ISOとKAIZENの部屋
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I品質マネジメントシステム
        ISO9001:2015

   

このページでは、2015年に発行されたISO9001の改訂情報をお知らせします.
2015改訂では、大幅な改訂となり、2008年版認証済み組織でも、QMSを見直す必要があると思われます。


ISO9001:2015トップマネジメントの役割及び審査時の想定質問 (2016.04.23)
2015年版では、トップマネジメントの役割が強化されたといえよう。実質的には、5.1.1「リーダーシップ及びコミットメント」の箇条に、追加の要求がみられる。おそらく今までの審査では、トップマネジメントの審査時間は、30-40分くらいでその内容も、「最近の御社の状況はいかがですか?」、「ISO9001の運用で成果は上がっておりますか?」、「QMSについて、今どんな課題がありますか?」といった一般的な質問が多かったのではないでしょうか。しかし、2015年版では、リーダーシップについて、かなり具体的な質問が予想され、まず「QMSの有効性についてトップマネジメントに説明責任(アカウンタビリティ)があること」が、大きな変更であろう。 もし今まで、「それは、品質管理責任者のほうから説明させます」とされていたようですと、おそらく2015年版では「いや、それはトップの方からお伺いします」ということになるのではないかと思われる(予想ですが、トップに関連するところで2時間くらいは審査時間がかかるのではないか?)。
さて、審査時の質問で、私が優秀と思われる審査員は、おそらく質問の前に改訂の主旨を説明して分かり易く問いかけてこられると思うが、中にはストレートな質問を投げかけてくる審査員もいるのではないかと推測される。実は、品質マネジメントシステムについてとか、プロセスアプローチの質問は、質問する方が本当によくわかっていないと、質問も、それに対する回答もちぐはぐになってしまう可能性が高い。
箇条通りの質問をすると、例えば
1)御社の事業プロセスへのQMS要求事項の統合は確実になさっていますか? (回答)統合しております。
2)プロセスアプローチ及びリスクに基づく考え方の利用を促進されていますか? (回答)両方とも促進しています。
というようなことになってしまいます。

そこで、今でもトップマネジメントの方が率先してQMSを推進してこられた組織が大半と思われますが、念のため今回の改訂説明に当たっては、トップの方への社内説明を十分に行ってください。何しろ、このQMSは組織の目的を達成するためのツールですから(事業プロセスへの統合)、トップの方が先頭に立ち、進めてほしいのです。 事務局の方や品質管理責任者の方とお話すると、トップへの説明と対応でかなり悩まれているようです。そこでお薦めは、トップマネジメントの方へやんわりと、想定問答集を貴社の今までの審査経験からお作りになることです。これを作りますと、作る方も、それを読むトップの方も、ISO9001の狙いがよく分かってまいります。

当社で考えた「審査時のトップ向けの想定問答」の部分例を以下に示しますと、
1.これから、貴社がQMSを構築されている前提として、貴社の現状をトップの方がどうとらえているかをお聞きします。それらがどう品質方針や品質目標につながっているかを確認させてください。
1-1 まず、組織の及びその状況の理解ということですが、貴社の事業目的や戦略的な方向はいかがでしょうか?
  ・それらについて、内部及び外部の課題はどのように明確にされていますか? 
1-2 貴社の利害関係者といいますとどのような方、組織が対象となりますか?
  ・それでは、利害関係者の、ニーズ及び期待はどのように把握されておられますか?
1-3 次いで、リスク及び機会についてお伺いします。リスク及び機会はISO9001:2015では新しいのですが、今までも企業活動では普段に行われていたのではないかと思います。まずリスク及び機会はどのように、決定されているか手順をお伺いします。
  ・決定されたものはございますか? 詳しい内容は、6.1項でお伺いします。
(以下略)

ISO9001:2015のトップマネジメントの役割の要求事項。多くは、2008版と変わっていないが、5.1リーダーシップが強化されている。




ISO9001/14001:2015 移行に関するQ&A(当社解析による) (2016.03.23)
Q1:(ISO9001) 品質マニュアルの文書化要求が消えたが、品質マニュアルを継続すべきか?
 環境マニュアルはすでに2004年版から消えているが、ISO9001でも2015版では要求から消えている。但し、「7.5.1文書化した情報:一般 b)QMSの有効性のために必要であると組織が決定した,文書化した情報」で必要があれば組織が決めると規定している。従って、あくまでも組織の判断で、「品質マニュアル」継続することは一向にかまわない。
 「品質保証(顧客要求の実現、法的順守等)」は、ISO9001の取得の有無にかかわらず、組織では行わなければならないので、ISO9001の取得は、品質保証を越えるさらなる品質改善が目的である。品質マニュアルは社内での運用の規範として活用する他に、顧客に対しても、我が社は品質についてこういう優位があるということを実証する為に、品質マニュアルは積極的に活用することが望ましいとも考えられる。組織の判断で戦略的に活用することが望まれる。

Q2:移行に際して、2015年版の箇条番号に合わせて、品質/(環境)マニュアルを構成し直さなければならないか?

 多くの組織は、品質/環境マニュアルの構成をISO9001/14001の箇条に合わせているのではないかと思われるが、ISO9001:2015版では、序文0.1 一般にて、「文書類をこの国際規格の箇条の構造と一致させる。」意図はないと明確に書かれている。各社の考えで構成してよい。
 また、QMSでは、そのしくみをISO9001の記述順序で進めることにはなっていないので、注意を要する。例えば、4.4.1 QMSプロセスの確立では、f)項にて「6.1の要求事項に従って決定したとおりにリスク及び機会に取り組む。」とあり、6.1リスク及び機会を先に取組まなければならない。ISO14001では、同様の記述はないが、「0.3 環境マネジメントシステムの詳細さ及び複雑さのレベルは,組織の状況,環境マネジメントシステムの適用範囲,順守義務,並びに組織の活動,製品及びサービスの性質(これらの環境側面及びそれに伴う環境影響も含む. )によって異なる。」とあるので、ISO9001と同じと考えてよいだろう。

Q3:品質管理責任者/環境管理責任者の制度が消えたが、2015年版でも制度を継続してもよいか?
 ISO9001でもISO14001でも2015版では、管理責任者の任命は要求から消えている。これも、どのように責任と権限を決めるかは組織が決めることであるので、管理責任者制度を続けることもできるし新たに仕組みを制定し任命することもできる。従来の制度で、管理責任者の仕事で大きなものに、「マネジメントレビューへのインプット」があった。 2015版 9.3のマネジメントレビュー-インプットへは、「だれがどのようにインプットするか」は、管理責任者制がなくなっても明確にしておく必要があるであろう。

Q4:2015年版では、用語が今までと別の表現になっているものがあるが、自社でもこれに合わせるべきか?
 2015年版用語では、QMSでは、「供給者→外部提供者、購買製品→外部から提供される製品及びサービス、作業環境→プロセスの運用に関する環境等」、EMSでは、「環境目的、環境目標→環境目標に統合」など表現が変わっている。これらについては、ISO9001:2015版の、序文0.1 一般にて、「この国際規格の特定の用語を組織内で使用する。」意図はないと明確に書かれている。従来の用語を使うことを含めて、各社の考えで表現してよい。

Q5:(ISO9001) 『工程設計』は、2015年版でも適用除外できるか?
2008年版で、多くの審査機関は「工程設計は、7.3設計・開発に含まれない」としてきたようだが、2015年版では、4.3適用範囲で、《意図した除外》を防ぐために、「組織が決定したQMSの範囲で、ISO9001の要求事項が適用可能ならば、組織は、これらすべてを適用しなければならない」とある。例外なくすべて適用ということである。もし除外する場合は、「それを除外してもQMSの正当性に影響しないことを示す」と規定されている。工程設計が、自組織のQMSにとってどういう位置づけであるかが重要。例えば、顧客から、作り方すべて(作業指示書や治工具の指示、提供を受ける等)の場合で、その通り作っていれば工程設計はないと考えられるが、製品図面を顧客から渡されて、その製品の作り方を自社で展開する場合(金型や治工具の製作、作業指示書の製作等)は、QMSの中での位置づけとして設計・開発は除外できないのではないかと考える。(規格説明会でのTC176/SC2/WG24日本エキスパートの山田秀氏の発言を参考にした.) 貴社が適用範囲で、はっきりしない際は事前に審査機関と相談しておくのが望ましい。


JISQ-9001/14001/9000: 2015版は、2015年11月20日に発行されました。 (2015.12.10)
  ISO9001/14001/9000の2015年改訂、国際規格(IS)はすでに、2015年9月に正式発行されましたが、JIS化には、所定の手続きが必要なため、ようやくこの11月20日に正式発行された。新版JISは、JASのウエブストア他、全国JIS取扱い書店で購入できる。 新版JISには、旧版にも見られた下線を附した、「JIS独自の、 国際規格にはない参考事項」が含まれている。
  改訂移行期間は3年だが、JIS版で認証している組織は、2018年11月19日までに移行完了となると思われるが、詳しくは審査機関に問い合わせてほしい。

ISO9001 2015版-IS 規格改訂説明会(東京)速報  (2015.10.02)
 ISO9001:2015-ISの発行を受けて、10月1日JSA主催の「規格改訂説明会」が開催された。講師は、TC176/SC2/WG24日本エキスパートの山田秀氏。
 会場は、ざっと150名余の方が来られていた。 FDISからISへの変更はほとんどなかったことから、2015版の総合解説で、1.改訂の経緯、概要に1時間、2.逐条解説に1時間半、3.質疑に30分という構成であった。 私の参加したFDIS説明会講師は、同じくエキスパートの須田晋介であったので、同じことを言っていますが、若干切り口が変わり、今回も有意義なものでした。 その中のハイライトは、
1)2015版で、全く新しい要求は、「8.5.1g)ヒューマンエラーの防止」である。 箇条4組織の状況や5リーダーシップや6リスクと機会などは、「ちゃんとした組織では、当たり前にやっていること」であり、新しい要求とはみなされないのではないか、といわれていた。
2)リスクについては、「不確かさ影響」であるので、2008年版の予防処置の要求にかなり似ている。またリスクへの対応では、P-FMESなどは有効な対策の一つであろう。但し、FMEAが仕組みとして出来る組織はよいが、小さな組織にまでFMEAを推奨するということではない。組織の実情に合わせてほしい。
3)プロセスアプローチについては、「0.3で、促進しており、プロセスアプローチの採用に不可欠と考えられる特定の要求事項を4.4に規定」している」とあり、プロセスアプローチ自体が、要求事項ではない(shallではない)が、4.4で、実質的にプロセスアプローチを具現化している。
4(質問に答えて))2008年版で、多くの審査機関は「工程設計は、設計・開発に含まれない」としてきたようだが、2015年版では、4.3適用範囲で、「意図した除外」を防ぐために、「適用可能ならば、組織は、これらすべてを適用しなければならない」とある。例外なくすべて適用ということである。 工程設計が、自組織のQMSにとってどういう位置づけであるかが重要。例えば、顧客から、作り方すべてを指示されてその通り作っている場合は、工程設計はないと考えられるが、製品図面を渡されてその作り方を自社で展開する場合は、QMSの中での位置づけとして設計・開発は除外できないのではないか。
5) 箇条1から10の並びは、QMSをこの順序でやりなさいということではない。実際の流れは、箇条通りではないこともある。 例えば、4.4は、箇条6が決まらないと進められない。
以上は、出席した当社代表の聞き書きメモですので、参考としてご覧ください。

ISO9001 2015版ISは
2015年9月5日に発行されました。 (2015.09.25)

ISO14001 2015版IS及びISO9001 2015版ISは9月15日に発行されました。(2015.9.25)
ISO14001:2015 最終国際規格(IS)と
ISO9001:2015最終国際規格(IS)は、ISO本部(ジュネーブ)のHP発表で、2015年9月15日に正式発行されました(英文版)。英文規格は、ISO本部からでもJSAでも購入できます。日本語対訳版は、JSAより、ISO9001は10月1日に発行されています。 なお、JISは、11月に発行とのことです。
一般に、FDISからISへの変更は、「編集上の変更」即ち、文法上の間違いとか、文章の並び構成の編集などを目的とされており、FDISに賛成を投じた国は、意見を述べられないために大きな変更はないとされている。 今回の変更を、当社で分析した結果、9001では、タイトルの表題の変更など、14001では文章の並びの変更でいずれもごく小さな変更にとどまっている。

1)ISO9001➡FDISとISとの差異
①タイトル:5.2.1 「品質方針の確立」に、
②タイトル:8.2.2「製品及びサービスの要求事項の明確化」に、
③タイトル:8.2.3「製品及びサービスの要求事項のレビュー」に、
④8.2.3.1 「Note …その代わりに,レビューでは,カタログなどの関連する製品情報をその対象とすることもできる。」に変更
2)ISO14001➡FDISとISとの差異
①6.1.1 「… 次に関連する、 環境側面(6.1.2参照)、順守義務(6.1.3参照)、そして4.1及び4.2で特定した,その他の課題及び要求事項の、リスク及び機会を決定しなければならない。」
(内容は変わっていないが、文章が項目並びから、上記のようにつながった。

ISO9001:2015改訂
を読み解く。 今回の改訂は、大改訂に相当する! (2015.08.17/09.29再編集
 ISO9001:2015-ISが発行された。当社では、ISを入手し、またJSA主催の改訂版説明会に出席し、その内容を分析してきた。 現時点での分析結果から今回の改訂につき、いくつかのキーポイントを、発表させていただく。(文責:(有)池上生産技術研究所)
1.
 【大改正】 今回の改訂は、2000年版以来の「大改正」であり、移行の難しさは今回がトップであろう。 2000年改訂以降2008年に追補版発行があったが、この時は2000年版の議論あるところを明確にするという位置づけであったため、新たな追加要求はなく、その移行も容易であった。 日本のISO/TC176メンバーも2015年改訂は「大改正」と捉えている模様である。当社も、今回は、移行に相当なエネルギーを要する「大改正」と捉えている。 然らばその理由は?
2. 
【組織の主体的取り組み】 2000年版では、その要求事項が割合明確且つ具体的であったため、「適合性」に主体を置く、システム構築、適合性審査が主体であった。しかし2015年版は、組織での主体的取り組みを促す、
「4.4.1組織は,この国際規格の要求事項に従って,必要なプロセス及びそれらの相互作用を含む,品質マネジメントシステムを確立し,実施し,維持し,かつ,継続的に改善しなければならない。」や、文書も組織が必要なものを組織が決め、組織の責任・権限も「品質管理責任者」制度がなくなり組織が制度を決める等、組織に大幅な裁量が任された。 この結果、組織は、組織にふさわしいしくみを自分たちで考えて構築しなければならなくなった(横並びシステムや他社のまねシステムは意味がなくなった》。 一方、認証機関の審査員は、組織の意図をよく聞き、それが2015年版の要求事項に適合しているかを判断しなければならなくなったので、相当プレッシャーが高まるものと推測される。
3. 
【プロセスアプローチ】  「プロセスアプローチ」が2000年版以上に求められる結果、組織も、認証機関審査員も、「プロセスアプローチ」の本質と、その運用をマスターしなければならない。「プロセスアプローチ」について、説明会の席上で、私は「TC176は、どの程度のプロセスアプローチシステム構築を考えているのか? 中小企業に自動車セクター規格(TS16949)並みの要求をするのは酷ではないか?」と質問したが、エキスパートは、「例えば、タートル図のようなものを使用することまでは求めてはいない(しかしタートル図は、有用である)。今後TC176として、何らかのガイドラインや解説書を準備する」とのことであった。 一方JABの担当者は、プロセスアプローチについては、かねてから審査機関にその運用を求めてきたので、今回から新たに「プロセスアプローチ審査」というわけではない。今回の2015年版の適用に際しては、審査機関にプロセスアプローチを再度強く求めているし、移行審査の際、JABも審査機関の審査に立ち会って、その適用を監視するとの表明があった。 2015年版審査からは、「プロセスアプローチ」に沿った審査がなされるものと思われる。 問題は、プロセスアプローチについてその本質を知っている人が、審査員を含めてどれくらいいるのかということで、自動車セクター規格の、ISO/TS16949を取得済の組織や、TSの審査員は、必須として理解しているが、他の組織や、ISO9001の審査員はどうであるか、いささか心配なところである。 

(まとめ) 2015改訂は、組織にとっても、審査機関、審査員にとっても、かなり大きな改訂であろうと考えているので、移行期間が「3年間」あるものの、「早めの対応」をお勧めする。  改訂に当たっては、条文をよく読み、組織内で「当社は何を目指すのか」ということをトップマネジメントを中心に議論して、組織にふさわしいシステム再構築をめざす必要があろう。


   


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