平成21年夏合宿 北岳山行



 今年の梅雨も異常に長かった。7月中旬に関東・甲信越の梅雨明け宣言があってからも、それ以外の地域では一向に梅雨明けせず、九州北部や山口県などでは連日の豪雨で大きな被害が出ていた。そして、梅雨明けしたはずの関東・甲信越も「戻り梅雨」という(おそらくは気象官が言い訳に生み出した言葉)ことで、週間天気予報はめまぐるしく変わり、出発当日を迎えたのであった。
 今回も、仕事の都合で休みが取れない隊長を残し、いっちゃんと2人だけの夏合宿となった。

  (地図は、昭文社「MAPPLE 山と高原地図」より引用させていただきました)

7/28(火)

JR石山駅 6:55 ― 10:10 伊那IC ― 11:30 仙流荘 12:45 ―(南アルプス林道バス) ― 13:35 北沢峠 15:15 ―(南アルプスバス) ― 15:35 広河原 ― 15:40「広河原山荘」(泊)

 午前7時前にJR石山駅を出発。曇り空。運転を交代しながら伊那ICを目指す。
 伊那ICで中央道を下り、高遠方面に向かう。3年前、甲斐駒・仙丈の時に来た道だ。当初は広河原には山梨県の芦安から入ろうと考えていたのだが、いろいろ調べていると、関西方面からは北沢峠経由でバスを乗り継いで入ることが可能とわかり、今回試みることにした。甲斐駒・仙丈の時に買い物をした伊那市内のスーパーで食糧を仕込む。あとで気づいたのだが定番フルーツゼリーのスプーンをもらい忘れていた。
高遠を通過して仙流荘バス停の駐車場に着くやいなや雨が降り出す。いやな予感だ。12時45分に臨時便が出るというので、バス営業所の食堂で山菜天ぷらソバを食べる。伊那市営の「南アルプス林道バス」は柔軟に臨時便を出し、道中の運転手による観光ガイドもたっぷりある。北沢峠で南アルプス市営の「南アルプスバス」に乗り継ぐのだが、同じ公営バスでもこちらは臨時便対応は無く、15時30分発の定期便まで2時間近く待たされることになった。その間も雨がだんだん強くなっていく。広河原に着いた時には結構な降りになっていて、雨具着用で今夜の宿「広河原山荘」へと吊り橋を渡ることになった。さい先が悪い。
 夕食は評判のとおりワイン付きだった。豚の冷しゃぶ?にマヨネーズのかかったのがメイン。ここのところの天候のせいで宿泊客が少なく、この日も10名ほどだった。雨がどんどん強くなり、高校のワンゲル部がテントで頑張っているのが気の毒なようなほほえましいような。かつては我々もああだった…。
 「広河原山荘」は客が少ないこともあって快適だったが、難を言うなら、トイレ(水洗式)がとても窮屈なことだろう。

3年ぶりの「長衛荘」

「広河原山荘」は空いていた

「広河原山荘」の夕食


7/29(水)

広河原山荘 5:05 ― 7:20 二俣 7:30 ― 9:45 小太郎分岐点 ― 10:25 肩ノ小屋 10:55 ― 11:45 北岳山頂 11:55 ― 13:10 「北岳山荘」(泊)

 4時30分から朝食。雨は少し小降りにはなっているものの依然降り続いている。上に行ったら少しはましかもと、天気予報が外れることを祈りながら出発。ところで今回、いつもは隊長に借りていたストックを購入したのだが、小屋を出てまもなくストックのバスケットというツバのような部品が片方無くなっているのを発見。引き返して探す気力も無く、帰りに探せばいいと割り切ってしばらく歩いているうちにもう一本のも無くなる。これは気づいてすぐ探したのでなんとか回収できた。ツバを着けずに登ることにする。
 本降りの中、大樺沢を左に右に木橋や鉄橋で何度か渡り、雪渓の下端のところで二俣に着く。途中、誰かが落としたらしいツバを拾う。二俣には有名な「バイオトイレ」が建っていて、ディーゼル発電機がうなっていた。無人のようだが燃料補給などはどうしているのだろう?
 今回、天気が良ければ間ノ岳までピストンして、所用時間の短い八本歯のコル~大樺沢ルートで下山しようと考えていたのだが、昨夜、小屋で、八本歯ルートは残雪が非常に多く危険で遭難者も出ているため通行しないようにと言われた。行程の見直しが必要だ。

「広河原山荘」の朝食

二俣

二俣のバイオトイレ

 二俣からは、小太郎尾根に向かってぐんぐんと登る。一時薄日が射すこともあったが、すぐ雨になっり、またガスになったり。それでも花が多く、変化に富んで楽しい登りだ。晴れていればもっと素敵だろう。森林限界を超えて小太郎分岐点で尾根筋に乗り、「肩ノ小屋」に着いた時も天候は相変わらずで、風がかなり強くなった。濡れたザックや雨具で入るのを拒む小屋が結構あるが、この小屋は「どうぞそのままで」とおかまいなしであった。休憩と早い昼食がてら900円のラーメンを頼む。インスタントの味噌ラーメンにコンビーフと味付海苔を入れたもの。ぬるかった。
 「肩ノ小屋」から北岳への登りは強風の中。風速30m以上はあるだろう、一瞬いっちゃんが吹き倒されかける。そこら中に高山植物が可憐な姿を見せており、晴れている時よりも瑞々しく生き生きとして見える。いっちゃんはカメラをかばいながらこまめにシャッターを切っていた。山頂は雨の中、標識の前でスナップを撮るのみ。視界30m、富士山や仙丈ヶ岳などのパノラマは夢のまた夢であるが、鳳凰三山から眺めた富士山より格段に大きく見えるわけでもなし、晴れた時の景観はNHKの「日本の名峰」でゆっくり眺めたらよい、と無理に納得しようとする二人であった。

北岳山頂はガスの中

「北岳山荘」に到着

 雨は少し弱まったりやんだりだが台風並みの強風の中、気をつけながら「北岳山荘」に下る。ここでも天気のせいか宿泊客が少ない様子。シーズン中は布団1枚に3人とか聞いていたのでまずはなにより。もう今日はすることも無いので、いっちゃんはビールと焼酎を飲んで昼寝モードに入ってしまった。窓の外ではビュービューと風の唸り声がすごい。雨も強くなる。
 17時からの夕食時、今夜の宿泊客が6名と判明。それぞれ個別の部屋に入れてくれたので、豪華個室借り上げ状態だ。「北岳山荘」でこれはなかなか無い体験だろう。聞くところによると、先日の北海道トムラウシの遭難事故を受けて、30名ほどのツアーのドタキャンがあったらしい。しかしそれにしても布団1枚に3人というような時に、山荘内のトイレがいくつか故障していて使用可能な状態なのは3つしか無い(キャンパー用の別棟があるが)のでは朝のトイレ行列が凄いことになるだろう。しかも最近流行のバイオトイレなので、排泄物以外は便槽に入れられない。膝の前のダンボールの箱に使用済みのトイレット・ペーパーが山積みになるのだが、大変なことになるのではなかろうか。
 八本歯ルートの通行禁止については、今年は例年に比べて残雪が多く、雪が中で腐ってきていて、アイゼンを着けていても雪渓を踏み抜く危険があるためとの説明だった。2日ほど前に遭難者が出ているとのこと。
 食後、明日の行程を練り直して早々に布団に入る。雨風はますます激しい。

本日は貸切り!

大部屋もガラン

「北岳山荘」の夕食

7/30(木)

北岳山荘 5:50 ― 7:15 北岳山頂 7:25 ― 8:00 肩ノ小屋 8:05 ― 8:25 小太郎分岐点 ― 8:35 白根御池小屋分岐 8:45 ― 9:30 白根御池小屋 9:50 ― 12:05 広河原山荘 ― 12:10 広河原 12:20 ― (南アルプスバス) ― 12:45 北沢峠 13:00 ― (南アルプス林道バス) ― 13:50 「仙流荘」(泊)

 午前5時の朝食後出発。雨はほとんどやんでガス。ただし稜線は昨日以上の西からの強風で、ストックで突っ張らないと飛ばされそうになることもあった。視界も悪いことであるし、間ノ岳をあきらめ、予定を変更して「肩の小屋」から「白根御池小屋」方面にルートをとって下山することにした。
 北岳山頂も昨日と同様。「肩ノ小屋」にも立ち寄らず先を急ぐ。白根御池小屋分岐を過ぎてまもなく下界のほうに日が射して明るくなり、やがて雲間から鳳凰三山が姿を覗かせた。5年前に登った地蔵岳のオベリスクもちょこんと見える。しかしそのうちまた雲に隠れてしまった。ひたすら樹林帯の下り。白根御池は思ったより小さく濁っていた。「白根御池小屋」で小休止の後、しばらくは等高線沿いにトラバースし、広河原へと木の根っこがつるつる滑る樹林帯の急な下りとなる。山行の終盤はいつでもそうだが、足に疲れもきているため、つまずいたり滑って転んだりしやすい。気を引き締めて下らなければならない。

「北岳山荘」の朝食

北岳山頂はやっぱりガスの中

「肩ノ小屋」

 「広河原山荘」の近くでは昨日紛失したストックのツバを目を皿のようにして探すも見つからず、あきらめていたところ、山荘玄関横の登山届箱の前に誰かが拾って置いてくれていた。感謝感激!
 昨日と打って変わって晴れた空の下、吊り橋を渡ってバス停に急ぐ。来たときの逆ルートで戸台に戻り、予約していた「仙流荘」にチェックイン。あとは当然、露天風呂に馬刺しとビールで乾杯!

鳳凰三山

「白根御池小屋」

「広河原山荘」

見つかったツバ

鋸岳方面をバスの車窓から

なにはともあれ、お疲れさん!

7/31(金)

仙流荘 8:20 ― 9:00 伊那IC ― 12:30 JR石山駅

 ところどころ青空も見えるもののすっきりしない天気である。昨夜の天気予報ではここ一週間は曇りや雨と言っていたが、いっちゃんの話しでは、今日も朝一番のバスに乗るために登山者が列を作っていたようだ。
 朝風呂に浸かってから朝食。昨夜の夕食に引き続き完食!昼から雨との予報なので寄り道せず帰ることにする。中央道では時折小雨もあった。昼過ぎにJR石山駅に到着、解散となる。
 天気には恵まれなかったが、なかなか思い出深い山行となった。

雨上がりの朝の「仙流荘」前バス停

「仙流荘」の朝食


(カンボ)