おかしな噂が広まっていた。 『フリック副隊長とレオナさんがデキテルらしい。』 何やら親密に話し込んでいた、とか。 夜中に二人きりで逢っていた、とか。 始めそれを聞いた時は、そんな事あるか、と一笑した。 しかし、噂は消えるどころか、広まって行く一方で・・・ これではいかん、と名目を立てて俺は真相解明に乗り出す事にした。 ホントは自分が一番噂の真相を知りたがっていたのだが。 「お前、レオナと噂になってるって、知ってっか?」 「はあ?!」 執務室と呼ばれる部屋で二人きりになった時、俺はフリックに単刀直入に尋ねた。 「噂って、何の噂だ?」 「女と噂って言やぁ、色恋沙汰しかねぇだろうが。」 相変わらず呆けた奴だ。そんな事くらい子供でも解ると思うんだがな・・・ 「色恋って・・・何だよ、それ。そんな事ある訳無いだろう?」 一時きょとんとしたが、直後可笑しそうに笑って否定する。 可愛いじゃねぇか・・・いやいや、そーじゃねぇ。 「そうかぁ?何でも夜中に二人で密会決め込んでるらしいじゃねぇかよ。」 「?!」 自分でも馬鹿げた噂だと思っていた。 だから鎌を掛けても大した反応なんか返ってこないと思っていた。 ところが。 一瞬、明らかに動揺した。 悟られない様に懸命にポーカーフェィスを保っているようだが、この俺の目は誤魔化せない。 「逢ってんのか?!夜中に!」 「まさか、噂だろ?・・・間違ってもレオナとはそんな関係じゃ無い。」 「・・・・・・」 そんな関係・・・ではなさそうだ。 其処だけは嘘じゃ無いらしい。 しかし、夜中に逢ってるってのは間違いない様だ。 ずっと穴が開いてもオカシクないくらいに見詰めて来たんだ。 そのくらいは、解る。 「信じてくれないのか・・・?」 少し困った様に、上目使いで俺を見るフリック。 めちゃくちゃ可愛いじゃねぇか!・・・いやいや、そーじゃねぇって。 「いんや。お前が俺にそんな嘘ついたトコロで、何の得もありゃしねぇしな。」 取り敢えず、やましい事は無い様でほっとした。 だが、何か隠してるのは確かだ。 俺の返答に、密かに安堵の溜息を吐いたフリック。 しっかり、バレてんだがな。 しかしまいったな。 隠してるらしいフリックが簡単に吐くとも思えんし・・・ かと言って、レオナの方こそ口が堅そうだ。 どうしたもんか・・・ 「それよりビクトール。お前、ポールと買い物に出掛けるんじゃなかったのか?」 「あっ、やべっ!すっかり忘れちまってたぜ・・・」 フリックとレオナの噂に気を取られてウッカリしていた。 小せぇくせに口煩いんだよな、あのガキ・・・ 「ぼさっとしてないで、さっさと行け!お前が良くても、ポールが困るだろ?!」 口煩いのはここにも居た・・・ しかも口だけじゃなくて、足まで出る。 言いながら、げしげしと足蹴にして部屋から追い出されてしまった。 「もうちっと、優しくしてもバチは当らんと思うんだがなぁ。」 俺はお前には、無茶苦茶優しいつもりなんだが・・・ 蹴られ捲くった尻を撫でながら、一言洩らす。 そして俺はポールを探す為、階下へと急いだのだった。 もうすっかり夜といわれる時刻。 砦に帰って来た頃にはとっくに日が暮れていた。 それから風呂に入り、遅めの夕食を摂りに酒場も兼ねる食堂に足を運んだ。 既にそこは酒場と化しており、所々で陽気な声が大きく上がっていた。 入って直ぐ、いつもの指定席であるカウンターに目を向ける。 そこにはやはり指定席に座ったフリックと、カウンター越に話し込んでるレオナの姿があった。 まずレオナが俺に気付き、フリックに知らせる。 フリックは振り返って俺の姿がもう間近にあるのを見ると、気不味い表情を一瞬浮かべた。 何か聞かれたく無い話をしていたのだろうか? 噂を信じている訳では無かったが、少し胸の奥がちりりと痛んだ。 「何だ何だ、何の内緒話やってんだ?」 「内緒話なんかしてないぞ!」 手をぶんぶん振ってフリックがあから様に慌てている。 ・・・フリック、それじゃあ『してました』と言ってる様なもんだぞ・・・ そう思ったが口にはせず、隣の席に座る。 それと同時にレオナが何時ものヤツを出してくれた。 「夕飯、まだなんだろ?今食べるかい?」 「ああ、頼む。」 先に出されたビールを飲み終わる前に、目の前に手早く食事の支度が整っていった。 それを片付けながら、隣のフリックと当り障りのない会話をする。 しかし、頭の中は違う事が一杯で。 何を話していたのか。 何故、俺に隠すのか。 レオナには話せて、俺には話せない事ってなんだ? 「・・・でさ、だから・・・」 フリックが笑っている。 昔は不機嫌な顔しか見せてくれなかった。 けれど、今はこうして無防備な程の笑顔を見せてくれる様になった。 それが、どんなに俺を喜ばせる事か。 可愛い。愛しい。 けれど、こいつにとっての俺の存在は然程大きなものでは無いらしい。 何かあるのだろうに何も話してくれやしない。 ムシャクシャする気持ちを押える為、ヤケとばかりに次から次へとビールを流し込んだ。 「おい、ちょっとお前、ペース速すぎ・・・」 「うるせぇっ!好きに飲ませろ・・・!!」 心配そうに覗き込むフリックの手を振り払って、レオナに次を催促する。 しかしそうしても、湧き上がる不快感は拭えなかった。 肝心な時に、フリックは俺を頼ってはくれないのだ、と。 兎に角、俺は相当凹んでいたらしい。 自分で思っている以上に。 酔い潰れて眠ってしまうなど、そう滅多に無いんだがな・・・ 気が付くと、周りにいた連中は何時の間にか誰一人と居らず、灯りまで落とされている始末だ。 しかし、フリックは兎も角、レオナまでいないというのは一体どういう訳だ? カウンターの上はまだ空瓶やら皿やらが散らかったままで、レオナがそのままにして終う筈が無い。 寝惚けた頭でそんな事を考えていた俺の耳に、微かな物音が届いた。 それは、カウンターの奥にある酒樽等を仕舞ってある小さな倉庫からだった。 そっと近付くと、僅かに開いた隙間から、それが聞えて来た。 「ほら、もっと腰を使うんだよっ!」 「・・・そんな事言ったって・・・こんな狭い所じゃ・・・」 「まったく、下手だねぇ・・・」 「うるさいな・・・レオナ、そこ・・・もっと足上げてくれ。」 「ん?ああ、こうかい?」 「もっと・・・」 定期的に何かが擦れる音と、今の会話。 俺はドアノブを掴もうとしたままの格好で、固まってしまった。 まさか・・・ まさか!そんな馬鹿な?! あの噂は本当だったのか?! 嘘だ、嘘だろ?フリック・・・ 「ほら・・・今度はこうして・・・」 「えっ?!ちょっ・・・待っ・・・!」 「ほら、しっかりおし!!」 「・・・くっ・・・くそっ!・・・う・・・」 「だらし無いねぇ・・・それでも『青雷』と呼ばれた男かい?!」 「・・・いいからっ、早くっ・・・レオナ!」 「もうちょっとだよ。辛抱おし・・・」 「レオナっ!・・・もうっ・・・」 レオナに攻め立てられて、あられもなく乱れるフリックを思わず想像してしまったが・・・ それを俺以外の奴が、するのはどうしても許せねぇ! たとえフリックが俺の事を好きじゃ無くても。 我慢し切れなくて、力一杯扉を蹴り飛ばした。 「てめぇら!!俺に黙って何してやがるっっ!!!」 扉の留め金が外れ奥に吹っ飛んで、大きな音がする。 それと同時に思いっ切り、二人に向かって叫んでいた。 そこには驚きで目を見開いた二人の姿があった。 ―――が。 しかし、予想に反して二人は服を着ていたし、寄り添ってはいなかった。 それどころか、レオナは手にモップを。 フリックはかなり重そうな鉄の棚を抱えていた。 これは、まさしく――― 掃除をしていた所、だろう。 嫌な沈黙がその場を襲っていた。 「何って、掃除以外に、他に何をしていた様に見えるんだい?」 レオナが手にしたモップを掲げて見せ、意味深に笑って俺に言った。 フリックも棚を降ろし、怒った顔で睨み付けて来た。 「お前!あれ程物を壊すなと、言ってるだろーがっ!!」 しまった・・・どうやら、早まったらしい。 いや、しかし!さっきのアレを聞いて誰が掃除をしていると思うんだ?! どう考えたって、事の最中にしか聞えねぇじゃねぇか!! 察するに、あの何かが擦れる音はモップをかけていた音なんだろう。 先にモップをかけていたフリックに、あの重そうな棚を担がせてレオナが、モップかけを引き継いだってとこか。 紛らわしい会話しくさりやがって! ・・・でも何も無くて、本当によかった。 いや、今のこの状況は良くは無いのだが。 「い、いや・・・そ、それよりお前等こそ、何でこんな夜中に掃除なんか・・・」 ここは話を逸らすしかねぇな。 そう思って適当に言った言葉にフリックがギクリと反応した。 「大体レオナ、そんな事はコイツにさせなくても、他に適当な奴がいるだろ?」 「ああ・・・そうさね。」 「お、俺が手伝うって、言ったんだ!」 レオナは悪く無い、という風にフリックが間に入った。 それが、余計に勘に触ってつい、きつく言ってしまった。 「こんな夜中にか?俺を起こしもせず?」 いつものお前なら、俺を叩き起こして俺にやらせてるだろーが!とフリックに詰め寄った。 「お前、何か隠してるだろ?!何で隠す?俺に何で言わねぇっ!」 「・・・っ・・・」 フリックの腕を掴んで力任せに握り締める。 痛みに顔を顰めても、その力を緩め様という気になれなかった。 「原因はコイツだよ。」 険悪になりかけた俺の雰囲気を目敏く察したレオナが、一本の酒瓶を俺の目の前に差し出した。 受け取ってまじまじと見る。 「これ・・・は、確か俺が・・・」 レオナに預かっていてくれと渡していた物だ。 とても高価で手に入り難く、直ぐにそれだと解る。 「それは、あたしがあらゆるコネと人脈を使って、ようやっと手に入れたもんだよ。」 あんたから預かったものより、2年程若いけどね。 そう言われて見てみると、確かに年数が違う。 「え?!じゃあ、俺のは・・・?」 レオナがフリックの方を見る。 フリックが目を逸らして俯いた。 「そこの、フリックが、割っちまったよ。」 今、割った。と言ったか? あの酒は滅多に手に入らなくて、しかも目が飛び出るほど高価なんだぞ?! 「よ、酔ってたんだ!!だからっ・・・!」 「そ、そうか・・・酔ってたのか・・・そうか・・・ワザとってんなら兎も角、事故ならしょうがねぇ、よな・・・」 他の奴なら半殺しにしても飽き足らねぇが・・・他ならぬフリックのした事だ。 許してやろう。 そう思って涙目になりそうなのを堪えて、フリックに笑い掛けたのだが。 益々フリックはソッポを向いて、目を合わせようとしねぇ。 嫌な予感がする。 「まさか・・・」 続きはご丁寧にレオナが付け足してくれた。 「そのまさか、さ。酔ってワザと割ったんだよ。」 俺が!お前に!!一体何をした〜〜〜〜〜っっっ!!!!! やりたい事は腐る程あるが、そんな酷い仕打ちをされる様な事は、今迄死ぬ程堪えて我慢して来た筈だぞ?!こるぁぁあ!!!! 「悪かったと思ってる・・・だから、レオナに頼んで・・・」 その代わりに食堂の手伝いや掃除等の面倒事を無条件で引き受けるから、と約束をしたのも白状した。 申し訳無さそうに誤るフリック。 ホントに悪いと思ってんのか?! あんな事やこんな事をマジでさせるぞ、てめぇ! 心の中で叫びつつ、とある事に気付いた。 「―――待てよ、何で俺はそれを知らねぇんだ?」 飲むときはいつも一緒で、今日みたいに酔い潰れる事も殆どねぇ。 なのに、何で俺はそれに気付か無かったんだ? 「そりゃ、知らないだろうさ。あんたは居なかったんだから。」 「あぁん?そいつぁ何時の話だ?一体。」 「い、いいじゃないか!何時だって!!済んだ事じゃないかよ!」 あから様に怪しい。 これは是が非でも聞き出さなくては。 「いいから、レオナ!」 「あんたが3日で帰るって言って、ミューズに行って、10日ぐらい帰らなかった事があったろ?」 「おお、そういえばそんな事もあったな・・・」 確か、あん時は散々な目に合わされたんだよな。 暗殺されそうになったアナベルを助けて、しかもその殺し屋を捕まえる手伝いまでさせられて・・・ 「そん時、フリックは大分荒れててねぇ・・・」 「わーーーーーっ!もう、いい・・・っ?!」 大きな声を上げてレオナの続きを阻止しようとしたフリックを、後ろから抱きかかえて口を押えて黙らせる。 なかなかオイシイ体勢だ。 「いいから、続けろ。レオナ。」 「あんたが居なくて淋しかったんだろうねぇ・・・」 「〜〜〜〜〜〜!!」 首を振って暴れるフリックを羽交い絞めにして、かなり役得な気分だ。 「ついうっかり、あたしが余計な事を言っちまってね。その直後にここに入って、それを叩き割っちまったのさ。」 「余計な事ぉ?」 「ん〜〜〜!んん〜〜〜〜!!!」 益々暴れるフリック。一体レオナは何を言ったんだ? 「『ここに帰って来たくなくなる様な、イイ女でもいるのかねぇ?』って、つい、ね。」 「?!」 肩を竦めて・・・しかし瞳を意味ありげに笑わせて、レオナが告げた。 それは・・・つまり・・・ 硬直して力の緩んだ俺の腕から、フリックがするりと抜け出した。 「いいか!熊っ!!俺は、絶対、妬いてた訳じゃねーからな!!!」 だからフリック・・・それは『妬いてました』って言ってる様なもんだぞ? って、妬いてた、のか?フリック?! 何も言え無くなって、呆然と佇む俺にまだフリックは言い募った。 「お前が居なくて、俺は只でさえ忙しいのに、お前の分まで仕事しなきゃで、すげぇ大変だったんだ!!」 「そうか。そりゃあ悪かったな・・・淋しい思いさせちまってよ。」 「だからっ!仕事がって、言ってるだろ?!」 耳まで真赤になって、必死で言い訳するフリック。 死ぬ程可愛い。愛しい。俺のもんにしちまいてぇ。 そう言って抱き締めてキスしたら、一体どんな顔するんだろう?こいつは。 後ろ髪を恐ろしい力でぐいぐい引っ張る誘惑に、激しく抵抗しながら俺は一つの疑問を投げ掛けた。 「でも、どうしてこの酒なんだ?」 「それは、その・・・お前、それ買った時、すげぇ嬉しそうだったじゃないか。」 「ああ、そりゃあなぁ・・・」 幻の酒とも言われる酒だぞ? 酒飲みだったら、涙流して喜ぶだろうよ、普通は。 「アナベルと飲むつもりだったんだろ?それで、つい・・・」 アナベルと?何でだ? どうしてそうなるのかは解らなかったが、何故かフリックはそう思ったのだろう。 それで、妬いてこの酒を・・・という訳か? って事は、やはり妬いていたのに間違い無いらしい。 いや、駄目だ!こいつ相手に普通の思考は当て嵌まらねぇ。 まだ喜んでは駄目だ。 しかし、物凄く嬉しい。 唇を噛んで項垂れるフリック。 その手を取って。 「ちっとこっち来い。」 ぐいと引っ張って、倉庫の外へと連れ出した。 片手にはまだ例の酒瓶を握ったままだ。 「おぅレオナ!コルク抜き出してくれや。」 顔だけ扉の中に向けて呼び掛けた後、カウンターのいつもの席へ。 レオナから受け取ったコルク抜きを栓に宛がい、くるくると沈めていく。 フリックはただ黙ってそれを大人しく見ている。 コルクの抜ける小気味良い音と共に、果実の甘やかな香りが辺りに広がった。 気を利かせて、新しく出されたグラスにそれをなみなみと注ぎ入れる。 「これはな、お前と飲もうと思って買ったんだぜ。」 「え?!そうなのか?」 グラスで揺れている液体を見詰めていたフリックが、意外そうにこっちを見た。 「格別嬉しい事があった時の、祝杯用にと思ってよ。レオナに預けてあったんだ。」 グラスの一つをフリックに握らせると、フリックが益々不思議そうな表情になった。 「だったら・・・どうして、今開けるんだ?」 そんないい事があったなんて、知らないぞ。 それにさっきまでは不機嫌に酒を煽ってたじゃないか。 そう付け加えてフリックが、俺を探る様に見詰める。 綺麗な青い瞳。 ゆっくり時間を掛ければ、手に入るだろうか? 本当は今直ぐ抱き締めて、お持ち帰りしてしまいたいのだが。 「いいじゃねぇか。俺は今、お前と飲みたいと思ったんだからよ。」 死ぬ程嬉しい事が、たった今さっきにあったとは言えず。 うっとりと蕩ける様に見詰めながら言う俺の顔はもしかすると、とてもにやけてたかもしれねぇ。 「お前が、いいなら、いいんだ・・・」 けど、恐ろしく鈍いこいつは、視線の意味に気付きやしねぇ。 いつもの、笑顔で返された。 触れてぇ。 髪に、頬に、唇に。 触って舐めて噛んで、滅茶苦茶に犯して俺のもんで汚してぇ。 それと同じくらい、優しくして可愛がって愛してやりてぇ。 「じゃ、飲もうぜ、フリック。」 カツンとグラスを合わせて飲み込む。 それは、今迄飲んだどの酒よりも美味かった。 酒本来の味もあるかもしれないが、今の気持ちがより一層美味くさせているんだろう、と思う。 隣のフリックも好みに合ったのだろう、とても満足そうに笑って飲んでいた。 「美味いな、これ。こんなの飲めて嬉しいな。」 「だろ?それをお前は一本割っちまったけどな〜」 「悪かったって、言ってるだろ!」 意地悪く言う俺の脛を蹴りながら、フリックが罰の悪そうな顔をする。 「もう、淋しい思いはさせねぇからよ。」 「だからっ!違うって言ってるだろ!!」 「はっはっはっ、照れるなよ!」 これは、ひょっとしてひょっとするとひょっとするのでは・・・ そんな期待をしながら俺はご機嫌でグラスを空ける。 「おう!レオナ。お前さんも、一杯どうだ?!」 「勿論、頂くよ。あんた達には散々世話を焼いてやってるからね。」 遠慮なんかするもんかい、とレオナがグラスを差し出した。 注いでやると、一言レオナが笑って言った。 「あんた達ってホント、鈍いもん同士でお似合いだねぇ・・・」 「俺は鈍くなんか無い!」 「いんや、もの凄〜〜〜〜〜く、鈍いと思うけどな。」 「何だと?!」 「喧嘩するなら、それ返しとくれよ!」 レオナの一喝にフリックの動きがぴたりと止まる。 「はっはっは、大人しく座っとけよ、フリック。」 「あんたもだよ!ビクトール!!」 いつか。 この思いを伝える日が来るだろうか? 少なくともこっちから言わないと、鈍いコイツは絶対気付かねぇだろうな。 いつか。 教えてやろう、俺がどれ程好きでいるのか。 嫌になるくらい教え込んでやろう。 いつか。 二人で笑って、人生を共にする事が出来ればいいな。 さっきのフリックの態度を見ると、そう未来は暗く無い気がした。 翌日俺はにやける顔をレオナに不気味だと罵られながら、壊した倉庫の扉の修理をうきうきとしていた。 昨夜のフリックとの出来事を、何度も何度も思い返しながら。 きっと、うまくいく。 何の根拠も無かったが、そんな予感に溢れていた。 終わり。2001.07.01 |
『フリック×レオナ疑惑をギャグで』がお題だったのですが… ギャグって、SSで書くのって難しいですな〜! ちゃんとギャグになってない気がします〜(泣) 砦時代とゆー事で、まだ熊の片思い状態です。でもフリック、その気ありまくりで…ヤキモチなんかも焼いちゃってるし(笑) 後一歩進んだらくっつく、って関係ですかね。今回のは。 伊砂さん、がんばってみたんですが… 苦情ありましたら、こっそりとお伝え下さいまし(T-T) |
CLOSE |