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読書感想/日本/な行/成田良悟



■成田良悟

バッカーノ! The Rolling Bootlegs/電撃文庫

 禁酒法時代のニューヨーク。
 不況に混沌とするその時代のその街で、ひとつの運命の輪が回りはじめる。裏世界に暗躍する組織 『カモッラ』に所属する少年に訪れた重要なとある日、底抜けにお間抜けで人騒がせな強盗二人組が 同じ街へたどり着き、『マフィア』のとある兄弟は話し合いの末に決断を下そうとしていて、――そして老獪な錬金術師が『不死の酒』を完成させようとしていた。その酒が、ばらばらな他人同士をひとつの場所に 引き寄せていく――。

 賑やかで勢いあふれてて、そしてなんといっても明るくて爽快感のある話でした。どうにも内面描写に陥りがちな作品が多い中で、良い意味でこの馬鹿馬鹿しさとノリまかせなお話はとても楽しめました。群像劇って個人的にすごく好きなんですが、読んでて楽しいのはやっぱりバラバラな人々がいつしかひとつの舞台に集まってるってところなわけで、この話はそこのところできっちり面白さを感じさせてくれたので良かったです。もともとのバラつきようはそれほどでもないので、こうきたかという意外性はそれほどなく、偶然まかせな部分もありはしますが、これだけのボリュームでこの人数を描き分けて活かせているというのはなかなか難しいことなんじゃないかな、と思います。バランスがとれてる、とも言えるかな。ただ、地の文が一部、主張しすぎに思えるところが少し引っかかりました。「神の視点」になりきってなくて感情の入った文章になってるところがあったのが、こういう、キャラに等しく距離を保って描くタイプの話にはあまり合ってないのではないかなと。運命とか螺旋とか、同じ比喩の繰り返しも少し多いなと個人的には思いました。
 キャラでは強盗二人組がめちゃくちゃヘンで素敵でした。ホント馬鹿なんだけど、ぜんぜん憎めない。あの会話にもなんかほのぼの良い気持ちにさせられました。ぜひ次回作以降にも、チラッとで良いから、出てきてほしいな。……というか、こんな路線の話をまた出して欲しい。最近のライトノベルのラインナップを見てるとそう真剣に願ってしまいます。



バッカーノ! 1931 鈍行編/電撃文庫

 大陸横断鉄道「フライング・プッシーフット」。NYへ向かうその列車には、一癖も二癖もある連中ばかりが乗り込んでいた。
 列車に詰まれたある貨物を強奪するつもりの不良たち、崇拝する指導者を奪還する計画をたてていたテロリスト、列車を乗っ取って鉄道会社から金を脅し取ろうと考えるギャング、そしてNYの友人へ会いに行くつもりの強盗カップル。
 まるで何事もなく走り出した列車のなかで、他の人間のことなど知らない彼らは、それぞれが予想外でとんでもない大騒動を生み出し、あるいは巻き込まれていく。

 前作にひけをとらない馬鹿騒ぎっぷり、登場人物の多さでした。アップテンポなノリもそのままかそれ以上で、連続するアクションシーン、小気味いい会話の応酬、垣間見える異物の存在、と中身も色々とぎゅうぎゅうに詰め込まれていて、正直理解するのがちょっと大変に思えるくらいでした。あと、ちょっと思ったのは、人死にがやたらと多すぎるんじゃないかなと。ノリが軽いのでそう後味悪くはないし、時代と話のカラーからもそう外れた描写なわけでもないんですが、少しあっけなさすぎなようにも感じたので。
 話がこれ一冊では片付いてないので疑問符がついたままの部分がやたら多く、この一冊だけでは満足したとはいえないのですが、逆に言えばそれだけ次巻に期待がかかるということで。同じ時間軸同じ舞台でどれだけ違った物語になるのか、楽しみです。
 キャラクタでは、前作で登場済みのカップルが変わらない人の良いお馬鹿っぷりで、イイ味出してました。新キャラでは刺青男と爆弾娘、「狂信者」の女あたりが好みです。前者では過去のエピソードにはホロっとしてしまいました。こういう純なのって好きだなあ。後者はただもうそのストイックさとビジュアルがツボで。あのイっちゃった表情がステキでもう。


バッカーノ! 1931 特急編/電撃文庫

 「鈍行編」と同時間軸での出来事を違う視点から送る物語。
 知人に会いに行く不死者、情報屋に会いに行くワケあり無賃乗車の女、仕事だから乗り込んだ車掌――そして腹に一物持った三組の集団たち、彼らを乗せたNYへと向かう列車は、「怪物」が目覚めたことによって、予想のつかない展開を見せていく。

 物語としてこう来たか、という驚く要素はそれほどなかったですが、相も変わらずホントに手前勝手に行動しまくるキャラクタたちの騒ぎっぷりにはまた楽しませてもらいました。そのめまぐるしい展開のなかで、段々と、あるいは突然に見えてくるキャラの心の内の描写も意外に感じたものや惹かれるものもあって、面白く読めました。多少、説明だけで終わっててエピソードがもう少し欲しいなと思う部分もありましたが。
 今回ツボだったのはクレアです。相当アレなお方でしたが、途中とラストのあのまっすぐな行動がステキでした。ぜひぜひ再登場願いたいです。そして白服カップル、前巻を読んだときにはまさか気に入るとは思わなかったですが、今回の話でとても好きになれました。……この話、「正しい人間」なんてロクにいないけれど、「良い奴」はたくさんいるんですよね。そこがこのシリーズが好きになれてる理由なのかも、と思います。
 あとイラストの使いかたが絶妙。絵柄的にもすごく合ってるし、文章との相乗効果を上手く生める箇所にバッチリ絵が挿入されてる感じ。個人的なベストショットは176ページ。そのシーン自体がお気に入りなんですが、双方の表情の対比がイイ感じで好きです。


バッカーノ! 1932 Drug & The Dominos /電撃文庫

 新種の麻薬を作り出した錬金術師、薬漬けな現在から抜け出そうと葛藤する麻薬中毒者、仕事が上手くいかず苛立つマフィア、兄の仇を討つ決意を固める資産家の少女――彼らの運命がとある場所をきっかけと転機にして交錯していく――。

 多視点でのドタバタ騒ぎが身上のこのシリーズ、今回も当人たちは大真面目、なのにどこかおかしくて、なにより憎めない、そんな取り得がそのままで充分楽しめました。この話は今までよりも切なめな要素が大目で、馬鹿騒ぎよりもキャラそれぞれの生きかたの印象のが強くて、今までのよりはおとなしめには思えました。それぞれの決意やその後には、ほっと息をつける気分にさせられたり、ホロ苦くさせられたりと良い意味でバラバラで、複雑な余韻がありました。個人的には、前巻から引きつづき登場のクレアがサラっとまたステキに活躍していってくれたのが嬉しかったです。描きようによってはただのアレな人になりそうなのに、微妙に抜けてるところがイイです。
 あとこのシリーズといえば……どうしても気にかかるのが誤字脱字の類。傍点(・)が「ぃ」って表記されるのってどういう過程で起こる間違いなんだろう……。内容第一とはいえ、この多さはちょっといただけないなと思うほどなので、これだけはどうにかしてほしいです。


バウワウ! Two Dog Night /電撃文庫

 佐渡と新潟のあいだに架けられた橋の中央にそびえる人工島――工事計画が途中で放棄されたために今やさまざまな人々が住む九龍城さながらの無法都市と化したその場所に、同日ふたりの少年が訪れる。ひとりは幼なじみの少女に無理矢理連れられて、ひとりは島に興味を抱いて惹きつけられたように。
 そして五年後、島でまったく違う立場を築いたそのふたりの少年の運命が交錯する。

 惜しいな、もったいないな、というのが正直に思ったことでした。この無法都市の設定そのものは珍しくはないものの面白く描かれていて、たった一冊でこの世界を終わりにするのは惜しく思えるくらいでした。そこに住まう人たちのちょっとした台詞も生き生きして楽しめたし。けれど中心となる、「鏡合わせの存在」とくどいくらいに文中で触れられるふたりの描写が、もうひとつだったなと。そのふたりのキャラクタがそれほどくっきり立っていない段階でああいうサプライズを仕掛けてこられても、戸惑うばかりで、意図されている話の流れに乗り切れないままにクライマックスへ、という感じでした。もう少しキャラを立てる「承」の段階が必要だったんじゃないかなと。ただクライマックス、ふたりの対決シーンには、思いがけず切なく哀しくさせられましたが。こういうふうに重く、やりきれなくさせられるとは思わなかったので、けっこうがつんと来るものがありました。ラストもなんともいえない余韻でした。イラストの効果でその感覚倍増です。
 あと例によって誤字か誤植か校正忘れ、とにかくなんでこんなに多いんでしょうか……。刊行スピードが速いのは良いけれど、作者も編集も校正者もちょっと落ち着いて振り返って一度読んでみて欲しいなあと思います。


デュラララ!!/電撃文庫

 非日常にあこがれて、親元を離れて東京・池袋の私立高校へ通うことにした帝人。その街で出会ったのは、それぞれどこかがキレたおかしな連中ばかり。そして巷では御伽噺のような奇妙な「首なしライダー」伝説が流布していた。そんなふうに確かに訪れてくれた非日常な日々は、歪んだ人々の歪な想いが絡み合って、ひとつの物語を形作っていく……。

 相も変わらずというよりはもう一端のお家芸になってきた、お馴染みの多視点構成でのヘンな人々のヘンな物語。今回は主要キャラの設定がなによりヘンというか、けっこう画期的。それでもってそんな奇抜なキャラだというのに、アオリ文句どおりの「歪んだ恋」の成り行きにガツンと心打たれてしまったものだから、正直参りましたとしかいえません。傍目からは歪んでるとしかいいようのないおかしさのある設定なのに、その想いがひたすら純粋で甘くて哀しくて、いつのまにやらどっぷりと感情移入させられてしまいました。その他のキャラも、それぞれのとことん我を通しまくってるキレ具合が面白く、本家の「池袋IWGP」少年版コミカル風味といった感じに楽しめました。個人的にはイザヤとシズの出番がもうちょっと欲しいなーと思えたので、次作(あると信じて)に期待します。
 また、この本のちょっとした「お遊び」も、なかなかイイなと。ネットを利用したこういうオマケ要素はけっこう好きだったりします。


バッカーノ! 1933 THE SLASH /電撃文庫

 笑顔と鋏を絶やさない拷問師、日本刀を離さない殺し屋、言葉を話さない元テロリスト、過去を捨て導師に尽くす青年、自然を敬う赤眼の奇天烈な銃使い、婚約者のためなら何事も厭わない最強の殺し屋――さまざまな思いとばらばらな目的を抱く彼ら彼女らが、「不死」をひとつのキーとしてとある場所へたどり着くとき、血の死闘とともに、意外な真実が現れる――

 かなりの人数のキャラがひしめきとにかく自分勝手好き勝手に騒ぎまくって、物騒なことをやらかしつつも、その重さはあまりなく、あいかわらずにぎやかに楽しい話ではありました。けれど、この話をひとつの転換点として、このシリーズは長編に入っていくそうなんですが、この上下巻はそのためのまるで前フリでしかないような、そんな軽い印象もありました。これからのためのキャラ、これからのための意外な真実、これからのためのエピローグ。……そういう節目の話なのだと割り切って読めば良いのでしょうが、起承転結を味わったという充足感には欠けました。
 とはいえ、個人的に入れ込んでるヴィーノと婚約者の甘甘っぷりにはとても満足はしたんですが。この作者の描くカップルはどれも本当にいとおしくなるくらい微笑ましい組み合わせが多くて好きです。……ヴィーノはとりわけ主役食いすぎてるよなあと思いますけれどね。いちいち台詞も行動も、カッコよすぎます。彼が神について語るくだりはお気に入りです。


デュラララ!!X2/電撃文庫

 東京・池袋で起こっている、刃物による連続通り魔事件。皆目犯人の見当もつかずにいるその事件の真実は、そこに生きる不器用な人たちの、歪んでいてけれど純粋な、「愛」が絡み合ったところにあった――。

 前作で活躍したキャラのその後が読めて楽しく、新たな緊張関係が生まれ次作への期待も高まった今回の話でしたが、本筋そのものがもうひとつに思えました。後半になればいつものように?怒涛の展開で、せわしなくにぎやかなことこのうえないんですが、そこにいくまでがどうにもまったりしすぎなように感じたので、全体的にはどうしても間延びした印象を受けました。それでも後半の「直接対決」の場面での清々しいまでの狂気の放ちようにはゾクゾクしました。キャラではこの巻の中心となる静雄がなんといっても一番素敵でしたが、首無しライダーが角が取れすぎてやたら可愛かったです。
 またこのシリーズも、というべきなのか、キャラを文章からしっかり活かしてるイラストが素晴しいです。いわずもがなでしょうけど。見開きイラストの対比だとか、目次ページのライダーとか、ハッとする構図がさすがだなあと思いました。


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