9月8日

 他の誰かがごそごそやっている音で目が醒めた。寝ぼけ眼で見ると、サーファーの人が準備万端整えて、早速出かけるところだった。いったい何時かと時計を見ると、まだ7:20。う〜む、サーファーの朝は早い。
 とりあえず目醒めてしまったので顔を洗いに出て行くと、同じ棟に泊まっていた日本人ラウンダーのねーちゃんたちが、わいわい云いながらテレビを見ていた。なんか見覚えがある番組だなと思ってよく見たら、なんとセーラームーン……(^^ゞ
 顔を洗ってすっきりし、同宿のにーちゃんねーちゃんたちにサヨナラを云って向かいの棟に行く。こっちの人たちと仲良くなってしまったのだから仕方がない(笑)。昨日のテラスに出てみると、林さんが眠気覚ましか風に当たっていた。しばらくすると清水さん小林さんも起き出してきて、ここで昨日約束した写真を撮らせてもらうことにする。折りよく顔を出した従業員のディヴィットにシャッターをお願いして、パチリ。その写真がこれ。でも、まだ寝ていた塚本さんには、顔が腫れてるからという理由で撮影拒否を食らってしまった。また小泊さんと西山さんは、朝早くに出かけていったという。ちょっと残念だけれども、もうブリスベン行きのバスが出てしまう時間なので、諦めてバスステーションに行くことにする。みんなにサヨナラを云って、林さんと連れ立って昨日着いたステーションへ向かう。
 時間はそろそろ10時半というところ。朝ご飯を食べていなかったが、妙に元気で食欲もなかったのでまあいいやとチケットを購入する。バスの発車時間は11時らしい。と、背後から「やっぱりいたーっ」との声。振り返ると、小泊さんと西山さんが手を振りながら近づいてくる。用事で出かけた後、まだいるんじゃないかとステーションに回ってきたのだそうだ。こいつはラッキーということで、念願の記念撮影。辺りを歩いていた中国系の女性を強引に呼びとめてシャッター押してもらった。なんか急いでいたみたいなのに、ごめんね(笑)。
 そうこうしている間にバスが来たので、ふたりと別れて車上の人となる。目指すはブリスベン。林さんはそこからニュージーランドに渡るのだそう。オーストラリアのアンセット航空には、日本で購入できるクーポン券があり、5〜6回飛行機に安く乗れるのだ。これは就航ルートすべてに適用されるので、帰り際にちょいとニュージーランドに寄っていこうかと考えているらしい。なかなか魅力的なプランだけれども、オーストラリアをもうちょっと堪能したかったので、ぼくはパス。と云っても、ブリスベンに行く明確な目的があるわけでもなかったりする。漠然とエアーズロックに行きたいなあ、また長距離バスで行けんかなあなどと惚けたことを考えていたのだが、ブリスベンからエアーズロックまで長距離バスでは4〜5日かかるということが判り、断念したのだ。いくらなんでも、そんなにバスに揺られていられるほど我慢強くもない。第一、旅程を完全にオーバーしてしまう。林さんは、ブリスベンで航空会社のカウンターを訪ねてみたらとアドバイスしてくれたが、まだ飛行機を使うまでの決心はなかった。
 バスの出発は11時ちょうど。ブリスベン到着は13時である。その間、取りたてて話すようなこともなく、あっさりブリスベン入りした。まあ、バスの間中、以前ワーホリ(ワーカホリックではない。念のため(笑))でブリスベンに住んでいたという林さんの話を聞くことで情報収集に励んでいたのだけれど、ヌーサやバンダバーグも面白いよ、グレートバリアリーフは見たほうがいいよといった話題に刺激され、このまま北上を続けてもいいかな、という気になってきただけだった。内陸方面への情報は持っていないとの林さんの弁。それはしかたないんだけどね。
 さて、ブリスベンの街だ。長距離バスは巨大な総合ステーションであるブリスベン・トランジット・センターに到着し、そこからいきなり街の中心に出ることができる。以前林さんが目をつけていたと云うバックパッカーズホテルに投宿することは決めていたが、その前に彼の勧めでユースホステルのメンバーシップカードを作ることにした。これがあると、どこ行くにしても結構値引きしてくれ、結果的には絶対得なのだと云う。入会金も、そうは高くなかった(気がする。控えをちょっと無くしてしまったのだ)。ものの10分ほどで手続きは完了。改めて街中へと繰り出す。
 さすがに林さんは以前住んでいたと云うだけあって、すいすいと街を闊歩していく。ぼくはそれに遅れないように、そそくさついて行くおのぼりさんてな構図である。途中、Exchangeがあったので、幾ばくかのお金を両替し、さらにいくつかの角を曲がって辿り着いたのはPalace Backpacker's という名のパッカーズホテルだった。中に入ってみると、確かに結構しっかりしていそうだし、また古風なエレベーターがいかにも欧米風で、純粋モンゴリアンは瞳キラキラもんである。値段もそう高くない(執筆段階で、レシートがないのだが、高くはなかったという記憶がある)し、ここにしようということになってチェックイン。もちろん安い相部屋だ。
 部屋に荷物を置くと、昼過ぎなのでご飯を食べようということになり、再び街へ。昔よく行っていたという中心街のクィーンst.モールに向かう。ここの一角にある半地下のショッピング・センターにある軽食喫茶コーナーが、ブリスベン在住の貧乏学生御用達なのだそうだ。たしかに値段も安く、種類も豊富なようだ。ぼくはベトナム風カレー$5.80なりを頼んだが、大盛りといっていいくらいの分量がある。味もまあまあ。ただ、オーストラリアくんだりまで来て、なぜベトナム料理?という疑問は拭い去れなかったが(笑)。
 適度に腹も膨れたので、ぼくはクィーンズランド博物館に行くことにした。林さんは用事があるようだが、まだ時間があるとかで付き合ってくれるという。行ってみると、びっくりするほど巨大な博物館だった。同じく州立の美術館と並んで建っているのだが、そのせいでいまいち入口が判りづらい。しばらくうろうろしてから入口を見つけて入館。あとで考えると、2階の入口から入ったようだ。しかし、巨大な上、結構てんでバラバラに展示スペースがとってあり、それぞれが連続していないので、順路も何も気にしないでいいようだ。一応、1階が自然、2階が歴史、地下にアボリジニとかテーマはあるようなのだが、それもなんかあやしい。それぞれのスペースでの展示は判りやすくていいのだが、スペースとスペースの関連性は0に等しい。まあ、それを弁えておけば、かなり楽しめるスポットだと思う。特にオススメは移民女性の歴史のスペース。再現体験のコーナーなのだが、かなり細部まで精密に造ってあるし、移民期における女性は偉大だったっ!という強烈アピールが結構新鮮で、ここだけでもなかなか飽きがこない。そういう正統派の歴史があると思えば、次は恐竜、次は剥製がフロア全体を占領、次はサーファーの歴史、次は蒸気機関の体験コーナー、次は何故か日本の甲冑、次はさらになぞな企画展「毛沢東」(笑)と、とにかくびっくり箱のような博物館である。それに入館無料だし(笑)。
 巨大な迷路に似た博物館をぐるぐる回るうちに、14:00入館だったのに、もう16:00である。さすがに用事があると林さんが行ってしまったので、それを機にぼくも街中に戻る。とりあえず、カンタスかアンセットのカウンターを見つけて、エアーズロック行きの運賃を検討してみようと思ったのだ。まだ決心がついていなかったのだが、もはや飛行機でなければ行けないことは明白だったので、簡単に云えば、飛行機でエアーズロックに行くか、諦めるかの二者択一だったのだ。心理的な葛藤を表わすと、目的のひとつにまで挙げていたエアーズロック、行きたいのは山々だが、なにせ飛行機代は高くつく、御足が出るのは目に見えているのに、敢えて行く価値があるのか?といったところだろうか。解析すると、貧乏性が心理的ブレーキになっているだけなのである(笑)。
 葛藤を抱えながら街中を彷徨っていると、まるで魅入られたように目に飛び込んできた文字があった。

 ANSETT AUSTRALIA

 ああ、見つけてしまった。見つけなければ、決断しなくていいのに(矛盾を内包している)。しかたがないので、窓に張りついてチケット相場を見る。むむ、エアーズロック、(日本円にして)9万、10万?!おいおい。ちょっと待ってよ……これでは、どうしたってカード使うしかないわなあ。それなら、当座響いてこないし、ちょっと負けさせれば、なんとかなるだろうか。少しだけ、話を聞くだけ、カウンターに入ってみよう……この辺りの心理動向は、すでに悪魔に魅了されているため、前後矛盾が生じている(笑)。つまり、カウンターに入る前には、すでにエアーズロック行きの結論は出していたのである。
 初めて入る、飛行機会社のカウンター。勝手が判らず、うろうろしていると、カウンターに座っていた30代前半くらいの中国系のおねーさんが、「May I help you?」と、中学生でも判る英語で話しかけてきた。う。しゃーない。度胸据えて、やったろやないかっ!と、急に妙なえせ関西弁の思考回路になり、どっかとおねーさんの前に腰を下ろす。そして、「エアーズロック行きの飛行機を探しているんだけど?」と訊いてみた。
 「エアーズロックですか?便はありますけれども、少ないですよ。どのような便をお望みで?」とおねーさん。
 「便があるのなら、すぐに行けるのがいい。あまり日数がないのです」とぼく。
 「それでは、明日の朝の便がいちばんいいですね。値段は、往復で(日本円で)7万円です」
 「それは高い。もっと安いのはないですか?」
 「アリススプリングス経由の便なら、もっと安くなりますけれども、次の出発は2日後です」
 「それも困る。ぼくは12日にシドニーから日本へ帰らなければならないんです。ほら」と云って、全日空のチケットを見せる。
 おねーさん、じっくりとチケットを見てから「確かに12日の出発便ですね。それでは…」
 「ええ、できればエアーズロックに行って、それからシドニーに向かう便の予約がしたいんです」
 「判りました。少々お待ちを…(コンピュータで検索)ありました。明日の朝の便でエアーズロックへ、そして11日の便でシドニーへ。それだと、8万円ですね」
 「うう〜ん。いくつかの手段を提示してくれませんか?」
 「はい。これとこれとこれ、3種類ですね。いちばん安いはこれ。ただし、2日後の出発になります。次はこれ。時間的には最も早いでしょう。次はこれ。両者の中間ですが、もっともお望みのものに近いのではないかと思いますけど」
 「うう〜ん……」←悩んでいる。
 「……」←待っている。
 「うう〜ん……」←悩んでいる。
 「……」←待っている。
 「決めたっ!こちらの便、予約して下さいっ!」
 清水の舞台から飛び降りるつもりで、というのはこのことを云うのだろう。意を決して、ブリスベン→エアーズロック→シドニーのチケット8万円ナリを購入した。あんまり悩んだ末、えいやっという感じで「reservation,please!」などとやったので、苦笑ともなんともつかない(失笑というのが一番近いか)笑いを、おねーさんがもらしていた。
 しかし、文章で書くとたったこれだけのことを、約1時間近くかけてやっているのだから、おねーさんもいい加減疲れたことであろう。でも最後には、心からの笑顔で「Have a good flight!」と云ってくれたのは、ちょっと嬉しかった。そうそう、付け加えておくと、この値段はユース会員証を持っていたことによる割引されたものなのだ。林さんに感謝である。
 ホテルに戻ると、もう林さんは帰ってきていて、朝5:30チェックインの飛行機でニュージーランドに渡ることにしたと云う。こちらも7:15出発だから、朝早いですよ〜と云うと、それならばタクシーをshareして空港まで行かないか?と嬉しいことを云う。こちらからお願いしたいくらいで、もちろんおっけーしてとりあえずは準備万端である。すると安心したのか急に眠気が襲ってきたので、さっさとシャワーを浴びて寝てしまった。よく考えたら晩御飯を食べていなかったが、眠かったし昼間のカレーで充分な気がしたので、ベッドに潜り込んでしまった。林さんは、同室になった日本人と話などをしていたけど、ぼくは速攻で夢の国にれっつごーしていたのである。

 


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