フラワーズ(アアル/クワイア
<DATA>
妹ヒロイン 音声 炉系ヒロイン
鳴戸らみか 完全フルボイス 九尾みりん

<各種属性>
寝取られ×;修羅場△;処女△;凌辱×
萌え☆☆☆ H☆☆☆ 物語性☆☆
はじめに
<おはなし>
メーカーサイトの作品紹介で「Story」を読むと「音楽」がテーマの作品のようですが、音楽をやろうと、意気込んでベースを買った主人公(鳴登海)がその帰りに年上の女性(三ノ瀬ななせ)に逆ナンパ(?)されて結局外泊することになったり、いろいろ事件が起きているうちにその辺りはなおざりにされがちかも(笑)。
ところで、クワイアHPのFlashって何とかならないのでしょうか? 重くて非常に不愉快です。
<攻略とか進捗状況とか>
アアルサイトで完全攻略されています。全8エンドですが、大まかに分類すると、ななせ・すなおルート、さと子・るなルート、みりんルート、「中学生日記」という風になり、攻略も各ルートは最後まで共通しているので、セーブデータを使い回せばそれほど時間はかからないでしょう。どちらにしても全エンド攻略後の「中学生日記」がこの作品の肝ですのでらみかファンは頑張りましょう。
演出でウエイトを目一杯使用しているので、初回プレイは時間がかかりますが、スキップの既読判別がしっかりしていて、スピードも早いので2周目以降が苦痛になることはないでしょう(初回と二回目の選択肢でsaveしておくこと)。
<システム>
CD2枚、HDD600MB(推奨1.2GB)、800×600、CDレスプレイ可。旧マシン(Pen3 500MHz、128MB、RADEON9000、Win98SE)ということで推奨環境ぎりぎりでプレイしましたが、動作に支障を感じるようなことはありませんでした。
回想モード完備(エンド回想あり)、未読・既読スキップあり、自動プレイ、音声のキャラ毎のON・OFF、キーボード仕様可、など必要な機能は全て揃っていますが、なぜか私の環境では自動プレイが機能してくれませんでした。あと、アンチエイリアス機能付いているのに初期設定はオフになっています、要注意。
<ゲームデザイン>
オーソドックスなノベルです。選択肢も多くないですし、ゲーム性はないですね。
<グラフィック>
原画、ゆきみだいふくさん。非常にクセがあって、正直求心力に欠ける絵でしょうね。立ち絵の大きさも何段階か使用されているのですが、慣れないうちは違和感が拭えません。
ヒロインの感情表現のために表情変化の演出が多用されているますが、このキャラデザで画面いっぱい使って変化を付けてもいまいちクルものがありません。表情変化を多用しての演出はQ-Xなどが得意とするところで、キャラ萌え目的に使われますが、この作品ではむしろ言葉を伴わない心理描写に特化している感じです。その面から見れば成功していると思います。
背景は枚数、クオリティとも問題ありません。ライターの鎌倉(作品中は「和澤」となっている)に対する愛ゆえなのか、学校内、自宅内の背景よりも街中の背景の方が上手く描けているような……(笑)。
<音楽>
BGMはKenny Kさん。今まで知らなかったんですがクワイアは『ヴェドゴニア』とか『魔法少女アイ2』のサントラを担当しているそうで、全体的なクオリティは高いです。鎌倉という設定故なのか、ジャズ系のしっとりした曲が作品にぴったり嵌っています。「フィナンシェ」とか「RE:FLOWERS」とか心地良いですね。全20曲。
歌はOPのみで加藤ひさえさん。デモとしてDLできます。こちらも良い曲だと思います。フルコーラスバージョンが欲しいところですが、12/28発売予定のサントラに収録予定らしいです>なので冬の祭典には行かざるえない(ぉ。
<シナリオ>
ライターは沢村奈唯さん。少女マンガ・レディコミ的(?)な作品の雰囲気とか、甘味系にこだわるところとか、演出の繊細さとか、そんなところからメインのスタッフは女性だろう決めつけていたのですが、意外にも男性とか(ぉ。
<攻略>で述べたように、おもなルートは年上お姉さんキャラ、ななせ・すなおとエロエロ〜な関係になるレディコミ風のルートと、るな・さと子純愛系ルート、みりんSFルート(?)。話の方向性は全く異なるにも関わらずそれほど違和感を感じないのは、主人公の性格と舞台設定がしっかりしているためか。

主人公はエロゲにありがちな優柔不断で流されがちなタイプですが、一方で自分の発言には責任をとるタイプ。以下作品よりの引用ですが、主人公の心理描写も優れているし、テキスト運びも申し分ないです(ただ漢字の使い方は標準から外れているけど)。

(注;ななせベッタリなすなおに対して……)
「……飼い猫?」
あ。
しまった。
頭に
ぱっ
と、思い浮かんだイメージが
ぽろっ
と口から……
「ん〜〜〜〜……」
すなおは唸ってしまう
「あ、ごめん。バカにしたって訳じゃなくって。なんかそんな可愛らしいイメージが、って事で」
なんとか取り繕おうとする。
みっともないな、なんて思ってもいるけど
それは言わば、罰。
失礼な事を言ってしまった訳だから仕方ない。


舞台設定についてですが、まず、登場人物の有閑階級(死語)っぷりが凄いです(笑)。ななせは売れっ子小説家、すなおは地方の町会議員の娘、主人公の父は大学教授、みりんは芸術家一家で父親はイタリアへ単身赴任中、さと子は忘れたけどやっぱり金持ちの娘で、特に言及がなかったのはるなだけ。
こんなプチブル連が鎌倉に住んでいて、それが物語になる訳ですから、何が起きてもマターリ、のんびりで「大きな物語」にはなりっこありません。つーか、鎌倉に対する間違ったイメージが……。まあ、別にエロゲをマルチカルチュラリズムの視点から批判しても意味がないのでやめておきます。つーか、このマターリ感がこの作品の最大の特徴で、これが合うか合わないかが、作品の評価とリンクしているような。

物語についてはネタバレ気味になるので、言及は軽めに。つーか、日常的な雰囲気を楽む作品で、合う・合わないが大きいと思うのでとりあえず体験版をプレイすることを薦めます。
デモを見ると「るな」の登場シーンが非常に印象的で、公式設定でもメインヒロインらしいのですが、シナリオ的には少し寂しいですね。結局、有閑階級ゆえの上品さが表に出てしまったためか、さと子との確執が書き切れていないですし(当方修羅場好き)、「音楽」好きというところもスポイルされてしまっているし……、微妙。
さと子は重要なヒロインなのですが(個人的にもらみかの次に好き)、シナリオは主要ルートの支流っぽくなっていて不遇(涙)。
みりんルートはアメリカのホームコメディのパロディっぽいところが全く面白くない(そもそもホームコメディ自体面白いと思ったことないし)のですが、みりんが毒を吐いたり、メタっぽい発言をするのが好き(そこらも含めてホームコメディなのかも知れないが)。
とはいえ、一番の名場面はすなおと父親との東京での同居生活でしょうね。老いた父が兄に連れられて実家に帰っていき、すなおは鎌倉に戻る、本編とはほとんど関係ないのに味があって印象に残るシナリオでした。
<Hシーン>
全部で13シーン。ななせ5,すなお3、さと子2、るな1、みりん1、ななせ&すなお1という内訳。レディコミ的ノリのななせ・すなおルートにHシーンが集中しているので、この配分は致し方ないか。しかし、おそらくTRUE系に近いさと子・るなルートにHシーンがないというのは如何なものか。いろいろ型破りなところの多い作品ではありますが、年上キャラがエロ担当というのは微妙に伝統的かも(笑)。
フェラシーン、チュパ音はるな以外の全員にありました(らみかはHシーン自体ありません、中学3年ですから(笑))。こちらもやはりエロ担当が目立っています(笑)。ただ、シーン自体で印象に残っているのはなぜかみりんですね。猫のクセに雪だるまというのが良かった(謎)。
声について
三ノ瀬ななせ、玲樹菜:春瀬みき
川原すなお、州来美石:冬樹みずほ
巣鴨さと子:松永雪希
九尾みりん:夏川菜々美
小川るな:上戸琉
鳴登らみか:香月
エリカ、母親:秋月ミチル

キャストは上記の通り(敬称略)。春夏秋冬メンバーが勢揃いしています。冬樹みずほさんが微妙にがさつな田舎者キャラ(すなお)を好演していますが、春瀬みきさんの二役が秀逸。年上天然系と炉キャラを見事に演じ分けています。つーか、玲樹菜たん攻略させろ(ぉ。友情出演(?)した秋月ミチルさんを含めて演技面で問題になるようなところはありませんでした。
妹について
この作品の購入動機がこれ。どこぞやのサイトで重度シスコンの主人公、とか紹介されていたので、使命感をくすぐられました。で、その主人公ですが、冒頭いきなりヒロインに「シスコン」呼ばわりされています。昼休みにはかならずメールを入れ、外泊した翌日にはおみやげを買って帰るのも忘れないというシスコンっぷり(笑)。妹のらみかも兄に負けないくらいのブラコンっぷりで、ブラコンぶりを揶揄されて親友とケンカしたり……。平日の朝の会話がこんな(↓)なのは如何なものかと(苦笑)。
「……おねだりしたら、おにいちゃんは言ってくれるかなぁ?」
「ん? 何を?」
「……愛してるって、言って、って……」
「いつも言っていない?」
「言ってる。けど。その」
「ま、いつも言ってる事だから」
「うん……」
「だから、今更、口にするのに躊躇なんかしないのでした」
「え?」
「愛してるよ、らみか」
「おにいちゃん……」
「らみかは?」
「ん……えっと……愛してる……」
「ありがとう」
また、この作品で重要なのは主人公が自分の精神形成の主要部分を妹に負っているということ(笑)。
妹の好きなTV番組を一緒に見て、(たぶん)妹から「りぼん」を借りて読んで、妹の好きな甘味屋に行き、妹の好きな紅茶を飲み、ケーキを食べる。
文化的なインフラ(?)を共有しているからエロゲ的ハーレム状態になっても女の子たちの中に違和感がなくとけ込める。ディテールがしっかりしているので、主人公の置かれた状況と言動に説得力がある。だから逆に「なんでそんなこと知ってるの?」と聞かれてシスコンっぷりを露呈するとことになるわけですが(笑)。
何度もいうようですが、実妹・中3ということで当然攻略は出来ません(涙)。ですが、そんな妹スキーのための補完シナリオが全エンド攻略後に見られる「中学生日記」です。さと子の壊れぶりも見物ですが、やはりらみかがいじらしくて可愛いです(『パティにゃん』のお返しCD内の茉理シナリオも同じような趣があって良かった)。ちなみにライターさんにはリアルで妹がいるらしいです。しかも二人?(爆)
おわりに
<鎌倉>
「文人墨客に愛された鎌倉」、「猫」なのに大佛次郎ネタはなし? いや、ど〜でも良いのですが。
どうでもいいついでにもう一つ。ヒロインが涙を流して…という構図は『ONE』に限らずエンディングに多用されていますが、まさか主人公が泣き出す絵でエンディングを迎えるとは思いませんでした。エロゲ史上に残る迷シーンかも?(笑)

<総合評価>
戦線の中に埋もれたままでは勿体ないと思う、7点
当初この作品の紹介をみて『花ものがたり・夏』という遠い昔のエロゲを思い出しました。確か女性スタッフだけでつくられたかなりトンデモエロゲで、未だトラウマになっています。それと雰囲気的に似ていたので完全に購入対象から外していたのですが、マイナーながらも良作だと褒めている人が何人かいたので、眉唾ながらもやってみることに。
これを9/26戦線に埋もれたままにしておくのは勿体ないということで、布教モードに入っています(だから微妙に過大評価しているかも)。
思えば『たいせつなうた』の感想を書いたときも全くのマイナーゲーで、現在のようになるとは夢にも思わなかったですね。この作品ももう少し報われても良いかと……。
TOPへ戻る