在、音楽ソフトのインターネット上での販売が一部で行われており今後も普及すると考えられているが、「ファィル交換」ソフトによって普及が大きく遅れる可能性が出てくる。なぜなら、まず「ファィル交換」によって音楽ファイルを買う必要がなくなる事。さらに現在の音楽ファイルは非常に多くの制限が課せられる事が予想されておりコピーの回数などが制限される事が問題となってくる。 コピー制限を課する事はもちろん不法コピー対策ではあるが、このことで普通に使用しているユーザーにも大きな制限が課せられる事になる。例えばパソコンで音楽ソフトをダウンロードしたとして、その音楽ファイルがコピー制限があまりにも強い場合、ウォークマン型の携帯端末に音楽ファイルをコピーする事すらできないかもしれないし、バックアップすら取れない場合もあるかもしれない。しかし現在のCDはソフトさえあれば簡単にMP3化でき、コピー制限も無いために様々なメディアにコピーする事ができる。「Gnutella」や「Napster」対策としてあまりにもコピー制限を課すとインターネットによる音楽配信の普及が大幅に遅れる可能性がある。現在ではCDもインターネット上で買うことができたり、CDが届くまでの期間オンライン上で購入したCDの音楽を聴く事ができるサービス(7)も始まったいく事から、わざわざ制限の多い音楽データよりも従来のCDを選んだ人間が多くなる事も考えられる。 おわりにユーザーのコメントや様々なファイルを共有できる、「共有」ソフトはまだ登場したばかりであるのにもかかわらず、大きな話題となっている。特に「Napster」「Gnutella」は様々なファイルを共有するという画期的なコンセプトと共に登場したが違法ファイルの交換など様々な問題を含んでおり、今後の動向が注目されている。これらソフト交換型の共有ソフトを「海賊版市場」としてしまうのを簡単だが、検索エンジンよりもすぐれた検索方式や様々なサイトを越えた「コミュニティ」を形成するメガ・コミュニティを形成するための切り札になる事も考えられる。次のキラーコンテンツは現在の上手く「共有ソフト」の要素を取り込んだコンテンツである事も十分に考えられる。その動きの前兆かどうかはわからないが、遺伝子研究者が「Napster」型の技術を利用してヒトゲノム関連の発見を共有しようとしている。(8) 「Napster」や「Gnutella」の問題点だけでなく、「共有ソフト」をどのように取り込んでいくかを注目していかなければならないだろう。 関連リンク「Napster」 「Welcome to gnutella」 「検索バディ!」
(1)ヤフー脅かす異色サイトが日本上陸--米ブリンク・コム (2)ミュージシャンがナップスターと3大学を提訴 (3)『ナップスター』より強力? 『グヌーテラ』、ウェブで復活 (4)封印されても水面下で広がるファイル交換ソフト「Gnutella」 http://www.zdnet.co.jp/news/0003/24/gnutella.html (5) 広がる「Gnutell」の波紋――幼児ポルノが横行,ポータルにも脅威? (6) 完全な匿名を保証する『フリーネット』 (7)「今すぐ聴きたい」欲求を満たしてくれるMP3.com――レコード業界にとっては悪徳海賊? 00/04/16作成・横田真俊
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