佐藤義美

　大分県直入郡岡本村（竹田市）出身。父は絵画教師をしていた佐藤平太郎、キツの長男として生まれる。平仮名「さとうよしみ」とクレジットすることもある。
　1920(T9)15歳の時、父が横浜市視学（教育行政官）になったため、横浜に一家で転居。二学期より、大分県立竹田中学校から横浜第二中学校に編入。また父の影響で最初は画家を志そうとしていたが、'23.9.1 関東大震災で被災し絵を描く道具も焼失したこともあり画家を諦め、詩や童謡を書きはじめる。'24 父が東京市視学になったため、東京に転居。この頃より雑誌「赤い鳥」「童話」「金の星」に童謡の投稿をはじめる。
　'25 早稲田大学第二高等学院に入学。同級生の、石川達三、新庄嘉章、金子みすゞ等と同人雑誌を「曼珠沙華」を創刊。'28(S3)初期の童謡の代表作とされている『月の中』を「赤い鳥」に発表。「コドモノクニ」等からも、童謡原稿を頼まれるようになる。
　'30 早稲田大学文学部国文科卒業。早稲田大学大学院に入学。'32 早稲田大学大学院修了。東京第三商業学校に就職し、国語や作文の教鞭をとる。処女童謡集『雀の木』を刊行。'34 詩集『存在』を刊行。'37 雑誌「お話の木」創刊号に最初の童話『春風』、『月とすっぽん』を発表。
　'39(S14)34歳の時に青木民と結婚。'40 母のキツが死去。'43 妻の民が死去。戦時中の創作活動も制限された。戦後、'46 日本児童文学者協会創立委員となる。須賀静子と再婚し、長男の美紀が生まれる。
　'47 柴野民三、奈街三郎、加賀山敬二と、雑誌「こどもペン」を創刊。'48 父の平太郎が死去。長女の緑と次女の由木子が生まれる。'50 長編童話『ぼくとさる』を毎日小学生新聞に連載。'52 毎日小学生新聞に発表した詩『木をうえましょう』が、小学館賞となったが受賞を辞退。'54 童話集『あるいた雪だるま』により、第1回産経児童出版文化賞を受賞。'56 童話集『くじらつり』を刊行。
　'60『佐藤義美童謡集』を刊行。この時期、「チャイルドブック」10月号に『いぬのおまわりさん』を発表。作曲者は大中恩(おおなか めぐみ)。迷子の子猫がないているのと一緒に犬のおまわりさんも泣いてしまう詩の背景には、「人間もみんな迷子じゃないか」という思いが込められている。ちなみに「まいごのこねこ」は歌詞では、ちゃんと戻れたのか明らかになっていないが、絵本の挿絵では、どうやらお母さんの元に戻れたように描かれている。
　'62 交通事故にあい、前頭打撲・両足複雑骨折。9時間の大手術。翌年まで入退院をくり返す。'63 童謡曲集『今のこどものうた』を刊行。'64 中断していた長編核爆弾童話の資料集めに、長崎・広島に旅行。この原爆長編童話の中には、平和と自他の生命の尊重という二つのテーマを持ち臨んだ。'65 童話集『王さまの子どもになってあげる』を刊行。他に童謡の代表的な作品に『グッドバイ』、『ともだちシンフォニー』、『おすもうくまちゃん』、『アイスクリームのうた』などがあり、約3,000の童謡や童話を残した。
　'66 積年の夢、ヨットを手に入れ、神奈川県逗子に仕事場をもつ。'68 内臓癒着による、全身衰弱のため死去。享年63歳。'75 没後刊行された『佐藤義美全集』(全6巻：1973-74)が第5回赤い鳥文学賞を受賞。'98.4(H10)郷里の大分県竹田市は、佐藤義美の顕彰活動を行うために「佐藤義美記念館」が開館した。2007(H19)代表作の『いぬのおまわりさん』は日本の歌百選に選出された。

＜佐藤義美記念館「佐藤義美年譜」＞
＜小学館日本大百科全書＞

＊墓石は和型「佐藤家之墓」、裏面「昭和五十七年十月吉日 施主 佐藤美紀 建之」。そのほか墓石に刻みはなく、墓所に墓誌もない。ただし墓所左手前に小さな銅像が建つ。銅像に刻みもないため、佐藤義美であるのか、父の佐藤平太郎なのかは不明。

＊佐藤義美記念館(大分県竹田市竹田1735)は、佐藤義美が晩年を過ごした神奈川県逗子市の建物を再現したもので、大正ロマン漂う木造の洋館づくりである。佐藤義美の生家跡地は現在「佐藤義美記念公園」（大分県竹田市大字挟田）として記念碑などが建てられている。地元では文化の日に「さとうよしみ竹田童謡祭」が開催されている。この童謡祭では「佐藤義美賞」竹田童謡作詞コンクール表彰式も行われている。

【いぬのおまわりさん】
作詞：佐藤義美　作曲者：大中恩

まいごの まいごの こねこちゃん
あなたの おうちは どこですか
おうちを きいても わからない
なまえを きいても わからない
にゃんにゃん にゃにゃん
にゃんにゃん にゃにゃん
ないてばかりいる こねこちゃん
いぬの おまわりさん こまってしまって
わんわん わわん　わんわん わわん

まいごの まいごの こねこちゃん
このこの おうちは どこですか
からすに きいても わからない
すずめに きいても わからない
にゃんにゃん にゃにゃん
にゃんにゃん にゃにゃん
ないてばかりいる こねこちゃん
いぬの おまわりさん こまってしまって
わんわん わわん　わんわん わわん

第４９９回　「いぬのおまわりさん」の作詞家 童謡作家 佐藤義美 お墓ツアー