「向山型要約指導法10のセオリー」

1、        要約は体言止めで終わらせる。

要約指導は、桃太郎の話から行うとわかりやすいという。が、体言止の方法が分かっていないと、混乱するおそれがある。

初めての要約指導で桃太郎の話を要約させることから始めたが、すぐには理解されなかった。特に体言止めがわからなかったためだ。

 

向山型国語教え方教室2002bVp69 愛媛県牟田卓生先生の論文

 そこで、簡単な文章で体言止めの手立てを指導する。

指示1「先生は、昨日学校へ行った。」これを「先生」で終わるように書き直しなさい。→昨日学校へ行った先生

指示2「学校」で終わるように書き直しなさい。→先生が昨日行った、学校。

指示3「昨日」で終わるように書き直しなさい。→先生が学校へ行った、昨日。

一つの指示ごとに作業が早くなる。ということは子どもが体言止めを理解するということである。

 

2、        指示、作業、個別評定を繰り返す。

 向山先生の行った要約指導のステップは次のようになっている。

1 桃太郎の話をだれかに語らせる

2 桃太郎の話を20字以内でまとめさせる。

3 黒板に書かせる。

4 採点する。(個別評定)

5 大切な言葉を3つ選ばせる。(サル・キジ・犬、桃太郎、鬼に退治)

6 3つの言葉から一番大切な言葉を選ばせる。(桃太郎)

7 3つの言葉を入れて、20字以内でまとめさせる。(桃太郎で終わるようにする)

8 黒板に書かせる。

9 採点する。(犬・きじ・さると鬼退治に行った桃太郎   18字)

  指示をして、作業をさせ、一回に一つのことを取り上げ、易から難へと変化を伴って指導をしているのである。

(教室ツーウェイ1999年3月p12、向山型国語教え方教室2001、4号p17星野裕二 先生論文より)

3、        評価の観点を教師が明確に持つことが大事である。

要約指導では、黒板に板書させた上で、テンポよく、明るく個別評定をしていくが、このときに教師は、明確な評価の観点を持っていなくてはならない。一回ごとに基準がゆるがないようにし、子どもが納得し、次の作業への手がかりにならなければ、全員の要約がほとんど同じになるはずがないと考える。

  評定によって、子どもは要約を見直し、一字一句を検討する。

 

4、        文章中からキーワードを探し、それを使った要約をする。

  形式段落の要約では、主となる文章を探す。全文要約では文章の中で何度も出てくる言葉、筆者が言いたいことがまとめてある段落の中に含まれる言葉の中からキーワードを探す。それを文末に持ってくるように要約文を作る。

 

5、        段落要約、全文要約と段階を追って、指導する。

  最初から、全文要約をしようと思っても、子どもが要約に慣れていないときには、かえって逆効果になる場合がある。そこで、形式段落の要約(5〜6行)や意味段落(形式段落の中で同じことを言っている段落)を要約させながら、全文要約をさせるとよいのではないかと考える。

@        全文要約は、30字以内とする。

A        重要な段落を探させ、重要な文を一文選び出す。

B        重要な一文を補完する文章があるときは、その文も含める。

 

一度に三時間、年間2,3回を目安に指導をすれば、子どもたちに要約の力がつく。

(向山型国語教え方教室呼びかけ号 p16桜木泰自先生論文)

 

6、        厳格に採点を行う。

  キーワードが入っているか、日本語としておかしくないかをもとにして、

10点満点で採点をする。

採点基準は、もっとも大切なキーワードが4点、その他のキーワードが3点ずつ、(キーワードの数によっては2点ずつなど)日本語としておかしいというものは極端に減点する。

(前掲書 星野裕二先生論文より)

7、        教師は、必ず自分で書いた要約文を用意しておく。

  子どもを評定する以上は、教師も文章を検討し、自分で書いた要約文を用意しておかねばならない。100回以上教材文に向き合い、分析する中で、できた要約文を自信を持って用意できるとよい。

 

8、        ヒントを与えることも必要である。

  キーワードがなかなか見つからない子どもがいるときには、教師がこっそりと「この段落では、○○という言葉が入っていないとだめだな」とつぶやく。

または、はじめのうちは全体で大事な言葉を出させた上で、その言葉を使って要約をさせるようにする。すると、全員が参加できるようになる。やっているうちにできるようになってくる。

 

9、        正しい答えを板書し、写させる。

  板書させて、厳格に採点することによって、要約文が徐々に精選されてくる。どうしてもかけない子どもが出てくると思われるので、10点満点になった要約文が出たら、それと教師が考えておいた要約文を並べて書き、正解を正確に視写させるようにする。「うつすのもりっぱなお勉強です。」

 

10、要約文はどれもほとんど同じになる。

  要約の指導を学べば、100人いても、そのほとんどが同じ要約文になってしまうほど、魔法のような指導だと言われている。実際に、4年生の子どもに以前、桃太郎の話を要約させたら、みなほとんど同じ答えになり、子どもも驚いたという経験がある。

  その後も、いろいろな文章でやってみたが、できるだろうと考えて突発的に行った要約指導だと子どもも混乱して、以前習ったことなど忘れて、「難しい」と拒否反応を起こしたが(反省・・・)、キーワードや体言止めなどの段階をふんで指導すると、みなほとんど同じ要約文になった。