女性労働者の母性健康管理上の措置

事業主が講ずべき妊娠中及び出産後の女性労働者の母性健康管理上の措置

日本の少子化、高齢化現象は、日本の将来に大きな暗雲を投げかけているといっても過言ではありません。一方、若年労働力の減少にともない、働く女性は、ますます増加し、パードタイム労働者も1,000万人を超えています。少子化対策については、政府もいろいろな施策を講じていますが、何といっても、女性が働きながら安心して子を産み、育てることができる環境をつくることが大切です。このためには、家庭、職場、地域が一体となって、それぞれの分野における役割を果たさなければなりません。企業にとっては、法令に基づく義務とはいえ、労働時間、賃金等の面で若干の負担にはなりますが、企業が存続し、産業を発展させるためには絶対に必要な「労働力を再生産するための措置である。」との理念に基づいて、早急に規程を作成し、安心して子育てができる環境を整備してください。記載内容については、とくに説明を要するほどのことはありませんが、要は当該女性が請求しやすい手続きと請求する措置の内容を具体的に明示しておくことだと思います。

1条(目的)
この規程は、男女雇用機会均等法第22条の規定に基づき、妊娠中および出産後1年以内の女性の就業に関する特例措置を定めたものです。
第2条(適用)
この規程の適用を受ける社員は、次のとおりとします。
(1)妊娠していることを会社に届け出た女性
(2)出産後1年以内の女性。ただし、育児休業、育児短時間勤務制度の適用を受けている女性を除きます。
第3条(請求手続)
第4条から第7条までに定める措置の適用を受けようとするときは、別に定める様式により、希望する措置の開始1週間前までに、所属長へ申請しなければなりません。
第4条(妊娠中の通院等の措置)
妊娠中または出産後1年以内の女性社員が、母子保健法による保健指導または健康診査を受けるために、就業時間内に通院する必要があるときは、請求により、次の時間内通院を認めます。
(1)請求できる期間および回数
(ア)妊娠23週まで………………4週間に1回
(イ)妊娠24週から35週まで……2週間に1回
(ウ)妊娠36週以降………………1週間に1回ただし、医師等の指示がある場合は、その指示による回数
(2)請求できる時間は、健康診査等に必要な最小限度の時間とします。
第5条(通勤緩和の措置)
妊娠中の女性が、電車またはバスによる通勤時の混雑が母体の負担になる場合には、本人の請求により、始業時刻を30分繰り下げ、または終業時刻を30分繰り上げることができます。ただし、本人の請求により、合計1日1時間以内を限度として、繰り下げまたは繰り上げ時間を調整することができます。
第6条(休憩時間の措置)
妊娠中の女性が、作業を長時間継続することが母体の負担になる場合は、本人の請求により、所定の休憩時間以外に、適宜必要最小限度の休息をとることができます。
第7条(症状等に対応する措置)
妊娠中および出産後1年以内の女性社員が、医師等から勤務が母子保護に支障を及ぼすおそれがある旨の指導を受けたときは、「母性健康管理指導事項連絡カード」の症状等に対応する次の措置を講じます。
(1) 作業負担の軽減
(2) 負担の少ない作業への転換
(3) 勤務時間の短縮
(4) 休業
(5) その他、適当な措置
第8条(措置中の待遇)
前各条の措置は、次により、取り扱います。
(1) 第4条第2号の時間は有給とし、特別休暇扱いとします。
(2) 第5条の時間は1時間以内は有給とし、特別休暇扱いとします。ただし、1時間を超える時間は、無給とします。
(3) 第6条の休息時間は、有給とします。
(4) 第7条第3号の短縮時間および第4号の休業は無給とし、第4号の休業については休日扱いとします。ただし、本人の届け出により、年次有給休暇を取得することができます。
第9条(報告)
この揚程の適用を受けている女性が、次の各号の一に該当するに至ったときは、遅滞なく所属上司に報告しなければなりません。
(1)妊娠中の女性が中絶、流産等により、措置を受ける必要がなくなったとき。
(2)出産後1年以内の女性が、健康の快復その他の事由により、措置を受ける必要がなくなったとき。
附則
(施行期日)
1この規程は、平成○年○月○日から施行します。
(経過措置)
2この規程は、施行期日現在妊娠中の女性または出産後1年に満たない女性についても適用します。

【参考資料】妊娠中及び出産後の女性労働者が保健指導又は健康診査に基づく指導事項を守ることができるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針(平成9.9.25労働省告示第105号)
1はじめにこの指針は、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等女性労働者の福祉の増進に関する法律第27条第2項の事業主が講ずべき措置に関し、その適切かつ有効な実施を図るために必要な事項を定めたものである。
2事業主が講ずべき妊娠中及び出産後の女性労働者の母性健康管理上の措置
(1) 妊娠中の通勤緩和について事業主は、その雇用する妊娠中の女性労働者から、通勤に利用する交通機関の混雑の程度が母体又は胎児の健康保持に影響があるとして、医師又は助産婦(以下「医師等」という。)により通勤緩和の指導を受けた旨の申出があった場合には、時差通勤、勤務時間の短縮等の必要な措置を講ずるものとする。また、事業主は、医師等による具体的な指導がない場合においても、妊娠中の女性労働者から通勤緩和の申出があったときは、担当の医師等と連絡をとり、その判断を求める等適切な対応を図る必要がある。
(2) 妊娠中の休憩に関する措置について事業主は、その雇用する妊娠中の女性労働者から、当該女性労働者の作業等が母体又は胎児の健康保持に影響があるとして、医師等により休憩に関する措置についての指導を受けた旨の申出があった場合には、休憩時間の延長、休憩の回数の増加等の必要な措置を講ずるものとする。また、事業主は、医師等による具体的な指導がない場合においても、妊娠中の女性労働者から休憩に関する措置についての申出があったときは、担当の医師等と連絡をとり、その判断を求める等適切な対応を図る必要がある。
(3) 妊娠中又は出産後の症状等に対応する措置について事業主は、その雇用する妊娠中又は出産後の女性労働者から、保健指導又は健康診査に基づき、医師等によりその症状等に関して指導を受けた旨の申出があった場合には、当該指導に基づき、作業の制限、勤務時間の短縮、休業等の必要な措置を講ずるものとする。また、事業主は、医師等による指導に基づく必要な措置が不明確である場合には、担当の医師等と連絡をとりその判断を求める等により、作業の制限、勤務時間の短縮、休業等の必要な措置を講ずるものとする。
3その他
(1)母性健康管理指導事項連絡カードの利用について
事業主がその雇用する妊娠中及び出産後の女性労働者に対し、母性健康管理上必要な措置を適切に講ずるためには、当該女性労働者に係る指導事項の内容が当該事業主に的確に伝達され、かつ、講ずるべき措置の内容が明確にされることが重要である。このため、事業主は、母性健康管理指導事項連絡カード(別記様式)の利用に努めるものとする。
(2)プライバシーの保護について事業主は、個々の妊娠中及び出産後の女性労働者の症状等に関する情報が、個人のプライバシーに属するものであることから、その保護に特に留意する必要がある。

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