morning. 「おはようございますー!」 「おう、ほら、ヤマト来ちまったぞ!」 「…う、ん…」 フリック、熊にバンダナを締めて貰いながら服を着替える。 「ん…」 フリック、手を出す。 熊、上着を渡してやる。 「悪ぃな…昨夜は過しちまって…」 「ん…いや、その…ひ、久々だった…し…っ?!!」 目前でいちゃつき出した腐れ縁を見てヤマトが吐いた溜息に、フリックの目が醒める。 「…!!!」 赤い顔になったフリックが雷を呼んだが、予想していたヤマトは何とか直撃を避ける。 一番近くにいた熊は、逃げ遅れて黒焦げになった。 いつもの朝のはじまりである。 working start. 「おくすりは持ったか?」 「おう。」 「毒消しは?」 「こないだ買った。」 「針も買ったのか?」 「ああ、針は忘れねぇぜ!なんせお前ときたらす〜ぐ飛ばされそうになるんだもんよ…!」 「う、煩い!!!」 出発前に荷物の点検に余念のない腐れ縁。 「あはは!まるで新婚家庭の朝の風景みたいだ〜!」 「?!!…へ、ヘンな事言うな!!!!!!」 フリック怒鳴りながら否定する。 が、後ろで熊はにやけていた。 これもよくある風景である。 lunch. 「そういえば、アレどうした?」 「ん?アレか…あのままでいいだろ?それよりあっちはどうしたんだよ?」 「ああ、それならもうとっくに済ましたぜ。」 「そうか、ならいいけど…こないだのみたいなのは御免だからな!」 「こないだのは参ったよなー…でもよ、アレよりはマシだろ?」 「まあな、アレよりはな。」 「それはそうと、お前こそあの件は大丈夫なんだろうな?」 「ああ?!お前と一緒にすんなよ!準備万端ってやつだ!」 「ほんとかよ?そう言ってこないだの事もあるからなー…」 「こっ、こないだのは俺が悪いんじゃねーよ!!」 「そぉかぁ?そう言ってあん時だってよ…」 「あの時は確かに俺が悪かったよ!!!」 「まあ、解ってりゃいいけどなー」 「煩え!そっちこそこないだアレやってたじゃねーかよ?!」 「あ、あれはだなあ…!!」 結構な量のランチセット(大盛り)を平らげながら、言い争う腐れ縁。 「…?????」 その隣でさっぱり意味の解らない会話にヤマトが首を捻る。 一種のテレパシーでも通じているに違いない。 tea time. 「あ…この匂い…」 「おう、シナモンだな…」 出先の街の露店で売っていたチュロスを買って、木陰に身を寄せる。 「オデッサが好きで良く何にでも掛けたてたよな…」 一口齧って、フリックが俯く。 その、肩に熊が腕を回す。 「でも俺はお前の匂いの方が好きだけどなー!!」 「な、なんだよ?!俺の匂いって…?!!!」 フリック、顔を上げて慌てて熊を引き剥がす。 ヤマトは気付く。 フリックが、少し泣きそうな顔をしていた事を。 こんな時のフリックの扱いは、きっと誰よりも熊が上手いのだろう。 dinner. 「きゃっ、やめて下さい…っ!!」 地元料理を堪能していたレストランに女性の悲鳴が響く。 その一角に給仕の女性の腕を掴んだ酔っ払いが見える。 「は、離して下さい…!」 「いいじゃねぇかよ…なあ、ねーちゃんよぉ?!」 その方向を見ながら熊が掌を出す。 フリック、手にしたフォークを手渡して目を閉じる。 熊、立ち上がってフォークを酔っ払い目掛けて投げる。 「ぐあっ?!!」 見事、腕に命中して刺さった。 その、フォークに。 どこからともなく雷がひとつ。 どごん! 後には消し炭となった酔っ払いが残っている。 「ありがとうございます…!!」 看板娘だった給仕のおねえさんが駆け寄る。 感謝というご厚意によりその日の夕食はただになった。 旅をしている間は、よくあったと腐れ縁が笑う。 それで餓死を免れた、という真実は語られなかったが。 at bar. 「おや、もう帰られたのですか?」 「あ、カミューさん!いいとろこに来た〜!!」 赤騎士、リーダーと腐れ縁に労いの言葉を掛け、同じテーブルに着く。 「いいところとは?」 赤騎士、ワインを頼んでにこやかに笑う。 「もうね!今日は一日、この二人に目の前でいちゃつかれて参ってたんですよー!」 「はあ?!いつ、そんな事したってんだ?!!」 「だよなあ…?別にいつも通りだったけどなあ…」 リーダーの言葉にフリック憤慨し、熊は不思議そうな顔をする。 「…む?」 熊、から揚げを食べて少し眉を顰める。 「ほら。」 「ああ、すまねえな。」 フリック、塩を熊に手渡す。 熊、塩をから揚げにかけて満足そうな顔になってビールを飲み干した。 「あ…おい。」 フリック、ふと目を上げて熊を見る。 熊、にっこり笑う。 「おう、ねーちゃん!これお代わりなー!それとこっちもな。あとこのチーズと魚のフライとウーロン茶もな!」 熊の注文を隣で聞いて、フリックほっとしたように微笑む。 「…ね?」 「ああ、これは確かに…目も当てられないいちゃつきっぷりですね…」 それにうんざりした様な顔をするリーダー。 肯く赤騎士。 「なっ、何がだよ?!!」 フリック、心外だとばかりに叫ぶ。 「…まず、フリック、どうしてビクトールに塩を?」 「え…?いや、さっき食べた時、あいつにはちょっと薄味かなと思って…食べたら物足りない顔してたからやっぱりと思って…」 それがどうした、とフリック不審な顔をする。 「では、ビクトール。フリックの『おい』だけでどうしてあの注文を?」 「あ?だってよ、ヤマトのグラスが空いてるのをこいつがちらちら見てたし…それにカミューのワインにはこのチーズが良く合うって言ってたのもフリックだしよ…で、そのフリックのグラスも空で、当然お代わりだろ?だったらこいつはアテに魚のフライってのが定番で…」 「…あのですね…」 リーダーの言葉の続きを赤騎士が引き継ぐ。 「あの短い単語でそれだけ解り合えるなんてのは、それこそ熟年夫婦の域ですよ…」 「?!!!!」 「……」 フリック、驚愕の表情に一瞬なる。 熊、思い切り脂下がる。 「ば、バカ言え!!そんな訳あるか…っ!!!!!!」 慌てて否定するフリック。 その後ろから間の抜けた熊の声。 「いやあ〜!まだまだ新婚のつもりだったんだけどなあ〜!!」 「?!」 フリックの顔色が一変する。 がたがたとリーダーと赤騎士が速やかに避難した。 どっっっごーーーーんっっっ!!!!!!!!!! 夕食時、酔っ払いの暴漢に落とされたものの少なくとも100倍の雷が落ちた。 焦げているのが熊だけだったのは、流石『青雷のフリック』というべきだろうか。 bedtime. 「お前…さっきまで黒コゲだったのに元気だな…」 熊、フリックに圧し掛かる。 「はっはっは!元気な方がお前だって嬉しいだろ?!」 「な、なんの話だ?!!」 「何ってアレ…ぐおっ…?!!!!!」 熊の鳩尾に綺麗にフリックの拳が埋まる。 蹲る熊。 「あ〜〜〜くそっ…っ、容赦ねぇよなあ、ほんとお前…」 「それを解っててやってんだろ?お前は。」 殴られる瞬間、熊が腹に思い切り力を入れていた事をフリックは知っている。 「そんな岩みたいな腹殴るこっちの身にもなってみやがれ…!」 「じゃあ、殴らなきゃいいだろ?」 「うるさい…」 「まーそーゆートコも好きなんだけどなー」 「……」 大人しくなったフリックに、再度熊が覆い被さる。 これで、いつもの日常に幕を閉じた。 |
「日常で阿吽の呼吸を発揮する」腐れ縁…あんまり思いつかなかったのです…(言い訳) いや、戦闘時だったら凄く浮かぶんですけど! なんか『阿吽の呼吸』というより、『熟年夫婦ぶり』を発揮させていまっておりますな(大汗) さぞかし周りの人は辟易しているだろーなー… minazukiさん、リク通りとは言えませんが…ほんとすみません… 宜しければお納め下さいませ。 この度はキリ番のご申告誠に有難う御座いました! また、これに懲りずに宜しくお付き合い下さいますと嬉しいです〜! |
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