慕情

 

ジャスコが敬老の日のプレゼント用にと、古い映画のDVDを売り出した由、チラシを見てので、その中から3作買ってみた。

「めぐり逢い」と「慕情」と、「おしゃれ泥棒」と言う3作であるが、このいづれも既にNHK BSで放映されたものをビデオにとって、初めて見るものではないが実にいい映画である。

特に、「めぐり逢い」はビデオで何度も見ているので、ストーリーは十分承知しているが、少しでも英会話に馴染めればと思って何度も見ている。

他の2作も全部ストーリーは承知しているが、私は例によってアホなものだから、収録したテープの管理が下手で、それが何処にあるのかわからず、何度も見るということはしていない。

これらの作品はすべて半世紀以上前の作品であるが、若い時には不思議なことに全く見ていない。

しかし、その映画そのもの存在は知っていた。

出演の俳優も女優も知ってはいたが、映画館で見た記憶というものはない。

これらの作品の良さというものが十分理解できるようになったのは、ビデオでとって見るようになってからのことである。

この3作品はいづれもラブ・ロマンス物で、殺伐とした人殺しの場面のないのもいい。

それでいて露骨な性描写もなく、安心して家族全員で見れる映画である。

50年も前にはアメリカでもまだまだ健全な良識とかモラルというものが生きていたのであろうか。

さて、「慕情」であるが、これの舞台は1949年の香港である。

中国人のハーフの女医さんと新聞記者のラブ・ロマンスであるが、その舞台設定が非常に面白い。

1949年といえば、まだ中国で共産主義革命が終わるか終わらないときで、イギリス領・香港に本土からその革命を逃れて難民が押し寄せるという状況が非常に興味あるものであった。

革命を逃れて香港に難民が押し寄せるという状況は、我々にとっては非常に興味あるところだ。

そして、この映画で描かれている中国の状況というのは非常にリアルだと思う。

天秤棒で物売りをしている庶民、病院の治療費が払えず子供を売ろうとする庶民、ジャンクの船頭として子供をオブって櫓を漕ぐ母親、こういう情景を私は映像でしか知らないが、それがそのまま再現されていた。そういう中国の庶民が画面に登場しているにもかかわらず、白人の社会は、いわゆる植民地の白人のまま描かれているわけで、それが非常にリアルに描写されていた。

妻子ある新聞記者とイギリスに留学した女医さんのラブ・ロマンスというのはあまりのも出来すぎた話であるが、これも見方を変えれば不倫物語である。

しかし、恋が芽生えて有頂天になっている間にも本人には不幸が徐々に忍び寄ってきて、最後は究極的な破局を迎えるという点ではよく出来たストーリーだと思う。

周囲の忠告を無視して、心ならずも恋にのめりこんでいく結果として、歯車が不幸のほうに回り込んでしまう様がよく描かれ、その一途さが見るものの共感を呼ぶのであろう。

そして、その中にはしばしば中国のナショナリズムガちらちらと見え隠れしていて、それでいて最後は朝鮮戦争で、新聞記者のウイリア・ムホールデンが死んでしまうという設定は非常に面白いと思う。

女医さんを演じているのがジェニファー・ジョンズという女優であるが、彼女は非常に上手に中国の家庭というものを演出しているように見えた。

この映画、Love is A Many Splendored Thingという主題歌が有名であったが、私はこのDVDを購入するまで、この主題歌の題名を知らなかった。

ただ「慕情」のテーマソングということは知っていたが、その本当の題名はここで始めて知った次第である。

しかし、Love is A Many Splendored Thingをよくも「慕情」と意訳したものだ。実に感心する。

この映画は、映画そのものよりもその主題歌で有名になっていたのではないかとさえ思えてくる。

「慕情」のテーマソングとしては、それこそ若かりし頃から知っていたが、その映画そのものを見たのは最近になってからのことで、まさしく敬老の日のプレゼントにはふさわしい物である。

香港には23年前訪問したことがあったが、その時はまだこの映画をみていなかったので、あの待ち合わせの場所にあった岡の上の樹のことを知らなかった。

実際にあった樹なのか、それとも映画の中だけの樹なのか知りたいものだ。

しかし、現地を観光しても、ガイドがもう戦後生まれの若い世代で、昔のことを聞いてもまともに答えられない状況になっている。