平成22年秋合宿 蝶・常念山行



 各自の仕事の都合と、ここのところ毎年続いていた長い梅雨を警戒したこともあり、今年は9月の初旬に合宿を移した。しかし予想に反して7月の海の日以降はずっと晴天が続き、例年より気温が高いものの、1ヶ月以上にわたり山行日和に恵まれていたようで判断ミスであった。
 今回はまた3人での山行となった。プランは、蝶ヶ岳から常念岳・大天井岳を経て燕岳に縦走するというものである。マイカー登山なのでクルマに戻って来る必要があり、毎度コース選定には苦慮するのだが、今回は、一泊目の「ほりで-ゆ~四季の郷」が下山までクルマを駐車させてくれるとのことなので、中房温泉に下山して国民宿舎「有明莊」に泊まった翌日にタクシーで「ほりで-ゆ~四季の郷」にクルマをとりに戻ることにした。このほかにも、JR穂高駅近くの無料駐車場に置いておくとか、「南安タクシー」に預かってもらってタクシーで入山するなどもできるようである。
沖縄付近に弱い台風9号が発生していたが、朝鮮半島から北に移動して、旺盛な高気圧に覆われている日本列島には近づかないとの予報なので、安心して出発することにした。

  (地図は、山と渓谷社「ヤマケイ・オンライン」より引用・加工させていただきました)

9/5(日)

JR石山駅 7:00 ― 10:45 豊科IC ― (買い出し・昼食) ― 13:15 ほりで-ゆ~四季の郷(泊)

 午前7時にJR石山駅を出発。連日の猛暑日の例に洩れず朝から暑い。今回は、長らくマイカー山行の足としてお世話になった「人民解放軍号(通称:ラシーン)」の後継にいっちゃんが買い替えた日産Cubeである。排気量は同じなのだが、軽量化や最新の設計技術のおかげか、よりパワフルでレスポンスがいい。いっちゃんと途中、虎渓山SAで運転を交代して豊科ICを目指す。
 豊科ICで長野道を下り、IC近くの「西友」に寄って山行の食糧等を購入する。いつもこのように入山の直前に仕込みをしているのだが、「西友」の品揃えには独特のクセがあり、全国ブランドのどこでも売っている商品なのに置かれていないものがいくつもあった。仕方なく似たようなもので揃えたのだが、H隊長が時計の電池を交換したいと言いだすも「西友」ではやっていないようなので、「サティ」に行き、電池交換の間に食品売場を覗いてみると「西友」に無かった商品がみな当たり前に置いてある。最初から「サティ」に来ればよかったなと悔やんだが後の祭りであった。
昼食をとった後、今夜の宿泊場所である安曇野市営の公共の宿「ほりで-ゆ~四季の郷」に向かったが、チックインには早すぎたので時間潰しに、近くにある「ホテル アンビエント安曇野」というのを見学に行くことにした。「有明莊」に予約を入れた後にネットで見つけたリゾートホテルで、わりと良さそうなので、中房温泉に下山後は部屋にトイレも無い「有明莊」はパスしてタクシーでこのホテルに直行して泊まるというのもありかなと思ったからである。しかし実際に訪ねてみるとややさびれた様子だったのでやめることにした。一ノ沢を拠点に常念岳に登る人にはここのほうが便利かもしれない。結局、「有明莊」よりも「ほりで-ゆ~四季の郷」のほうが快適には違いないので、最終日もここに泊まることにして「有明莊」はキャンセルした。
14:30にチェックインして、あとは風呂に入ったり、テレビを見たりで過ごす。「ほりで-ゆ~四季の郷」は、以前にテレビの旅番組で取り上げられていたのを憶えていて今回の宿に選んだのだが、公共の宿なのに玄関に出迎えがあったり、荷物を係員が部屋まで運んでくれたりとサービスがホテル並みである。部屋は広くゆったりとした作り。食事も味、品数、量とも申し分なく、またほとんどの皿が一度に用意されるのはでなく、ゆっくりとお品書きの順番に運ばれてくるので、ゆったりとした食事の時を過ごすことができた。風呂は、立ち寄り湯に開放されている1階の大浴場のほかに3階に宿泊客専用の大浴場があり、こちらは空いていてゆっくりと浸かることができた。
 夕方、一時どしゃぶりの雨になったが、夕食の頃には止んでいた。いっちゃんは食前に「いいちこ」を飲んでいて、食事中にも生ビールのお代わりをしていたせいか、食後に1階の大浴場の露天風呂に入ると言っていたにもかかわらず、部屋に戻ってまもなく高いびきを立てていた。

新しいCube

「ほりで-ゆ~四季の郷」

これからいろいろ出て来る


9/6(月)

ほりで-ゆ~四季の郷 8:00 ―(タクシー)― 8:20 三股駐車場 8:25 ― 8:40 三股登山口 ― 9:00 力水 9:05 ― 10:30 まめうち平 10:35 ― 13:15 最終ベンチ― 13:35 大滝山分岐 13:45― 14:00 蝶ヶ岳山頂 14:15― 13:20 「蝶ヶ岳ヒュッテ」(泊)

 朝、部屋の窓から見える常念岳は堂々としていた。今日も晴天に恵まれそうだ。7時から朝食。朝食は、夕食と言っても通るほど品数があり、さらにバイキングで選べる料理もある。部屋、風呂、料理、接客サービスの良さを考えると1万円ちょっとでこの内容はとてもお得だと思う、
 8時、昨日フロントに頼んでおいてもらったタクシーが来たので乗り込んで出発。ここでも係員が玄関の外まで見送ってくれた。「ほりで-ゆ~四季の郷」からタクシーで入れる限界の三股駐車場までは林道を20分ほどで、料金は\3,100だった。南安タクシーは迎車料金はとらないらしい。

朝の常念岳

「ほりで-ゆ~」の朝食

三股の駐車場(クルマはここまで)

タクシーを降りて靴紐をしっかりと締め、いざ歩き始める。途中、水場の「力水」や「まめうち平」といった以外にとくにポイントは無く、よく整備された、比較的開けて明るい樹林帯の登りをひたすら行く。「力水」から少し行ったあたりで、いつものとおり先頭を行っていたいっちゃんが汗を拭くから先に行ってくれと言うので、H隊長を先頭に先行する。ずっと残業続きでトレーニングもなにもできていないH隊長のことを考え、今日の登りは基本的に30分ピッチにしたのだが、結局、蝶ヶ岳の山頂まで追いついてこなかった。

三股登山口

力水

こんなハシゴもたまにある

まめうち平

最終ベンチ

大滝山分岐

 蝶ヶ岳山頂からの槍穂のスカイラインはやはり圧巻だ。上空に雲があって山肌にあまり光があたらずコントラストがいまひとつであるものの、下は横尾付近の梓川から稜線まで全てが見える。槍ヶ岳も乗鞍も見える。カメラで広角一杯にしても収まらないので、右から左に流しながら撮るしかない。動画も撮ってみた。写真撮影が終わった頃、いっちゃんが登ってきたので、ヒュッテにチェックインする。

「蝶ヶ岳ヒュッテ」

槍穂のパノラマ

槍が見える!

涸沢も目の前

槍穂をバックに

常念岳への縦走路

動画(蝶ヶ岳山頂より)>

 部屋に入って行動食の昼食を食べたりしている間に雲が下がってきたようで、しばらくして展望台に行った時には槍穂の稜線はほとんど隠れていた。夕方からはガスか霧雨が横殴りに吹きつけるようになる。
 5時30分から夕食。こぢんまりした食堂で、トンカツとご飯、みそ汁。部屋は蚕棚方式で、平日であることもあって布団1枚に1人であった。トイレは今流行のバイオトイレで、3基しかない館内のはなぜか午後6時30分以降しか使えない。それまでの時間は外の便所棟を使う。便所棟は蠅がブンブンと飛び回っていた。

ヒュッテの室内

「蝶ヶ岳ヒュッテ」の夕食

「蝶ヶ岳ヒュッテ」の食堂

 7時のNHKニュースの天気予報では、心配いらないはずの台風9号が急に進路を変えて日本列島に近づいており、富山湾あたりに上陸してこちらに向かいそうだということになっている。中心気圧はたいしたことは無いのだが、影響で各地に大雨を降らせているとのこと。午後から風が強くなって来ているのは3,000メートルの山岳地帯では平地よりも早く影響が出るためであろう。このままでは明後日あたり、予定では「大天荘」から燕岳に向けての行程で強い風雨に見舞われる可能性が高い。他の宿泊客にも案じる声が多かった。昨年の雨で散々だった北岳山行の想い出がよみがえる。状況を見て常念岳から下山することを考える。夜、外に出てみると、雲がもっと下がったのか槍穂の稜線のシルエットに北穂と奥穂の小屋の灯りが並んで見えていた。この小屋は夜間も必要な場所には最低限の照明を点けているので、トイレに行ったりにヘッドランプは不要だった。
 夜間、強風の音で何度か目が覚める。星は見える。
9/7(火)

蝶ヶ岳ヒュッテ 6:00 ― 6:25 横尾分岐 ― 10:25 常念岳山頂 11:00 ― 11:50 常念小屋(常念乗越)12:15 ― 13:00 最終水場 13:05 ― 13:50 笠原沢出合 14:00 ― 15:05 大滝ベンチ ― 15:45 一ノ沢登山口(ヒエ平) ―(タクシー)― 16:35 ほりで-ゆ~四季の郷(泊)

 午前5時30分から朝食。晴れてはいるが風かかなり強い。6時出発。強風で吹き飛ばされそうになるほどの中をとりあえず常念岳に向かう。上高地に下りる人が多いのか、こちらに向かう人は少ない。風と、雲で陽射しが遮られていることもあって寒く、雨具の上着を風除けに着用する。槍穂の稜線も厚い雲に覆われていて被写体にはならない。一方、東の方は富士山も見え、安曇野方面の下界は暑そうな陽射しに輝いている。

「蝶ヶ岳ヒュッテ」の朝食

槍穂の稜線は雲の中

途中で蝶ヶ岳を振り返る

樹林帯の中を登ったり下ったりして、ずっとすぐそこに見えていながらなかなか近づかなかった常念岳の岩稜をひたすら黙々と登る。あいかわらず西からの風が強く、寒いので小休止は岩陰に入ってとる。
当初の予定どおり燕岳に向かっても、明日の大天井岳以降の天候は絶望的な状況になってきたため、常念乗越から一ノ沢に下山することに決心した。常念岳の山頂から「ほりで-ゆ~四季の郷」に電話を入れたところ、明日の宿泊を今日に振り替えOKということになったので、入山時に乗った南安タクシーに一ノ沢登山口まで迎えを頼もうと電話するも留守電になっていたためあらためて常念小屋から予約を入れることにする。ちなみに蝶・常念岳付近はauの携帯はつながりにくい。蝶ヶ岳では小屋の北にある展望台の付近でつながることもあったが常念岳では全くの圏外であった。
 常念岳山頂から常念乗越まで下る途中で、大学生くらいの若者が勢いよく登ってくるのにすれ違った。そういえば昔、学生時代にこのルートを通ったとき、常念岳の頂上でゆっくりしていたら雷が鳴り出し、背中の背負子の金属部が帯電してジージーと音を立てだしたため、怖くなって常念小屋まで20分ほどで駆け下りたのだった。今はもう動体視力も脚力も衰えてとてもそんな芸当は出来ないが、青年を見ていると、なにか昔の自分と出くわしたようで懐かしいようなほろ苦いような気持ちになった。

常念岳への快適な縦走

安曇野を俯瞰する

遠く富士山を望む

岩稜になってくる

縦走にアップダウンはつきもの

常念岳山頂

「常念小屋」と横通岳

「常念小屋」

 「常念小屋」で電話代100円を払ってタクシーの予約を入れてもらう。地図のコースタイムでは午後3時半頃には登山口に到着できそうなので余裕をみて4時に向かえに来てもらうことにする。下山にかかってからまもなくポツリポツリと雨が降りかけたり止んだりし始めたが雨具を出すほどではない。時々小さな沢で小休止しながら、ひたすら沢沿いに樹林帯を下る。常念岳の登りあたりからH隊長の足が目に見えて重くなってきていたのだが、下りに入ってからコースタイムが地図のそれをオーバーするようになった。このままではタクシーの待つ4時までに下山できない可能性も出てきたので、とりあえずいっちゃんにH隊長をまかせて先に下ることにした。3時45分に登山口の駐車場に着くとすでにタクシーが待っていた。運転手さんと世間話をしながら2人が来るのを待つ。4時10分には下りて来たので、おりから本格的に降り出した雨の中をタクシーで快適に「ほりで-ゆ~四季の郷」に向かう。タクシー代は\4,400だった。

これより下山(常念乗越)

高巻き

一ノ沢(ヒエ平)登山口

 「ほりで-ゆ~四季の郷」の今度の部屋は同じ料金でより大きなバス付きの部屋になっており、連泊扱いということでか夕食時のビールのサービスまで付いていた。早速、風呂に入って汗を流す。
夕食は連泊扱いでメニューが異なっていたが、やはり質・量ともに満足できる内容だった。食後、一階の露天風呂に入る。晴れた昼間なら常念岳が見えるらしい。天気予報では、台風はどんどん長野県に近づいているので、下山の判断は正しかったと納得。雨が降り続いている。

なにはともあれ乾杯!

これから色々出てきます

9/8(水)

ほりで-ゆ~四季の郷 9:05 ― 9:27 豊科IC ― 13:00 瀬田東IC

 昨晩からの雨がずっと降り続いている。今朝は一番遅い8時からの朝食にしてもらい、9時過ぎに帰路についた。
 天気予報の解説によると、台風9号は勢力が弱いため、敦賀付近に上陸した後、北アルプスに遮られて南側に回り込んだそうで、名神の関ヶ原付近を走行中に、長浜付近にいる台風の目を目撃することになる。なんのことはない、台風を避けよう避けようとして、真正面から台風に立ち向かう結果になったわけである。
 台風の雨なので寄り道することもなく昼過ぎに瀬田東ICで下りる。石山の王将で昼食を摂った後、JR石山駅で解散した。今回も、眺望がウリのコースという点で天気にはいまひとつ恵まれなかったが、まずまず楽しい山行であった。

「ほりで-ゆ~」の朝食

やはり本格的な雨に


(カンボ)