9月5日

 いよいよ出発の日がやってきた。ぼくにとって2回目の海外旅行となるオーストラリア行きの日がやってきたのだ。しかも今回は、すべてを自分ひとりの力で準備した、完全な個人旅行である。と云っても、ホテルなどの渡航先におけるさまざまな予約なんかは、まったくやっていない。完全な行き当たりばったりで、ま、行ってみりゃ何とかなるぐらいの気楽な考えしか持っていない。だから、自分で準備したのは、渡航ビザと航空券の手配くらい。猿でもできる準備だったりする。要するに旅行会社を通さないプランニングによる旅行がしたかったのだ。飛行機は経費削減の折り格安航空券に頼ったけれど、それ以外で旅行代理店にお金落とすつもりもなかったし。しかしそうは云っても、ほんとに旅行計画は全くの白紙だったので、我ながらいいかげんだと思う。
 そんなんでも、出発の日は来る。実を云うと、風森は旅行好きとか云いながら、海外旅行はこれで2度目、しかも前回は船での渡航(中国)だったので、国際線の飛行機に乗るのははじめてだったりするのだ。家族揃って飛行機嫌いなこともあって、いままで機会がなかった上、自由に旅行できる大学時代は金がなく、また遊びに金を出して貰おうなんて考えるほど傲慢でもなかったので、結局1回きり。就職してようやく実現した念願の「飛行機での海外旅行」なのだ。そんな訳で、少々心此処にあらずといった状態で数日を過ごし、夕方出発にも拘わらず1日仕事を休んで準備は万端。あとは空港に行くのみである。両親も、息子が独りで外国に行くなどという事態は初めての経験なので、かなりそわそわ落ち着かない。風森の家は成田空港からくるまで10分程度のところにあるので、パパ上かママ上か、どっちか都合のいい方に空港まで送ってもらうことになっていたが、当日になって、急にふたりして仕事を早退して見送るとか云い出した。おいおい。気持ちはありがたいけど、なんかちょっと違う気がする。
 飛行機は、全日空のNH913便。新宿のH.I.S.で買った格安航空券で、往復8万円弱。高いんだか安いんだか判断できないけど、見せてもらった中では、一番安値だった。てっきりカンタスとかの方が安いのかと思っていたら、必ずしもそうではないらしい。出発日が9月入ってすぐという、見事に観光シーズンをはずした設定も手伝ってはいるけど。ま、それはともかく出発予定時刻が20:50なので、お約束として2時間前の18:30にチェックイン。見事に禁煙席をゲットしたが、窓際ではなかった。ちょっと残念。
 空港で困るのが、このチェックインしてから過ごす時間。2時間って、おもいっきり中途半端な時間だと思う。仕方なく、両親がめしにしようというので、空港の蕎麦屋でそばを食う。ホントは出発してすぐに機内食サービスがくることは判っていたから(いくらなんでも、そのくらいの知識はある)、あんまり食べたくなかったんだけど、ま、心配してくれる両親への、せめてもの気遣いってやつである。海外旅行嫌いな人にとって、ひとりで出かけるっていうのが自殺行為に思えるのも判らないでもないし、そういう余計な心配をかけることが、弁解の余地なく親不孝だっていうのも自覚してるからね。でも、「いい加減子離れをする」「用心を重ねた海外は恐怖の対象ではない」などの意識改革を求めるぼくにとって、今度の旅行は必要不可欠なのだ!なんてね。単に行きたいから行くだけなのがホントだけど(笑)。
 食事の後、見学デッキで離陸を見たりして時間をつぶした後、うんざりしてきたので出国手続きをしてしまうことにする。営業笑いのおねーさんがいるゲートを抜けたら、そこはもう外国。といっても、何処の国でもないから、正確には無国籍地帯。家で待っている姉に電話を入れた後、成田発シドニー行きNH913便の待つ搭乗デッキに向かう。
 てくてくデッキに向かって歩いていると、床に直座り(しかも体育座り)して整列している女子高校生の集団がいた。学校の先生と思われる男性が、看守の如く周囲を徘徊し、また学年主任か校長か知らないけれど、偉そうなおっさんが旅先ので注意を、あたり構わず大声で喋っている。「周りの人に迷惑をかけないように!」って、メイワクなのはあんただよ。そもそも、女子高校生が飛行機内に存在しているだけで、充分迷惑なんだから。同じ飛行機でないことを祈らずにはいられない。安眠妨害はごめんだ。しかし、ああやって公衆の往来の中央にどっかと位置を占めてしまうことに対して、なんらかの羞恥心とか、周囲に対する配慮とかは働かないのかね?東京駅とか上野駅とかで同様の光景を目にするたびに、思うんだけど。
 5分も歩いたところで、搭乗ロビーにつく。まだ誰もいない。あたりまえか。あと1時間以上あるもんな。適当にソファーに陣取って、早速バックパックにほうり込んだ文庫本を開く。今回の旅行では、大き目のバックパックひとつだけの軽装で臨むのだ。大荷物抱える余裕なんてないし、そもそもちゃんとしたホテルに泊まる気すらないし。期間は短いけど、にわかバックパッカーを気取る心積もりなのである。
 30分もしたら、ちらほら他の搭乗客も現れ出した。あちらこちらで話の花が咲き、また、宵闇にライトアップされて浮かび上がる搭乗機をバックに、記念写真を撮る人もいる。室内からガラス越しの屋外を撮っても、写っているとは思えんけど。わがまま云う客に振り回されているツアコンがいたり、自分の渡航歴を延々自慢しているおっさんがいたりと、まあ、旅行するときには見慣れた光景が展開されている。いやがおうにも、旅へのテンションは高まろうというものだ。
 そして時間は20時ちょっと前。そろそろ搭乗時刻である。しかし一向に、ANAの人は現れる気配なし。おかしいな、と思い始めたころに地上勤務の人がやってきて、荷物の積み込みに手間取って、10分から20分ほど遅れる見込みだと説明する。それならそれで仕方ないけど、もうちょっと早めに云いに来てくれてもいいのに。結局、搭乗手続きを開始したのは20:25過ぎ。自分の座席に腰を下ろしたのは、30分ちょうどくらいだった。最初っから、時間どおりいかないなあ。ま、スケジュールなんて目安でしかないから、きっちりかっちりいくなんて、はじめから思ってはいなかったけどね。
 しかたないのでぽけーっと待っていたら、ようやく21時になってから飛行機が動き出した。この、乗ってから飛び立つまで、妙に長いのが嫌なんだよなあ、飛行機って。しかも、成田は滑走路ひとつしかないもんで、列になって順番待ちしてるし。ようやく飛び立ったのは、21:20。でも、まあ波乱がないほうか。
 案の定、飛び立ってすぐ機内食サービスがやってきた。やることもないし、すぐ寝るつもりだったので、ワインもひと瓶頼む。で、赤が来たのだが、これが結構渋味が強く、食べ物と合わせても飲みづらい。う〜ん、赤が苦手な人だから、余計そう感じたのかな?白にしてくれと云えばよかった。でも、いつものごとく強引に飲み下し、あとは夢の世界へレッツゴー。何せ10時間も乗っているんだし、オーストラリア近づいたら興奮するだろうから、早めに寝ておくのだ。おやすみなさ〜い。


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