砂漠よりの追い風



「終わったら、重いんだからさっさと退けって、いつも言ってるだろ。」
「あ〜はいはい・・・」
情事の後、脱力して圧し掛かるビクトールを、フリックが手で押し退けながらうんざりとした調子で告げる。ビクトールは言われるままに体を起こすと、そのままごろりと仰向けに転がった。その横でフリックはダルそうに起き上がると、ちらばった服を手早く拾い上げシャワー室へと向かう。
事が終わればフリックは即座に体を清めに行き、その後は別々のベッドで眠る。
いつも、そんな風だった。





ビクトールと、寝るようになったのは2度目に砂漠を越えた時だった。
実を言うと、初めて砂漠を越えた時の事はあまり記憶に無い。体調が万全でなかった自分にとってはそれ程過酷だったのだ。しかし2度目ともなると少しは要領を得ていた分もあって、初めての時とは違って多少余裕を持って往く事が出来ていたと思う。それでも普通の路を行くよりかは何倍もきつかったのだが。
日中は40度を越すくらい暑くなるくせに、夜中になると零下まで冷え込む。マントや毛布に包まっても、凍てつく様な寒さに辟易とした。
体が冷たいと心まで凍りそうで。
そんな時だ。ビクトールに抱き締められたのは。
温かかった。その、温かさに自分は無我夢中で縋ったのだ。
ビクトールと抱き合っている間だけは、寒さを忘れた。
空気さえ凍て付く様な砂漠の夜も、亡くした女の事も。
砂漠ではそうするのが当たり前の様に思って、幾つもの夜をビクトールの熱に浸って過ごした。



砂漠を越えて、この街に着いた時。
もうビクトールとは寝る事は無いんだろう、とフリックは思っていた。
ここには暖かい寝床もあるし、あんなに寒くなる事もない。抱き合う相手が欲しいのなら、以前は良くそうしていた様にそれを生業としている女の人を求めればいいのだから。
けれど、ビクトールはそうしなかった。
宿屋で取ったこの二人部屋で、夜になるとフリックを抱き締めてきた。
その疑問を口にしたフリックにビクトールはこう答えた。
『お前がいるのに、そんな事しねぇよ。』
この返事をフリックはいい意味に捉えはしなかった。
つまり、目の前にただで出来る相手がいるのに、わざわざ金を出してまで買いに行く様な真似はしない。と。
そしてそれを納得もした。
この先何があるか解らない旅で、無駄に金を使われるよりはその方がいいのかもしれない。それに、自分もビクトールと夜を過ごすのが当たり前になっていたので、独りこの部屋に取り残されるよりかはその方がずっといいのだと。



そうしてこの先の旅費を稼ぐ為、この街に留まってもう数週間が経っていた。
夜になるとビクトールはフリックを求めてくる。しかし砂漠での夜の様に、その後一緒に眠るという事はしなくなった。せっかくの宿屋で暖かく柔らかい寝具があるのに勿体無い、というのがフリックの持論である。それにビクトールは不満そうな顔をしていたが、無理強いする事はなかった。
それ以来、事後は素っ気無く別々に眠る様になったのだ。






「遅い・・・ったく、何やってんだ、あいつ・・・」
フリックは3杯目のグラスを空けて、独り愚痴っていた。
今日は別々の仕事が入っていたので、この酒場で落ち合う約束をしている。しかし一向にビクトールはやって来ないのだ。
「また何か変な事に、首突っ込んでんじゃないだろうな・・・」
ビクトールは、何かと厄介事に首を突っ込みたがる傾向がある。そして何故かそのとばっちりを受けるのはいつも自分なのだ。頼むから何事もなく早く帰って来てくれと、4杯目をグラスに注いだところで、唐突に声が掛かった。
「なぁ、あんたちょっとこっち来て、一緒に飲まないか?」
勿論、ビクトールではない。まったくの見ず知らずの男である。
フリックはウンザリした様な顔でその男の顔を眺めた。自分には、首を突っ込まなくとも向こうから厄介事が来てくれる。まったくビクトールと代わってやりたいものだと溜息が出そうになった。
「悪いが人を待ってるんだ。」
面倒臭そうに手を払って追い返そうとしたが、その男はしつこく食い下がってきた。
「じゃあ、その人が来るまででもいいからさぁ。こっちおいでよ。」
フリックの腕を掴んで、強引に連れて行こうと男は歩き出そうとした。
こうして男に声を掛けられるのも、もう大分慣れた。昔からどうしてか自分はよく老若男女を問わず誘いを受ける。
しかし慣れたからといって、嬉しくはない。
さて、どうしてやろうかと男の背中を見ながら考えていると。
「汚ねぇ手で、そいつに触るんじゃねぇよ。」
掴まれた腕が軽くなったと思うと同時に前方で鈍い音がした。聞きなれた声も聞えた。さっきまで目の前にいた男が床に転がって呻いている。
あまりに突然の事だったので、呆然とそれを見ていたら、今度はもっと強い力で腕を掴まれて引っ張られた。
「おい、出るぞ。」
声を掛けられてそちらを見ると、ビクトールの背中が見えた。
さっきのも当然ビクトールがした事なんだろう。
「えっ?!酒、飲むんじゃないのか?」
「そんなの、何処でだって飲めるだろ。」
ぐいぐい腕を引かれて、フリックはこけそうになりながらビクトールの後に続いて店を出た。往来に出てもビクトールはフリックの腕を掴んだままだ。

「お前な、もうちっと気ぃ付けろな。」
「はぁ?!何に気を付けろって?」
「だから、スキを見せんなって言ってんだよ。」
「俺が何時、スキなんか見せたって言うんだ?!」
背中越しに聞えてくるビクトールの声は、何故か怒っている様に聞えてフリックは理不尽に思った。何故、自分が声を掛けられてビクトールに怒られなければならないのか。
ここで、ふと。
フリックは以前にもこんな事があった気がした。
しかし何か違和感がある。
「だからっ!・・・心配、掛けさせんなって、言ってんだろうがっ・・・!!」
「心配・・・?・・・あ、そうか・・・」
思い出した。
そう、以前にもこんな事があったのだ。
違和感があると思ったのは、ビクトールの立場が、嘗ての自分だったからで。



オデッサがまだ生きていた時の事。
彼女は頻繁に酒場に入り浸っていた。情報を仕入れるのと、解放軍の同士を見付けるのには都合がいいのだと言って。そんな彼女が心配で、自分はよく付いて回ったものだった。
しかしある時、丁度用事が入ってしまい一緒に行けなかった日があった。
後から酒場を覗いて見れば案の定。たちの悪そうな酔客に絡まれている真っ最中だった。
『汚い手で、彼女に触るなっ!』
そう言って自分は彼女の腕を掴んでいた男を殴り飛ばして、そのまま酒場を出た。
そして。
『頼むから、心配させる様な真似はしないでくれ!』
オデッサにそう言ったのを憶えている。
その時、オデッサは笑っただけで、応えてはくれなかったけれど。



そうだ。確かに記憶にある。
あの時と同じだとフリックは一人頷いた。
しかし、思い出しはしたものの。
どうしてビクトールがあの時の自分と同じ様な言動しているのだろう?
昔自分が、愛した女にそうした様に・・・
「なぁ、もしかしてお前、俺の事、好きなのか・・・?」
本気で訊いた訳ではなく。
ただ思いついた事が口に出た、そんな感じだったのだが。
「・・・って!」
前を歩いていたビクトールが急に立ち止まったので、その背中にフリックは勢い良くぶつかってしまった。
「おい、急に立ち止まるなよっ・・・!」
空いた片方の手で鼻を擦りながらフリックが文句を言うと、振り返ったビクトールとかちりと目が合った。けれど、ビクトールはまたすぐに前に向き直って歩き出す。肩越しだったのと暗かった事もあって、その表情は読み取れなかった。
そうして、暫くして。
「俺は、誰かさんと違って、好きでもねぇ男となんか寝たりする趣味は持ってねぇよ。」
「なっ、何だよっ!それじゃあまるで、俺にそんな趣味があるみたいじゃないかよっっ?!」
「じゃあお前・・・俺の事、好きだってのか?」
「えっ・・・?!」
一瞬、フリックの頭の中が真っ白になる。
ついビクトールの台詞にカッとなって言い返したが。ビクトールに切り返されたのに「違う」とも「そうだ」とも返答出来なくて、フリックは固まってしまった。
ビクトールの事を好きかどうかなんて、今迄考えた事などなかった。
気が付けば、当たり前の様に側に居て、当たり前の様に肌を合わせて。
深く考えた事はなかったけれど、それらはもしかすると当たり前などではなく、特別な事なのかもしれない。
そこまで考えて、フリックは話の大元に思い当った。
「なぁ、お前本当に俺の事、その・・・好き、だってのか?」
「だったら、どうだってんだ?」
相変わらずビクトールは振り向かないまま、どんどん前に進んで行く。
「いや・・・だってお前、そんな素振り全然見せなかったじゃないか。」
「お前が気付かなかっただけだろ。」
「だ、だったら、言ってくれればいいだろ?!」
「・・・そんなの俺の勝手じゃねぇか。」
「う・・・まぁ、そうだけど・・・」
それ以上言葉が出て来なくて、またフリックは何も言え無くなってしまった。
ビクトールもこちらが何か言わなければ黙ったままだ。
心なしか握られた腕がきつくなった気はするが。
前を行く、もう見慣れてしまった大きな背中を見詰めながら、フリックはぼんやりとまるで人事の様に考えていた。


ビクトールが自分の事を好きだというのならば。一体いつからだったのだろう?
ビクトールの自分に対する態度は、ずっと昔から変わらない様な気がする。
けれど、言われた通りに自分が気付かなかっただけで、もうずっと前からそうだったのかもしれない。
あの砂漠で。
はじめて触れ合った時ですら、もしかすると。


フリックはビクトールに手を引かれて歩いているのが、途端に恥ずかしくなってきた。
急に現実味を帯びはじめた事実は、フリックの頭に血を昇らせた。
顔が異常に熱い。心臓もばくばくいって、息苦しい。
ビクトールが一度も振り返らない事が救いと言えば救いかもしれなかった。
掴まれた腕も熱い。
ビクトールの手を振り払おうかと思い立ったが、その頃には宿屋の看板が目に映っていたので、仕方なくそのままで玄関を潜る事としたのだった。





「もしかして、このままヤろうって言うんじゃ、ないだろうな・・・」
宿の部屋に着くなり、ベッドに押し倒されたフリックが、ビクトールの下から声を上げた。
「嫌か?」
「嫌とか、そーゆー・・・」
『問題じゃなくて、晩飯とか風呂とかまだだろう』と言いたかったフリックの口は、ビクトールによって塞がれてしまった。
そしてフリックと自分の防具やら靴やら上服やらを、次々と剥ぎ取っていく。
軽く何度か触れてから、深く合わされる唇。
髪を梳いてから首筋を辿って、背中に降りて行く手の動き。
いつもと同じである筈なのに、それらは酷くフリックをうろたえさせた。
今迄数え切れないくらい、抱き合った。
けれど今迄は感じた事のなかった甘い疼きが、ビクトールの触れる所から沸き上がっては体を震わせる。

ずっと。
ビクトールにとってこの行為は生理的な欲求を満たす為だけのものなのだと、思っていた。
けれど。
この掌や、唇は、何かしらの意味を持って、自分に触れられていたのではないのかと。

そう意識してしまったら、とても平静ではいられなくて。
首筋を這うビクトールの舌が熱い。
ぞくりと腰に響く感覚を、フリックは堪えようとシーツをきつく握り締めた。
「あっ・・・や・・・何か、調子・・・狂う・・・」
「ああ?俺はいつもと変わんねぇぜ・・・?」
耳元に低く囁かれるだけでもぞくぞくとして、フリックはその身を捩った。

ビクトールの言う様に、彼はいつもの通りなのだろう。
いつも、ビクトールの掌は優しい。
有無を言わさない強引さがあるにも係らず、とても温かくて、優しいと。
そう思わせられた。
だからなのか。
ビクトールに抱かれるのを嫌だと思った事は、未だ嘗て一度もなかった。
それどころか。この掌を心地良いとさえ。

手の動きを追って、首筋から背中に移ったビクトールの舌が、腰の辺りまで降りて行く。その合間に、後ろから回された腕がフリックの胸を弄る。指が赤い尖りを捕らえると、フリックの肩がびくりと大きく跳ね上がった。
「ふっ・・・っ!」
思わず声が洩れてしまい、慌ててフリックは手で口を塞いだ。その手を、ビクトールが強く引いて阻止をする。小さな突起をビクトールの太い指が、軽く摘み捩り出すと、その度にフリックの腰が浮き上がった。
「やっ、あっ・・・あっ・・・」
「ここも、漸く感じるように、なって来たか?」
くっくと喉の奥で笑いながら、ビクトールが背筋を舌で舐め上げる。
「ち、違っ・・・っ」
慌てて否定するフリックだったが、また強く擦られて言葉が続かなかった。与えられる刺激に自然と息が荒くなって、途切れ途切れに声が洩れてしまう。下半身に血が集まって、見なくてもどういう状況になっているかが解った。
いつもなら抑えきれる声も、今日に限っては押し留める事が出来ない。触れられる所全てが、痛いくらい熱くて、眩暈に襲われそうになる。フリックはどうしていいか解らなくて、頭の中がぐるぐるするばかりだ。
「嫌だ・・・や、やっぱり・・・今日はしたく、ない・・・」
初めての時ですら、こんなに取り乱す事はなかった。
なのに今はまるで自分の体が自分の物ではないかの様で。
そんな自分を、ビクトールが見ているのだと思うと、フリックはとてもいたたまれない気持ちになった。
「何だ?どうかしたか・・・?」
「俺・・・今日、何か凄く変なんだ・・・だからっ・・・」
フリックの様子を、ビクトールは手を止め伺っていた。しかし、返された言葉を全部聞き終わる前に、うつ伏せになっていたフリックの体を向き直させると、唇を合わせてきた。
「ちっとも、変なんかじゃねぇよ・・・すげぇ、可愛い。」
「・・・かっ?!可愛いっ?!」
思いもよらない台詞に、フリックが目を丸くして小さく叫んだ。しかもよりによって、大の男に可愛いなどと。
しかしビクトールは、そんなフリックを他所に言葉を続けた。
「な、もっと、感じてるところ見せてくれや・・・」
「ばっ!・・・馬鹿も、休み休み・・・っ・・・」
更にトンデモナイ事を言われたフリックが、真赤になって抗議し終わる前に。
ビクトールの手が下肢に伸びて、フリックの雄を掴んだ。フリックがひゅっと息を呑む。既に勃っていたそこをゆっくりと擦られて、じんわりとフリックに快感が襲い始める。眉を寄せてそれに耐えるフリックの顔をうっとりと見詰めながら、ビクトールがひっそりと笑った。
「イイ顔、してんじゃねぇか。」
「・・・このっ、死ねっ・・・馬鹿・・・阿呆っ・・・」
悪態を吐くフリックの胸が上下する。次第に早くなるビクトールの手の動きにつられて、フリックの腰も微かに揺れる。
そうなり始めると、もうフリックも無理に逆らおうとせず、慣れきった快感に身を預けた。



「フリック、もう挿れるぞ・・・」
「あ・・・はぁあっ・・・っ!」
自身を押し付けビクトールはフリックの肩を掴んで力を入れた。先に指で充分に解してあったそこに、ゆっくりとビクトールが飲み込まれていく。
「う、あ、あ、あ・・・」
一度に全部収め切ってしまわないで、少しずつ小刻みに出し入れを繰り返すのに、フリックの声が重なる。少しずつ、しかし確実に自分に押し入ってくる熱に、フリックの意識もそれに伴う様に切り取られて行く。
「ほら、全部入ったぜ。」
「う、んっ・・・あっ・・・ああっ・・・」
そう言ったビクトールの腰の動きが激しくなった。揺さ振られるフリックは、迫り来る快感を受け止めるだけで精一杯で。内壁を擦り、奥のイイ所を突かれる度に、高く甘やかな声を発していた。抜き差しされるそこは、溶けたのではないかと思われる程、柔らかくビクトールを迎え入れる。
「フリック・・・フリック・・・」
まるでうわ言の様に自分の名を繰り返すビクトールの背に腕を回せば、荒々しく口付けをされた。腰を突き上げながら、舌を押し付け口中を蹂躙する。
貪る様な、奪う様な、そんな余裕の無い口付け。それに応えるフリックの腕にも力が篭って、ビクトールの背に赤い痕をつけた。


息もつけない嵐の様な激しさのなかで。
フリックは満たされている自分に気付く。
ビクトールに対して、愛おしい気持ちが溢れて来る事にも。
何故かふと。
こんな時であるのに泣きたい気持ちになって、フリックはビクトールを抱き締めるその手を強めた。


「あ・・・ビクトールっ・・・もう、イきそ・・・」
「・・・俺もだ、フリックっ・・・っ!」
限界を超えたフリック自身が弾けて、二人の腹や胸に白い模様を描いた。
その瞬間のフリックの恍惚として感じ入った表情に、ビクトールもまた腰を震わせる。2、3度中に擦りつけて欲望を解き放った。



荒い息が収まって、ビクトールはいつもの様にフリックの上から退いて横に転がった。
けれど。フリックはいつもの様にそこから離れては行かなかった。
理由なんてない。いつもそうしたいからと自分のベッドに戻っていたのと同じ様に、今はビクトールの側でいたいと思うから、そうしているのだ。
ビクトールが、汚れてしまった後始末をしてくれるのにも、黙ってされるが侭でいた。
そして、それが終わると肩を抱いてくるビクトールの腕にも、大人しく包まれる事にした。
ビクトールがそれに嬉しそうに目を細めるのが目に入って、少しどきりとしたが、そのまま胸に顔を埋めて眠る事にする。

温かい。

砂漠の夜を思い出して、けれどあの時とは何かが違うと思う。
何が、なのかは良く解らなかったけれど。
もっと早くにこうして一緒に眠ればよかった、と。
自分から離れていたくせにゲンキンな事を思い浮かべながら、フリックは眠りへと落ちて行った。






「飯でも食いに行くか・・・」
「ああ、そうだな。」
昨夜酒場から飲まず食わずで帰って来たビクトールは、相当に腹が減っているらしい。
起きてすぐの一言目がそれだった。それに笑ってフリックが答える。

翌日。同じベッドで目覚めた二人は、それでもいつも通りだった。
多少、フリックは気恥ずかしい思いをしてはいたけれど。
二人して手早く身支度を整えると、足早に宿を出た。
早く早くと先を急ぐビクトールの後をフリックが追う。

ビクトールは何も言わなかった。
フリックがビクトールの事をどう想っているのかも、訊きはしなかった。
まるで、そんな事はどうでもいい風にも取れた。
しかし、それがフリックには嬉しかった。
今迄がそうであった様に。
フリックがビクトールの事をどう想っていようとも、それとは関係無く自分の意思で側に居てくれるのだと。
正直言って、ビクトールが自分の事を好きな様に、自分も彼の事を好きなのかどうかは、まだ解らない。
けれど。
それでも側に居てくれるのだと思って、それがフリックにはとても嬉しかったのだ。


何時の間にか。
側に居て、肌を合わせるのが、当たり前になっていた。
きっと、これからもそんな風に日々を送るのだろう。
いや、そんな風に送りたい、と。
そしてビクトールの想いにも、少しずつ応えていけたらいいのに。


そう思ってフリックは、先を歩くビクトールの隣に並んだのだった。


                             2001.10.29 終劇。



 え〜と、えぇ〜と(汗)何だか、リクエストの主旨を微妙に穿き違えている気がして、ならないのですが…?もしかして熊視点で書くべきだったのでは…?!とか後から思ってみたり〜
でもそうしても、結局話的には変わらない内容になる様な気が…

 はじめ何とも思ってない時はそうでもないのに、意識した途端駄目になるって事ありますよね?特に恋愛関連。
とゆー事で、熊の気持ちに気付いたフリが、おたおたするお話でした。

 ラッシー様、長らくお待たせしてしまいましたが〜しかもリク通りとは言え無い代物になってしまいましたが〜すみませんが、これでご勘弁して下さいませ〜(T-T)
も、申し訳ないです。がくり。



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