GO TO HEAVEN or HELL?



「ダブルデェトぉお?」
「おう、この4人で明日な。」

素っ頓狂な声を上げるフリックに応えたのは、楽しそうにしているビクトール。ここはノースウィンドウにある同盟軍の本拠地である。うららかなある晴れた日の午後―――兵士達に剣の稽古をつけていたフリック達(マイクロトフ、カミューもこの場にいた。)に、ビクトールがおやつ片手にやって来た。ハイ・ヨー自慢の中華饅頭がいい匂いだったので、丁度一段落したという事にして休憩時間を作ったところだ。
「ヤマトが明日からこのメンバーで、ラダトの街まで遣いに行ってくれ、だとよ。」
「何だ、そーゆー事かよ。変な言い回ししやがってっ!」
「ラダト?何をしに行くんです?」
毒づいて肘鉄を喰らわすフリックに、ビクトールはへへっと笑ってみせる。その横からカミューが訊いてきた。
「ん?ああ、何でもミューズからの遣いがそこに来るらしくてな・・・」
「それにしては・・・戦闘に行く様なメンバーですね。」
マイクロトフの尤もな意見にビクトールは肩を竦めて言った。
「実は、それはあんまり大した用じゃなくてだな・・・帰る道中モンスター倒しまくって金を稼いでこい、だとよ。」
「最近、ここも人数増えたからなぁ・・・」
フリックが後ろをちらっと見やって言った。一般兵士達が饅頭と茶を美味しそうに食べている。仲間が増えるのは良い事だがパトロンがいる訳でも無く、当然食いぶちは自分達で調達しなければならない。中でもモンスター討伐作戦は、一番体力的にも精神的にも過酷であった。
「まったく・・・損な役割だぜ。デートとでも思わねぇとやってられっか!」
愚痴るビクトールに成る程とマイクロトフは真面目に頷いた。カミューも一通り考えを巡らせ、もう決まっている事だと理解してそれならば、と。
「そうですね。どうせ行くなら楽しい方がいいですし・・・決まりですね。」
「ま、デートっつうより旅行だがな。ゆっくり時間かけて出来るだけ多く金持って帰れって言ってたからな。」
「では、この後早速、旅支度しなくてはならないな・・・」
「―――って、何が決まりなんだよ!お前ら絶対、どっかおかしいんじゃないか?!」
フリックはビクトールの言葉に反論どころか、納得している二人を見て叫んだ。
「いえ、体調は万全ですが?」
「マイク、フリックは照れているんですよ。」
「はっはっはっ!楽しみだなフリック!」
三者三様に返され、しかも勝手に照れている事にまでされてしまって、フリックは何時もの事ながら『こいつらには何を言っても無駄かもしれない・・・』とがっくりと肩を落としたのだった。




 ―――次の日四人は、朝早くミューズからの使者と落ち合う為、ビッキ−にラダトの街までテレポートしてもらっていた。書簡を受け取るだけの簡単な遣り取りで終わった為、一度宿屋に荷物を預けに寄る事にする。最初乗り気でなかったフリックも、いざ来てしまえば気分も晴れていてのんびりと街の様子を眺めていた。ただ、一行の名目が『(何年経っても)新婚旅行ツアー』になっているのは、かなり嫌だったが。

ビクトールは宿屋の主人に案内された部屋に入ると、閉じられたカーテンを勢い良く開いた。途端に明るい日差しが窓から差し込んでくる。
「ふん。なかなかいい部屋じゃねぇか。」
両側の壁沿いにベッドがひとつづつ置かれていて、間に小さな応接セットがある。それでも狭さを感じさせない小奇麗な部屋だった。フリックは左側のベッドに荷物を降ろしながら呟いた。
「何で、お前と一緒の部屋なんだ・・・」
「なぁにぃ?!一体他の誰と二人になりたいんだ?」
「誰もそんな事、言ってないだろ?・・・ただ、シングルだって空いてたじゃないか。」
「馬っ鹿ヤロ。俺としちゃダブルでも良かったくらいだぜ?」
そう言ってビクトールがフリックの腕を取って引き寄せた。そうされたフリックはビクトールの顔に背いて、反対側の腕で抱き込まれるのを防いだ。別にビクトールとの相部屋が嫌な訳では無い。今更だし。―――ただ、当たり前の様にビクトールが主人に自分とフリック、マイクロトフとカミューの部屋を要求したのが、特別な意味を持っているみたいで気恥ずかしかったのだ。新婚旅行なんていうから―――フリックは変に意識している自分に嫌気が差していた。
「フリック、こっち向け。」
自分を見ないフリックに焦れたビクトールが、頬に手を沿え強引にこちらを向かせる。まともに顔が見られないと思ったフリックが目を閉じると、ビクトールはその唇に自分の唇を押し当てた。固く結ばれた歯列を舌で無理矢理抉じ開けて、口内を弄る。逃げ惑う舌を絡めとって強く吸い上げた。
「―――んっ・・・」
苦しげな声が洩れたがお構いなしにビクトールはフリックを追い上げる。フリックの力が抜けて自分にしがみ付くまでビクトールは深く深く口付けていた。
「・・・あいつらに、一緒に昼飯食おうなんて言わなきゃ良かったぜ。」
先程の口付けで頬を上気させ目の辺りを赤くしたフリックを見てビクトールは、昼飯よりフリックが食べたいと思った。しかしその言葉にはっとしたフリックが慌ててビクトールを突っぱねる。
「そうだ昼飯!早く行かなきゃな。もう待ってるかもしれないな・・・」
するりとフリックはビクトールの腕の中から抜けて、ドアへと急いだ。ビクトールもちぇっと残念そうに舌打ちをしてフリックの後に続いた。

 部屋を出ると、丁度一組のカップルとすれ違った。露出度の高い格好の女と軟派そうな男で、二人とも水商売風だった。何やらお喋りしてはクスクス笑ってキスなんかしている。フリックがぎょっとして見ているのに、ビクトールが笑って言った。
「おーお、見せびらかしてくれるねぇ。」
「人前であんな事・・・信じられん・・・」
ビクトールとフリックが何気なく振り返って見てみると、自分達の部屋の奥へと歩いて行く様だった。そこには後ひとつしか部屋が無いので、どうやら隣の部屋になるらしい。フリックはちょっと嫌だなと思ったが、自分でどうこう出来る問題じゃないので出来るだけ忘れる事にして、待ち合わせの食堂へ急いだ。


 昼時で混雑する食堂に一通り目を通すと、案の定二人は先に着いていた。同じテーブルに腰掛けると早々とウェイトレスがお水とおしぼりを持って来た。
「本日のランチの大盛り3つと、特盛り1つ・・・でいいよな?」
ビクトールが皆の顔をぐるっと見渡して言うと、一同は各々頷いた。誰が特盛りかは訊かなくても解る。ウェイトレスが立ち去ると、おしぼりで手を拭いているフリックにカミューが意味ありげに、にこりと微笑んだ。
「遅かったですね?何かありましたか。」
ぎくっとしてフリックの手が止まる。そんなはずは無いのだが、先程のキスを見られていた様な気がして、フリックの顔が少し赤くなった。
「ああ、いちゃついてるカップルがいやがってよ。ムカツクから俺らも見せ付けてやるかって話を―――――ってぇ!」
「するかっ!そんな話!!」
フリックにテーブルの下で思い切り脛を蹴られて、ビクトールは悲鳴を上げた。日常茶飯事的に見られる彼等の遣り取りに、カミューとマイクロトフは顔を見合わせると二人して笑い合った。
「いつも充分、見せ付けられていますけどね。」
「ああ、確かに。」
それを聞いたフリックは、もう一度ビクトールに八つ当たりの蹴りを一発入れたのだった。



昼食を終えた後、ここからが本題だと近辺へモンスター狩(?)に繰り出していた。
天気はこの上無く上々で、空が抜けるように青い。戦闘で高ぶった体に少し冷たい位の風がとても心地良かった。

「ああ、そうだマイク。聞く所によるとあの宿屋のスープは絶品だそうですよ。」
「そうか。では、是非今晩頼む事にしよう。」
フリックの耳に前を行くカミューとマイクロトフの話が入って来た。端から聞いたら何て堅苦しい話し方かと思うが、当人たちはあれで普通らしい。騎士道精神に乗っ取った行動を常に心掛けているそうだが・・・男同士の恋愛はそれに反しないのか一度訊いてみたいところだ。―――そう、男同士だが・・・二人とも見た目麗しく紳士然としていて、並んでいても全然イカガワシくない。今もカミューが柔らかく微笑んでいるのに、マイクロトフが優しい瞳で応えていて、とても幸せそうだ。

そう思ってフリックはどうしてか、ため息を洩らした。二人共人前でも、互いを愛していると臆面も無く言う事ができる。自分も同じ立場にいるはずだが、到底彼らの様には振舞えない。ビクトールといる時はいつも、つい意地を張って素直になれないでいる―――そんな自分が、あんな風な幸せな表情をしているとは思えない。もし、自分に彼等の様な度胸があれば・・・違った世界が見えてくるかも知れない。その世界がどういうものか、あまり想像はしたくはないが。

「おい、フリック。」
ぼんやりと考えながら二人の姿を見ていたフリックの襟首を引っ掴んで、ビクトールがむっとした表情で覗き込んだ。
「俺以外の奴を、んな熱い瞳で見てんじゃねぇよ。」
「ばっっ・・・そんなんじゃないっ!」
何を言い出すんだ、とフリックがビクトールの腕を振り解いた。ビクトールも平気で自分の想いを口にする。こんな時フリックは、どう対応していいのか判らなくてほとほと困り果ててしまう。そして更にビクトールに『カワイイ』とか言われて、追い討ちを掛けられるのだ。
ぷいっとそっぽを向いて早足でずんずん行ってしまうフリックの後姿を見ながら、ビクトールは何かがおかしいなと思っていた。フリックをからかって遊ぶのは何時もの事なのだが、その反応がいつもとは微妙に違う気がする。どこが、と言われれば解らないのだが・・・何かイライラしている様にも思える。突っ込んで訊こうかどうしようかと思案していると、先を行っていたマイクロトフが振り返った。
「フリック殿、ビクトール殿っ!標的発見ですっっ!」
見るとフリックはもう駆け出していた。ビクトールもそれを追いながら剣を握り締めた。
「おお!逃がすんじゃねぇぞっ!」
ビクトールも、フリックも―――もやもやする気持ちを打ち消す為、力一杯剣を打ち下ろした。



 今日は初日という事で日の暮れる頃には、金稼ぎは早々に切り上げ宿屋へと戻ってきた。晩飯には宿屋自慢の料理を大いに楽しんだ。特にスープはカミューが言っていた様に絶品だった。食事を終えた後は特にする事はなかったので、少しBARで飲み談笑する。しかし酒は程々にして明日からの激闘に備える為部屋で休む事にした。カミュー達の部屋はフリック達の部屋の手前にある。フリック達はそこで挨拶を交わして、隣の自分達の部屋へと入って行った。ビクトールが昼間開け放ったカーテンを今度はフリックが閉めた。
「もう・・・俺は寝るけど、お前も寝るだろ?」
ベッドに腰掛け、置いてあったバッグを開けながらフリックは言った。
「おう、お前と一緒にな。こっちこいよ、フリック。」
「・・・馬鹿言うな。俺は寝るから。」
「じゃ、俺がそっち行くか。」
ビクトールの方を見ようとしないまま布団に潜り込もうとするフリックの方へ、ビクトールはずかずかと歩み寄りその布団を剥ぎ取った。
「何しやがるっ!」
「なあ・・・何怒ってんだよ?」
体を起こして噛み付いたフリックの両肩に手を置いて、ビクトールはフリックの瞳を覗き込んだ。
「別に・・・怒ってる訳じゃ・・・」
そう言ってフリックは俯いてしまった。そう、怒っているのでは無い―――と思う。自分でもこの感情をどう説明すればいいか良く解らない。
「じゃ、どっか調子でも悪いか?」
肩に手を置いたままビクトールがフリックのおでこに自分のを当てて、熱さを確かめてみる。フリックはビクトールの方が熱いと感じた。
「ん〜〜〜熱は無いようだが・・・ちっと顔が赤いな―――って、おい?」
離れたビクトールの熱を追う様に、その肩口にフリックが顔を埋めた。温かい―――フリックは心を落ち着ける様に深呼吸して、ビクトールの腕が背中に回るのを感じながら声を絞り出した。
「お前、俺といて楽しいか?」
「何だよ、いきなり。楽しいに決まってっだろ。」
ビクトールはびっくりしてフリックの顔を見た。フリックの青い瞳がまっすぐ自分を写している。
「俺は・・・何かお前に怒鳴ってばっかりいて、カミューみたいに笑ってやれないし、マイクロトフみたいに人前で好きだって言ってやれない。」
「別にあいつらは関係ないだろ。」
「怒ってる訳じゃないんだ。でも・・・好きだって言われて、嬉しいって思ってもうまく言葉に出来ない。」
「?!」
「お前に怒ってるんじゃなくて・・・あいつ等見てたら自分が情けなくって・・・だから・・・」
一生懸命言葉を紡ぐフリックをビクトールは信じられない思いで見詰めた。
「今、嬉しいって言ったか?」
「?ああ。そりゃ嬉しいだろ。好きな人にそう言われりゃあ。」
真顔で返すフリックをビクトールは力一杯抱き締めた。ああ、もう、こいつは―――・・・普段そーいう事でからかうと真っ赤になって恥ずかしがるのに、たまにこっちの心臓を鷲掴みにする様な事を平気で言う。真面目で不器用な彼は、問われれば嘘偽り無く正直に自分の気持ちをぶつけてくれる。それがビクトールをどんなに喜ばせるか本人は気付いていないのだが。

「ははっ、すげぇ殺し文句だな。」
嫌味か、それは?とフリックが拗ねたのに、マジだぜとビクトールはキスをした。
「俺は、今のままのフリックが好きだ。一緒にいてすげぇ楽しいし、幸せだ。」
だから、もう何も考えるな―――ともう一度キスをする。解ったと頷いて、今度はフリックからキスをした。それから何度も啄ばむ様なキスをして二人して笑った。いい雰囲気に気を良くしたビクトールが、フリックのシャツをたくし上げ様とする。はっとしてフリックは其の手を抓った。
「馬鹿っ、やめろ。隣にカミュー達がいるんだぞ。」
「隣だって今頃はよろしくやってるって。」
「そんな筈ないだろっ。」
カミューはともかく、あの真面目なマイクロトフが任務期間中にそんな事をするとは思えなかった。頑なに拒み続けるフリックに、ビクトールは焦れていたが、ふと思いついてにやりとほくそ笑んだ。
「嘘じゃねぇって。ほら、聞いてみろ。」
フリックの頭をぐいっと壁に押し付けて、自分も耳を壁に当てる。すると良く聞えないが、微かに何かが軋む音と小さな高い声が途切れ途切れに耳に入った。それが、何の音であるか理解したフリックは慌てて飛び退いた。
「な?そうだったろ?」
にやにやしたビクトールに話し掛けられたが、真っ赤になったフリックは答える事が出来なかった。信じられない。あれがカミューの声?―――想像してしまってフリックは更に狼狽した。そんなフリックの姿を喉でくっくと笑いながらビクトールが見ている。

「俺達も、負けらんねぇよなー。」
勝ち負けの問題じゃ無い筈だが―――フリックが何か言う前にビクトールはその体を組み敷いた。さっきまでとは違う、深く貪る様なキス。執拗に絡めてくるビクトールの舌にフリックが応える頃には、すっかり二人ともその気になっていた。ビクトールの掌がシャツの裾から侵入し胸の突起に触れた時、あっと声が出るのを慌ててフリックは堪えた。
「こっちは・・・嫌だ。向こうに行こう。」
「え?向こう・・・?」
隣の声が聞えるという事はこっちの声だって聞えるに違いない。だからフリックはビクトールの方のベッドへ行こう、と言ったのだ。それに何故かビクトールはちょっと神妙な表情をしてみせた。―――が、直ぐにフリックを抱えると向かいのベッドへと移った。
「ま、いいだろ・・・」
その呟きはフリックには聞えなかった。




 翌朝、やはり待ち合わせた食堂にはカミューとマイクロトフの姿が先にあった。
「おっ、早いじゃねぇか。」
「おはようございます。昨夜は良く眠れましたか?」
「そんな訳ないでしょう?寝たのは明け方近くなんだから。」
マイクロトフの問い掛けに、カミューが横槍をいれた。何で知ってるんだ?とフリックは驚いてカミューを見た。するとカミューは明らかに目を赤くして寝不足の形相で、どことなく不機嫌そうだった。人の事は言えないが昨夜・・・その、あれ・・・を夜道しやっていたのだろうか?又想像してしまってフリックの顔が少し赤くなった。―――しかし、それにしてはマイクロトフはかなり元気そうだ。
「それはカミュー、お前だろ?すみません・・・俺は昨日あれからすぐ寝たのですが、カミューはどうも眠れなかったみたいで。」
「そうか・・・じゃあ今日はあんまり無理すんなよ。」
「ええ。当然私の分まで働いてもらいます。」
「ちっ、しゃーねーな。」

おかしい。―――ビクトールがカミューにああまで言われて反論しない。それにさっきのマイクロトフのセリフ。フリックは何か嫌な予感がした。そのフリックの心配を確定していくかの様に、バイキングで取って来たビクトールの皿を見ながらカミューが言葉を吐く。
「しかし・・・朝から良くそれだけ食べられますね。尤も昨夜あれだけやれば、お腹もさぞかし空くでしょうけど。」
ガチャンとフリックの手からフォークが落ちた。・・・昨夜?やる?
「カミュー!」
「マイク、君は運が良かった。なにしろ右側のベッドを選んだのだから。」
口が過ぎると嗜める様にマイクロトフがカミューの名を呼んだ。しかし、カミューは見た目以上に機嫌が悪いらしく更に言い募った。

―――右側のベッド?フリックの頭の中で少しづつパズルが埋まっていく。そこへ後ろからけたたましい笑い声が聞えてきて、その場にいた全員がそちらを伺った。昨日すれ違ったカップルがやっぱりいちゃついてバイキングを選んでいる。

「あーーー!!」

ガタンっと椅子を押し倒してフリックは立ち上がった。今度はフリックが注目の的だ。視線を感じて慌ててフリックは椅子を起こして座り直した。しかし頭の中は今グルグルと回っていた。確かカミュー達の部屋は右側だった・・・そしてあのカップルは左側。自分のベッドは左側だったから、聞えていたあの行為の音はカップルのものだった?そしてビクトールと自分が事を致したのは、右のベッドという事になる―――!!まさか、まさか・・・?!
恐る恐る顔をみるフリックに、カミューは悪魔の微笑を送った。

「ええ、全部、聞えていましたよ。」
フリックは気絶しそうな程、目の前が真っ暗になるのを感じながら、逃げようとするビクトールの腕を掴んだ。フリックの体から静電気の様な光が所々で弾けている。

「お前・・・騙したな。」
「何言ってやがる!俺は隣とは言ったが、こいつ等とは一言も言ってねぇっ!」
「じゃあ、こうなる事は解ってたって事だな?」
「あ〜〜いやぁ、どうだったカナ〜〜?」
誤魔化そうとするビクトールを掴むフリックの手に雷鳴の紋章が浮かび上がった。


その日、晴れ渡った日であるにもかかわらず、ラダトの街に雷鳴が轟いたという。
勿論、被害はたった一人に及んだだけで済んでいたのは、言うまでもない。

                           終わる。   2001.04.05



いや、またまたフリックとぼけてますが・・・何かうちのフリックはビクトールに怒鳴ってばっかりだなぁと思い、フォローのつもりで書いてみたのですが、やっぱり怒ってますね・・・まあこれも一つの愛情表現とゆー事で。
タイトルは、ビクトールにとってはどっち?って事で。

ところであの二人は一体明け方まで何回事を致したのやら・・・



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