戦況は最悪だった。 撤退の合図が出てからも、軍が引くペースは遅くて。 最前線で戦っていた筈の相棒の姿はまだ見えない。 「ビクトール!!!」 名を、何度も呼ぶ。 引き返す自軍の進む方向とは全く反対の方へと馬を走らせながら。 斃れた死体を踏み分けながら。 「どこにいる?!!」 いない。 そんな筈はない。 いるなら、きっと、今も。 不吉だとさえ思えるような彩の。 夕闇のなかを、ひたすら、探す。 今も、戦っているだろう相棒の姿を。 声が聴こえる。 自分の名を、呼ぶ、相棒の声が。 急かされるように駆けて来る蹄の音も。 「くそがあ…っ!!!」 馬上の奴とは違い、こちらは答える暇なんてありやしねえ。 ただ、段々と近く大きくなるその音に。 自然と笑みが浮かび上がる。 「ビクトールっ!!」 一段とはっきり、大きく聴こえた。 目の前の敵兵を斬って捨てて。 そして、声の主を振り返った。 『何て顔してやがる』 口に、出す間もない、から。 目で、そう言って剣を薙いだ。 一度血色に染まった視界を巡らせて。 また、奴の顔を伺う。 すると、今度は。 『お前こそ、何て顔してやがんだ』 そう、目で返された。 殿で敵兵に囲まれて。 絶体絶命、という言葉がこのうえなく似合う、この状況で。 それであって、尚、笑う。 自分に向けての皮肉なのだろう。 寄る兵士をあっけない程に斬って。 近付くフリックの傍らに滑り込む。 そして。 「お前とひと暴れ出来るってのに、しけた面なんざ出来る訳ねえだろ?!」 「ちょっとは状況考えてもの言えよな?!」 「とか言って、そう言うお前だって笑ってんじゃねえかよ?!」 「当たり前だ!これで今日はお前の奢りで酒を飲めるからな!!」 「おいおい…誰も助けてくれなんて頼んじゃいねぇぜ?」 「うるさい!素直に奢っとけ…っ!!」 そう怒鳴ったフリックが、ついでとばかりに雷鳴を一つ呼んだ。 それに紛れて手近な敵を斬り落とす。 後はもう、互いの顔など見る間もなく。 ただ、ひたすら本隊との合流をすべく身を翻した。 その前に、一度。 『生きて還ろうぜ』 目で、告げて。 互いに笑い合った。 願いと、そが実る確信を以って。 |
さいこ様より戴いてしまいました!!! えらい役得ですよ!ほんとに!! ああ!フリック格好いい…v そしてやはり色!色がいいですよね。 いや、構図とかマントとバンダナのなびき具合とかもとても好きなカンジなのですが。 さいこさん、ほんとに有難う御座いました! お礼文が玉砕気味で申し訳ないです…す、すみません〜! |
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