夢のまにまに。


ふわふわと、暖かい夢を見ていた。



「ん・・・」
まどろみの中、薄く目を開けると覚醒の理由が解った。
自分を抱き込んでいるビクトールが、首筋に顔を埋めて唇を這わしている。
腰の辺りにも掌が行ったり来たりしている感触があった。
まだ、眠気の方が勝っていて、もう一度寝てしまおうと目を閉じた。
が、胸の尖りを緩く吸われて、一気に目が醒めた。
「このっ・・・やめろ、馬鹿熊・・・っ!」
「ってぇ!・・・なんだ、起きたのか。」
慌てて胸に乗る頭を叩くと、ビクトールが顔を上げて悪びれなく笑った。
ったく、この男は。
「何、寝込みを襲う様な真似してやがる・・・昨夜あんだけヤっといて、まだ足りないのか?!」
「いや・・・そーゆー訳じゃねぇんだがよ・・・」
昨夜は暫く遠征に出ていたビクトールに、帰って来るなり押し倒されて、気の済むまで延々付き合わされたのだ。やっと解放された頃には、窓の外が白くなっていた記憶がある。
呆れながらも睨み付けると、ビクトールの大きな掌が伸びてきて髪を梳いた。
「何つーか、幸せってやつを、噛み締めてたとこだ。」
臆面も無くそう言って、本当に幸せそうに目を細めて笑う。
どきりとした。

この半月程の間。
目が覚める度、常に傍らにある筈の体温が無い事に、うすら寒さをおぼえていた。
逢えないでいた間、彼もまた同じ様に思っていてくれていたのだろうか。

胸がしくしく痛んで、そうせずにはいられなかったので、ビクトールの背に腕を回して、その胸元に顔を擦り付けた。
「おい、どうした・・・?」
戸惑い気味にビクトールが尋ねてくるので、思った事を正直に言った。
「俺も、幸せを噛み締めてるんだ。」
言った途端、凄い力で抱き竦められた。
顎を取られて上を向かされると、唇が合わせられる。
舌が押し入って来たが、乱暴だとは思わなかった。
それから、唇が離れると顔中キスをされて、首筋にもキスをされた。
そしてまた、ぎゅうぎゅうときつく抱き締められた。
息苦しかったが、とても心地良くて。自分もまた彼の背に腕を回して抱き返した。
そうしてお互い、暫く何も言わないまま抱き合っていたのだけれど。


「・・・すまん。やっぱ、抑えらんねぇ・・・」
「え?・・・何?」
押し付けて来る腰に、堅く熱いものを認識して、その言葉の意味を理解する。
「ば、馬鹿・・・ちょっと、待て・・・っ」
圧し掛かるビクトールの肩を押し返すが、ビクともしない。
早速這いまわる不埒な掌から逃れ様と、体を捩るがなんなく押さえ込まれてしまった。
「あっ、や、やめっ・・・」
「ほんと、俺は幸せだよなぁ〜」
「やっ・・・あっ・・・あ―――」
やっぱり俺は幸せじゃない。
と言いたかったが、口から出たのは意味のない音にしかならなくて。


また、なし崩しにふわふわとした夢を見る羽目になってしまった。



結局、二人して本格的に起き出したのは、昼を大分回ってからの事となったのだった。


                               おわる。2001.11.19


広石 克巳様に捧げます。

えぇ〜と(汗)広石さん言うトコロの「まったり、しっぽり〜」を目指してみたのですが。何か違うよーな気が…しないでも…ない…かも。
大人なカンジの二人は私には到底無理な様です(T-T)
ちょっとサービス(?)で、えろっぽく仕上げてみましたが。えへ。
粗品ですが、宜しければお受け取り下さいまし。
返品苦情はこっそりとお願いしますね〜(汗)


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