<お話>
主人公、沢村司はわりと孤高。家族の温もりも知らぬまま世間の冷たい風に当たってきたせいか少しばかり排他的な人間に。
そんなある日、路地裏で一人の行き倒れの少女拾った。
チャイニーズ。
言葉も通じない。
司の提唱するところの「最も関わり合いになってはならない」タイプ。だが司はその少女……春花と同居生活をする羽目になってしまう。それをきっかけに、司の周囲に集まる問題ありげな人々。
彼らの共通点は…家族の欠落。
やがてこの集団は余儀なく共同生活を強いられていく。(以上メーカーサイトより、画像嫌い(笑))
「家族計画」:各個人が抱える問題を「家族」という形態を取ることにより各個撃破する相互互助計画 <プレイ状況>
ヒロイン5人、フルコンプ。1プレイ10時間前後。二回目以降はスキップして4時間程度でしょうか。 <システム>
いつものD.O.です。シンプルながら必要なものは完備。バックログ(ホイール対応)、既読スキップ(選択後もスキップ可能)、自動送り、など不満なし。ただ、saveが27個とボリューム比べて少なく、クリアデータも含めた一括管理になっているため、ヒロイン毎の名シーンを保存しようとかすると使いづらいです。また、他のアプリケーションを立ち上げると動作が止まるのはこれくらい長いゲームだと悲しいです。 <ゲームデザイン>
主人公の名前は「司」で固定。極めて一般的なノベルタイプのAVGです。要所要所で選択肢を選びます。選択肢によってシナリオが変化することはほとんどなく、好感度を管理して、終盤に個別ルートへと分岐させる役割を担っているようです。
長い上に終盤に入るまで共通イベントがあるためかなり苦痛。スキップはありますが、パート単位で把握しているのか、個別ルートに入ると既読のテキストも飛ばさなくなることもしばしば。 <音楽>
主題歌だけでなくBGMもI'veが担当。CD-DAで26曲、うち4曲はオープニングとエンディングのショート・ロングバージョンに当てられています。ピアノ系の曲が多く若干印象が弱くなっているような。ただ、オープニングの「同じ空の下で」はバリエーションも二曲あり、歌もいいです。 <音声>
音声のないゲームになぜこの項目を設けているのか自分でも謎ですが、正直この手のシナリオ最重視のゲームに音声は必要ないかも。テンポ悪くなりそうだし、ただでさえ長いし(苦笑)。 <グラフィック>
原画は福永ユミさん。『微熱情熱』から変わりまくってますね(汗)。この方の絵は好きなんですが、薄目の彩色がイマイチ。イベントCGはバリエーション抜きで、年少組(末莉・春花)が22枚ずつ、準・青葉が13枚、真純10枚、その他8枚、絵的には久美景独身20歳と小夜たんが一番可愛いような気がします(爆)。
立ち絵の変化、背景なども問題ないレベル。ただ、楓たんのCGが立ち絵すら存在しないのは銃殺もの(ぉ。福永さんの日記を読むと描かれてはいるので、そのうちお目にかかる機会があるかもしれません(つうか、またDVD版?)。 <シナリオ>
小気味良いテキスト、疑似家族が絆を深めていく過程の丁寧な描写、起伏に富み泣けるイベントの数々、印象的なエピローグ、ヒロインによって極端な出来不出来のないシナリオ。
間違いなく今年のナンバー1候補の筆頭に挙げられます。
『星ぷら』は未プレイですが、『加奈』とこの作品で山田一さんは私的シナリオライターランキングのTOP5にランクインしました(笑)。
テキストは『ONE』辺りから始まった「泣きゲー」の集大成とでも言えるほど完成度が高いと思います。文章が上手い人なら他にもいるのでしょう。ただエロゲにおいて名文というのは諸刃の剣であって、やたらな長文はむしろ読みづらいだけだったりします。その点、この作品は老舗だけあってよく練られたテキストです。メッセージウインドウに表示される文章の8割方は1行で終わります。無駄な修飾を省いてキビキビとした読みやすいテキストになっています。
また、ちょっと長いな〜と思うと決めぜりふっぽいものだったり、5行すべてが表示されるのは意図的な冗長なしゃべりをしているだったりとか、テキストの表示自体がある種の演出になっているのも素晴らしいです。
司(主人公)は子供の頃のトラウマで他人を拒絶し、孤高を保とうとする傾向があって、末莉シナリオなんかではそれが優柔不断に見えて(末莉が愛おしくてたまらない自分と乖離しすぎて(爆))イライラさせれる事も。ただ、ヒロイン達の目から見るとそんなこともないみたいですね。例えば真純の下のセリフ↓なんかは司についてもっともよく表現しているのかも知れません。
「真剣に真剣に考えたら……そう簡単に愛してるなんて言えない。
自分に、相手を幸せにする力も資格もないって、そういう悩み方ができる人もいるんだから!」
シナリオ、「家族計画」が発令するまでがプロローグ、疑似家族が絆を深め、危機に追いつめられていくのが中盤まで、終盤は個別ルートに入って各ヒロインの「本当の」家族のはなしが明らかにされ、そこからエピローグで「新しい家族」が生まれる、そんな構成です。中盤までがコメディタッチで終盤シリアスに、というのはありがちですが、『秋桜の空に』とは逆に「笑い」が失敗で(年代物のネタとか、時事ネタは如何なものかと思われ)、「泣き」が成功してます。
「家族」がテーマであるために「恋愛」要素は薄くなってます。というか、女5人で青葉以外の全員が司に好意を持っているというのは、かなり危うい均衡で、なまじ「恋愛」方面にストーリーが進んでしまうとあっという間に崩壊、内ゲバとなりそうな関係。そういう意味では中盤以降外部からの脅威が訪れるというのはこのゲームには必要不可欠な要素だったのかも知れません。
家族がテーマというとKEYの麻枝さんの一連の作品(特に『AIR』と『KANON』の真琴シナリオ)が想起されますが、個人的にはアレよりも上手く書かれていると思います。つうか、あちらはなんというか宗教っぽいし(爆)。登場人物の全員が家族問題に傷つき、裏切られ、ある種の歪んだ理想を持ち、主人公自身も家族という制度に違和感を感じているため単に家族マンセーな礼賛シナリオになっていないですし、そういった連中が「高屋敷家」に戻ってくるエンディングは家族嫌いな私でも感動しました。 <その他のヒロイン>
青葉(長女)毒舌で他人を寄せ付けないタイプ。シナリオはこれがピカイチでしょう。「失われた時を求めて」というか思い出探しのミステリーっぽいシナリオです。青葉の過去と司の過去がシンクロするように明らかにされていく終盤は目が離せません。末莉の対極にあるヒロインということで、お互いがそれぞれのシナリオで重要な役割を担ってます。末莉シナリオの終盤なんかは凛々しくて好きです(笑)。
準(次女)、司ともっとも分かり合っているヒロイン。カ○リーメイトしか食べない。この娘のシナリオは肝心のご本人がほとんど登場しません。代わりに久美景独身20歳と小夜たんが大活躍します。エピローグが泣けます。山田一さんは小道具の使い方が上手い!
春花(三女)、なにやらいかがわしいルートを通って日本にやってきたチャイナ娘。ひたすら純真無垢です。テーマは母親探し。終盤ハラハラドキドキの銃撃戦の後、ああ来ますか(謎)。緊張と緩和、上手いですね。泣ける度NO.2です(笑)。
真純(母)、キャラクター的にもシナリオ的にもなんだかなーつう感じ。一緒にいるうちにずるずると…といった感じに溢れています(笑)。ただやっぱり昔の男と別れるシーンなんかはよく書けています。
寛(父)、ヒロインではないのですが、テーマが「家族」である以上この男のストーリーももう少し書かれていたらな、と思います。アナザーストーリーで真純視点から「本当の家族」とのお話をフォローするとか…。他にも久美景や楓は攻略可能なヒロインだったら嬉しかったんだけど…(涙)。 <Hシーン>
回想モードで見ると末莉4、春花3、準2で青葉と真純が各1回です。末莉の3回は途中で気絶してしまってというオチなので実際は長い1回と考えるべき。また春花とのHシーンはプロローグの2種類が他より多いだけ、準のは回想シーンで1回、と寂しい限り。描写も薄く、山田一さんはエロテキストに問題有りだと思います。
ただ、末莉のHシーンは極めて背徳感が強く萌えます(爆)。いや、マジで、ロリィです(笑)。エロくはないけれど妄想できるというか(爆死)。さすが魔性の女。
また過去が過去なのでヒロインの処女率は低いです。これで末莉が…だったらちょっと鬱だったかも(笑)。 <総合評価>
久しぶりにエロゲで激しく泣きました。慟哭モードの9点(爆)。
これを書くのに確認する必要が生じたので再度立ち上げたのですが、思わず末莉シナリオを再プレイしてしまいました。泣きゲースキーな方はこんな感想を読んでいる暇があったら買いに逝きましょう(笑)。
「家族」というテーマに二の足を踏んでいる方、『AIR』とは違います(爆)、騙されたと思ってやりましょう>別に『AIR』を否定しているわけではありません、念のため。
広崎悠意さんがいなくなってから老舗の中ではイマイチ存在感の薄かったD.O.ですが、山田一さん効果と外部スタッフの選定の良さから、ここのところ再浮上してますね。一層のことファンクラブ入ろうかな(笑)。 |