9月10日

 あまりに寒くて目が醒めた。
 暗闇の中、目を凝らして時計を見てみると、2:00を少し回ったところである。
 日中、乾燥しているものの結構気温が上がったことから考えると、考えられないほどの寒さだ。おそらく、6〜7度といったところだろう。たまりかねてイグニション・キーを回し、暖房を入れる。しばらくして暖かい空気が車内を満たし始めたが、それでもまだ芯から忍び寄るように冷え込む。これは洒落にならない。砂漠を舐めたのが失敗だった。日が昇ったら、高くても何でもいいからホテルをとろうと堅く決心をする。
 寒さのために良く眠れず、朝までぶつ切れ睡眠で過ごす。完全に寝不足になってしまった。ようやく日が昇ってきて、日の出直前の莫迦みたいな寒さしのぐと、徐々に気温も上がってきて過ごしやすくなった。すぐさま動きたかったが、まだまだ街は動き出さない。しかたなくぼーっとしていたら、暖かくなってきたせいで眠くなったので、睡眠不足を取り返すために一眠りする。すると今度は暑さで目が醒めてしまった。困った土地である。
 完全に目が醒めたので、もそもそと朝食を摂る。時計を見ると、10:10だ。まだちょっと早いようだ。しばらく街をぶらついて時間を潰すと、センター街に近いホテル、Emu Walk Apartmentsに行ってみる。ガイドで見る限り、個室では最も安いホテルだったのだ。かなり疲労がきていたので、ドミトリーには泊まりたくなかったし、いままでけちけちしてきたのでこの際多少散財しても大丈夫だという読みもあったので、個室に泊まることにする。
 ホテルの前まで来てみるが、カウンターには誰もいない。まだ時間が来ていないようだ。しばらく前でうろうろしたりするが、それも芸がないのでくるまで周辺をぐるりと一回りして時間を潰す。特に何かあるというところでもないので、エアーズロックとオルガを見てしまうと、ほかにもうやることがないのだ。しかも、なんか今日は雲行きが怪しい。砂漠に珍しい雨模様になりそうな気配だ。いろいろ貴重な経験ができて、つくづく天候には恵まれている(笑)。
 11:00になって、ようやくカウンターに人がきたので、部屋が空いてないかどうか訊く。すると、空いているとのこと。結構疲労が溜まっていて判断力が鈍っていたのか、いや、もうどうでもいいやという気持ちが強かったからか、それでいいですと二つ返事でチェックインしてしまった。料金は、税込みで220.90オーストラリア・ドル。日本円で約2万3千円である。これはいくらなんでも高すぎるとあとで思ったが、その時は感覚が麻痺していたのと、一刻も早くベッドで眠りたかったのがあって、たいした感想も持たずに部屋に行ってしまった。明らかに失敗である。
 部屋・・・というより、モーテルタイプの独立棟が多く並んでいるホテルで、室内はかなり広かった。ベッドのサイズも、明らかにダブル。シングルルームと云ったのに、ダブルの部屋に回されてしまったようだ。チェックイン表を見せてもらったら、ほかの部屋は満員だったので、しかたなかったのだろう。なんだかすごく聞き取りにくい発音のおねーちゃんだったから、その旨云っていたのかもしれないけど判らなかったのかもしれない。とにかく疲れていたので、考えるのも億劫で、さっさとシャワーを浴びてベッドに潜り込んで寝てしまった。人疲れする方なので、やはりドミトリーはこたえていたらしい。誰もいない開放感と安心感で、久しぶりにぐっすりと眠れた。う〜む、性格的にドミトリーが苦手と判っただけでも収穫か。
 目が醒めたら、もう16:00近かった。外はまだぐずついている。予想通り、雨が降ったことは、途中トイレに起きたときに確認していた。しかし、もうほとんど上がっているようだ。今日の夕方は、サンセット・ビューに行って写真を撮るつもりだったので、実に好都合。なんだかいい感じで天候が巡っているようである。
 軽くパンで腹ごしらえをしてから、くるまでエアーズロック方面に向かう。サンセット・ビュー Sunset View とは、エアーズロックが一番美しいとき、黄昏時に眺めるための絶好のポイントで、多くの写真がここから撮られ、世界に唯一無二の一枚岩板の美しさを伝えている。日が沈む直前、エアーズロックは夕日に照らされて朱色に輝く。その一瞬を見るために、多くの人々がサンセット・ビューに集まってくるのだ。日没は18:00ごろなのだが、場所取りのために早目に行かなくてはならない。それで、16:00早々にはサンセットビュー向けて出発したのである。

 サンセット・ビューに着いても、まだ誰もいない。作戦成功である。同時に、まだあまり雲が晴れていない。聞いた話だと、エアーズロックが美しく夕日を照り返して朱色に輝く日というのは、思っているほど多いもんでもないらしい。一番よく見えそうなところをうろうろして決め、そこにくるまを置いて時間を待つ。1時間ほどは特に変化もなく、実に退屈なときを過ごす。ぽつぽつと人も集まりだし、17:00ころには駐車場に車を停められないほどになった。そして17:20を回った辺りから、風景に変化が現われてきた。雲の間から刺す沈み行く太陽の光を受けて、エアーズロックの輝きが増してきたのだ。早速カメラを構え、シャッターを押す。時間が過ぎるのを忘れて、次第に輝度を増していく巨岩を眺めやる。雲が多いのだが、充分審美に足りる光景だ。最後の審判とはかくあるものかというほどの神秘的な光景である。ちょっと言葉では云い表わせないので、たいしたものでもないが写真を用意したので雰囲気の一端だけでも味わっていただきたい。

 18:00を回って、だいぶ太陽が沈んだころ、これまで以上に雲が出てきてしまったので撮影を断念し、しばらくボーッと眺めてから、帰路に就く。途中でガソリンを入れて返す用意をすると、ホテルに帰ってのんびりと読書をして過ごしてから眠りに就く。明日はいよいよシドニーに戻る日である。

 


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