「無駄な癒しもたまにはOK」 やたら雨の多い夏だった。暑さには砂漠以来多少抗体ができてしまったらしく、アレルギーなんじゃないかと思うくらい寝込んでしまう日がある。 今年は涼しくてよかったと思っていたのだが、おかげで作物が不作らしい。人件費、設備費の次にかかるのが食料費だ。このままでは跳ね上がって赤字だ。 毎日書類に数字とにらめっこしていたら、熊のやつに「今日は休みだ」と拉致られた。 「てめえ今の砦の現状と今年の冷夏をほんとに把握してるのか…」 地を這うような声を出しても「机上の空論だろうが」と取りあいもしない。空論になるならどれだけいいか。最悪を先に考えておかないと後から困るのはお前だろうに。 「ほら、見ろよ」 丘を登ったらいきなり視界に黄色が飛び込んできた。 「…これは、花…か?」 「なんだ。知らないのか?ひまわり。綺麗だろう」 その「ひまわり」というらしい花は丘の上にそろって同じ高さで咲いている。 こんなに背の高くなる、しかも大きな花は始めて見た。ほけっと花に見とれていると 「ほら」といって、頭に花を飾られてしまった。
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