米国のアマチュア無線制度の概要

 UpDate2008/01/16

1.はじめに

 

このページは、これから米国でアマチュア無線を楽しもうとする方を対象に免許取得のヒントをまとめたものですので、説明の不足する部分については各自でFCCARRLなどのホームページで確認をお願いします。

 

2.免許の適用範囲

 

 アラスカやハワイを含む50州の他、グアム・サイパン・プエルトリコなどの米国の領土でアマチュア無線を行うには当然ですが、米国の法律に基づいた無線局の免許が必要です。日本の総合通信局に相当するのがFCCで、実際に免許の発給などを行っています。

 

3.Station licenseの種類

 

 日本では無線局を操作するための無線従事者免許証と無線局が電波を出すための無線局免許状の両方が必要です。米国でも同様に、前者がan operator license、後者がa station licenseで、ULSと呼ばれるFCCのデータベースに登録され、インターネット上でも全ての情報が公開されています。

 

 Station licenseには次の4種類があります;

  (1)An operator/primary station license

  (2)A club station license

  (3)A military recreation station license

  (4)A RACES station license

 

An operator/primary station licenseは個人に1枚だけ発給される免許で、1枚の免許にoperator licenseprimary station licenseの2つの免許事項が記載されています。Operator licenseとしては無線従事者としての資格(権限)が書かれており、無線局のコントロール・オペレータとなることが許可されます。また、primary station licenseとしては免許人が郵便を受け取れる住所(必ずしも住んでいるとは限らない)とコールサインが書かれており、免許人の物理的なコントロール下でFCC規則に基づく範囲で全ての無線機器の運用が認められます(日本以外の先進国の多くと同様に、落成検査や変更検査はもちろんのこと、技術基準適合証明(技適)や保証認定などもなしに個人の責任で自由に運用できます)。

 

 Club station licenseFCC規則に基づくクラブに発給されるもので、実際にはクラブから委託されたoperator license所持者(個人)がclub trusteeとして免許されます。

 

4.Operator licenseの種類

 

 2000年4月15日に大きな制度変更があり、実技試験(CW)の速度を5wpmに統一、学科試験(筆記)を5種類から3種類へ変更、そしてOperator licenseは6種類から3種類に変わっています。ただ、日本なら経過措置やみなし措置で古い資格は新しい資格名称になるのですが、米国ではgrandfather(お祖父さん)資格として名称も操作範囲も変わらずに残っており、再免許も可能です。資格の種類を減らして事務処理軽減することも目的にあったようで、grandfather資格については単に新たな試験をやらなくなった、と考えた方が理にかなっているかもしれません。

 

さらに、2006年2月23日からは実技試験のCWが廃止となりました。

従って、CWの試験を経ることなく上級に挑戦できるようになりましたし、CWでの運用も従前から許可されています。

 

 

資格と操作範囲

変更前の資格

操作範囲

変更後(現在)の資格

Novice

ノビスバンドでの操作

 

Technician

ノビスバンドの全てと50MHz以上の全ての操作

Technician

Technician Plus

ノビスバンドの全てと50MHz以上の全ての操作

TechnicianCW合格者)

General

AdvancedAmateur Extraだけの周波数を除いた全ての操作

General

Advanced

Amateur Extraだけの周波数を除いた全ての操作

 

Amateur Extra

全ての操作

Amateur Extra


 

5.相互認証について

 

米国は他国との相互認証を最初に始めた国の一つで、70を超える国と相互認証を行っているのほか、CEPT(ヨーロッパ会議)やIARP(アメリカ諸国コンベンションの国際アマチュア無線許可)に加盟していますので、これらの国の免許を持っている自国の人(免許を発行した国の国籍を持っている人、という意味)は事前の許可を得ることなく米国内でアマチュア無線の運用ができます。

 

操作範囲については、その人が自国で免許されている範囲でかつAmateur Extraの範囲を超えないことが条件となっています。したがって、仮に日本の2アマであっても免許状がVHFUHFの10Wでしかなければ、その範囲内での運用となります。また、米国はHF運用者へのモールス技能を必須としていますので、4アマは50メガ以上の運用しかできないこととなっています。

 

もう一つ大切なことは、FCCの免許を受けてしまうとこの相互認証での運用ができなくなってしまうことです。つまり、日本で1アマ・1kWの免許を受けている人がTechnicianだけ受かったとすると、このTechnicianの範囲でしか運用ができなくなってしまいます。そのため、米国の免許を受ける場合にはできるだけ一度に上位の資格を取るか、1年間の科目合格期間がありますので、希望の資格に到達するまで免許申請を行わずに試験合格書(CSCE)のみを集めて最後に免許申請をするかなどの工夫が必要です。

 

6.免許取得の条件

 

 免許を取得するために試験に合格するのは当たり前で、それ以外に「米国内に郵便物を受け取れる住所を持っている」ことが唯一の条件です。米国内に住んでいる必要は全くなく、郵便が確実に届く場所(知人宅や私設私書箱)を確保し、郵便を日本に転送できるように手配できれば問題はありません。あと、本人確認のための証明書が試験の時に必要となりますのでパスポートなどを事前に用意しておいたほうが無難です。

 

7.試験方法

 

 米国の試験はVECと呼ばれるボランティア団体によって管理されており、全米に14の団体が活動を行っています。これらの団体は試験問題の作成や合格者の免許申請などを担当しているほかに、現場で試験を行うVE(ボランティア試験官)の認定も行っています。試験は3名以上のVEが集まって開催され、日本でも数ヶ所で開催されているため国内での受験が可能です。受験料は平成17年が14ドルで、年毎に決められますがどの団体で受けても値段は一緒です。

 

 試験コードテストと呼ばれるCW5WPM)の受信試験Element 1と資格に応じた学科試験のElement2〜4まであり、学科については2⇒3⇒4というように順番に合格する必要があります。日本のようにいきなり最上級の試験を受けて合格、という制度ではありません。

 

 Element1は毎分25文字のCWを5分間受信し、受信用紙に記入します。しかし、実際には試験後に解答用紙が渡され、自分の受信した文章から<相手のコールサインは?><自分の住所(州)は?><相手の無線機は?><自分の出力は?>などという問題に答えるクイズ形式で、10問中7問正解で合格です。記号も出ます。なお、5分間受信した文章で1分間に誤りが全くなければ合格、というやり方もあるようですが詳細は不明です。

 

 Element2〜4は4択式の試験で、各々35問中26問、35問中26問、50問中37問の正解で合格となります。試験問題はQuestion Poolと呼ばれる資格ごとの公開問答集があり、インターネットから容易にダウンロードが可能です。どの団体の試験もこのQuestion Poolから出題されており、資格ごとに500前後の問答で構成されています。

 

 

試験科目と対応資格

試験科目

内容

合格

Technician

General

Amateur Extra

Element

CW(5WPM)

7/10

Element

Technician level theory

26/35

Element

General theory

26/35

 

Element

Amateur Extra theory

37/50

 

 

※:Element1にも合格した者又はクレジットされる者はノビスバンドでの運用が無期限で許可される。しかし、Element1をCSCEでクレジットされている場合には試験合格書(CSCE)の有効期間が1年間(365日)のため、それ以降にGeneralにアップグレードする場合には、再度Element1にも合格しなければならない。

 

 

受かった科目で免許がもらえる場合には帰り際に免許申請ができますし、1年間の科目合格期間がありますので、一度に全部受かる必要もありません。さらに、一度試験に落ちても試験が行われている時間中でVEの了解が取れればその日のうちに再挑戦できます(再度、受験料は必要です)。

 

また、すでに下位の資格を持っている人が上位の試験に合格した場合には、その時(CSCEを受領した時)から上位の操作範囲で運用することが可能です。

 

日本で試験を実施しているチームは次の通りです;

(1)    ARRL/VEC Michinoku VE Team

(2)    ARRL/VEC Tokyo VE Team

(3)    W5YI Gunma Team

(4)    ARRL/VEC Nagoya VE Team

(5)    ARRL/VEC Okayama VE Team

(6)    W5YI Fukuoka Testing Team

 

8.コールサイン

 

 最初に免許を受けるとき、免許人の住所や資格に応じて機械的にコールサインが割り当てられます。Amateur ExtraにはW6xxAA8xKH6xなどの4文字が割り当てられていましたが、多くの地域では「割当が一巡した」などのため現在ではAから始まるAE6xxAH6xxなど5文字のコールサインが割り当てられているように見受けられます。また、GeneralTechnicianも一時、K6xxxN5xxxなどでしたが、KE6xxxのようにNoviceやクラブのものが使われているようです。なお、最新のコールサインの割当状況はN4MC's Vanity HQなどのホームページで確認することができます。

 

 

グループとコールサイン

地域

Group A

(Amateur Extra)

Group B

(Advanced)

Group C

(General/Tech.)

Group D

(Novice/Club)

48州

K$xx

N$xx

W$xx

Ax$x

Kx$x

Nx$x

Wx$x

Ax$xx

Group B

Kx$xx

Nx$xx

Wx$xx

Group C

K$xxx

N$xxx

W$xxx

Group D

Kx$xxx

Wx$xxx

アラスカ

AL$x

KL$x

NL$x

WL$x

Group B

AL$xx

Group C

KL$xx

NL$xx

WL$xx

Group D

KL$xxx

WL$xxx

カリブ

KP$x

NP$x

WP$x

Group B

KP$xx

Group C

NP$xx

WP$xx

Group D

KP$xxx

WP$xxx

太平洋

AH$x

KH$x

NH$x

WH$x

Group B

AH$xx

Group C

KH$xx

NH$xx

WH$xx

Group D

KH$xxx

WH$xxx

※表の中で$は数字を、xはアルファベットを表している。この表では一般的なコールサインの組み合わせを示しており、一部の組み合わせでは割り当てられないものがありますが、ここでは省略します。

 

 

グループごとの割当状況

地域

Group A

(Amateur Extra)

Group B

(Advanced)

Group C

(General/Tech.)

Group D

(Novice/Club)

48州

AC0JZ

AB1IE

AB2YD

AB3GU

AJ4EM

AE5FT

AF6GX

AD7RT

AC8AJ

AB9QF

KI0SZ

KE1MK

KG2SB

KF3ES

KV4IG

KM5YW

KR6FX

KK7YN

KI8KP

KG9RG

---à

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---à

KD0CQA

KB1PVK

KC2SRA

KB3QFR

KJ4BJX

KE5SBU

KI6NVY

KE7QXX

KD8HOY

KC9MTO

アラスカ

AL3E

AL7RX

KL2JB

WL7CWJ

カリブ

---à

WP3Y

KP2CU

KP3BT

NP2OL

WP4HA

WP2AJB

WP4NWH

太平洋

---à

---à

---à

AH8Y

AH0BK

AH2DS

AH6SP

AH8AI

KH0TH

NH2FW

WH7JX

KH8DS

WH0ABX

WH2AOI

WH6DIE

WH8ABM

 

 

>> 次回に続く