オスマン帝国(トルコ)海軍 木造フリゲート エルトゥールル号
船体一部 エレール ミニ帆船シリーズ・パミール使用 他スクラッチ

 1/600…くらい

エルトゥールル号はオスマン帝国海軍の木造フリゲート艦で、オスマン帝国海軍が自国の沿岸防衛のために国産した軍艦である。
1853年に自国のイスタンブール造船所で建造された。
本艦の基本構造は平甲板型船体に3本の帆走用マストを持つ装甲フリゲートで、船体中央部の1番・2番マストの間に船橋を持つ艦橋が立ち、船体内部の砲郭(ケースメイト)部に主武装を左右均等に配置していた。
1864年にロンドンに回航され、1865年まで老朽化した船体の修理と共に、蒸気機関を搭載して蒸気船に改造すると共に武装の一新が行われた。
1890年に日本を訪問した帰路に、和歌山県串本町沖で座礁し沈没した(エルトゥールル号遭難事件)。

参照 Wikipedia

2015年に海難1890として映画化されたオスマン帝国海軍エルトゥールル号のディオラマの製作です。
昔から作りたかった艦船ですが、自分の知っている範囲では既成のキットは無く、スクラッチとしても絶望的に資料の無い船でしたが、かの映画でトルコにあった図面で映画用の模型が作製され、何となしでは有りましたが全容がつかめてきましたので、今回遭難でのディオラマを作ってみようと思い立ちました。
まずは船体ですが、最初プラ板の積層でと思っていましたが、手元にあったエレールのミニ帆船シリーズのパミールが割りといい塩梅でしたので、船体だけこちらのキットを流用しました。
と言っても、パミールは元々四檣バークのスリムな現代帆船で、幅が足りなく感じましたので2mm厚のプラ板2枚を真ん中に張りこんで船体左右を接着。
そこからはネットで入手した側面写真を元に船体形状、マスト位置と高さ、他各種艤装の位置関係を割り出して写真に書き込み、それに合わせながら船体を削り込んで行きました。(船体長が実測127mmで実船が76.2mなので…だいたい1/600と言うことに・・・エアフィックスかな?)
 パミールの船体は甲板の高さがあちこち違っていましたので、まずは側面を削りこんで一通の高さに調整。
写真を参考にいじり倒しているのですが、もとのキットの船首部が分厚くごろんとしていましたので、薄々攻撃をかけていたら両舷に穴が!
仕方なくパテを充填してみましたが、これが密閉空間のせいかなかなか乾燥しないところで、あせって削りをかけてメチャクチャに・・・・!
いや、こんなことならはなから船首を切断してプラ板で作り直せばよかったと後悔・・・・。
バウはもう少し反り上がっていまして、後で見たらちょっと高さが足りませんでした。
マスト位置を割り出すのに写真を実測して計算しましたが・・・こんな適当でいいのかな?
いじっていて思いましたが、甲板上にはキャビン等は無く(映画では後部が一段上がったキャビンになってますが・・・)、フライングデッキがあったりして幕府軍艦の開陽丸に良く似てますね。(エルトゥールル号の方が9年古いそうです)
マストはいつものFRP棒で自作です。張線で強い張力がかかるのを考えて、継ぎ目の所を二か所ずつ極細のミシン糸で括っています。
(塗装するとほぼわからなくなりますので)
トルコ本国ではマストが二段だったようですが、日本に来た時は三段のフルセイルの状態だったようですね。
なにせ全ての予算に乏しかったらしく、石炭も充分に手当てできずにシンガポールでだいぶ足止めになっていたそうなので、できる限りの天然資源「風!」を使おうとしたようです。
甲板の砲台(キャリッジ)をプラ板で製作。
本来は底板、側板で構成されていますが、あまりに小さいのでプラ板からの塊で・・・・。
右は砲身を乗せて、甲板にセットした状態です。
こういう風になると少しは軍艦らしくななったような気がしますね。
この時点で船体の黒を塗装。
この時代お定まりの黒ですが、少し日に焼けた感じを出したくて青を混色しましたが…仕上がったらただの黒になってしまいました。
各マストの前後に張線をするのに重要はファイフレールを取り付け。
前にプラ板で作ったのを他の作品で付けましたが・・・当然、張力で吹っ飛んだので、今回は真鍮線で足を長めにとって深く植え込んで有ります。上部だけはプラ板を張っています。
ようやくマストを定植?
本当は甲板から船底まで突き通して、強度を上げるつもりだったのですが、ピンバイスでの作業で変な角度がついていたようで、そのまま差し込むと三本ともバラバラの角度に・・・・。
仕方ないので根元を切って甲板だけでの固定にしました。張り線の時張力に気をつけないと曲がりそうです。

ボートダビットの製作。
これは写真では位置関係以外どうなっているか良く判らず、映画版の再現モデルを基にしましたが、こちらは太い角材を使ったものとなっておりました。
まぁ・・・・スケールの関係もあったので、0.4mmの真鍮線でさりげなく製作。
で・・・・両舷に三基あるのですが、一番後ろのがもろにシュラウドにかぶさっておりまして、どうやって収めるのか、どう操作するのかが皆目見当もつきません。
仕方なく、ここは無視して両舷二基で終了です。
これにぶら下げるカッターは色々ジャンクをあたっていたら、S-modelの社長さんが送ってくれた清国海軍武装パーツの中に入っていた大型艦載艇が丁度良く、白塗装で仕上げました。
これは最後に船体が傾いた状態にセットするため、一番最後の取り付けです。
船体はだいたい良い感じになってまいりましたので、いつもの釣り糸を使ってリギングに入りました。
メインの静索は0.6号のテグスでシュラウド関係は0.4号です。
後は様子を見ながら0.3号くらいであちこちの動索を張りますが・・・ここに来てはたと困ったのがラットライン・・・。
この艦は船体外側にブラケット状の張り出しが付いて、そこを通してシュラウドラインが張ってあります。
で、手持ちのEPを見ると・・・どうも長さや幅がかなり微妙ですね・・・。
なのであんまり考えないようにしてできるラインから処理をしまして、まぁ最後は後は野となれ山となれで行こうかと…。

 リギング進行中。
だいたい静策は張り終えたので、各マスト、ヤードを動かす動索へ。
この辺まで来ると結構がんじがらめにはなっていますが、線が多い分やはりあちこち干渉してきて、油断すると先に張った線が緩んだりしています。
やはり・・・・ゴムびよ〜んのEZラインの入手を検討しなければと・・・!
 ヤードを動かす動索(なになにブレースって言ったかな?)を展開中です。
これ、各ヤードの端から隣のマストに渡り、上から下に垂らしてファイフレールで固定してあります。
ヤードに角度を付ける時は、総出でこのロープを引っ張るんですね。
本当はマストからぶら下がる滑車を経由していますが、そこまでは再現できないのでマストに直接巻き付けています。
そうしますと・・・・接着剤で糸を固定した後にその余りを切るわけですが、場所が細かくて、ナイフのは先が上手く入らず、せっかく張った別な糸も一緒にプチンと・・・・。
こういうのが何回か続くと・・・気力が一気に萎えてしまいますね〜。
また、リギングが増えるほどマストに掛かる張力が増え、最初に張った糸の緩みがあちこちに出現・・・・。
これはある程度は修正できますがこの時点で2箇所程修正不能で切だんして張り直しになってしまいました。
まぁかなり小さいスケールなので、全部のリギングを再現するのは到底無理で、どの程度まで張って良いのかちと悩むところではありますね。

例のEZラインですが、行きつけのTメイツさんに行くと、なんと艦船用でインフィニ・モデルというところから、同じようなゴム紐系もラインが出ておりました。
見せて貰うと太さに二種類あって、1/700と1/350用的な感じ。太いほうは釣り糸で比較すると0.4号程度の太さで、ゴム伸びも結構良い感じだったので即購入しました。
45m巻で2,300円程なので、使う量から考えると結構お得な感じです。
実際に家に帰って、エルトゥールル号の残した部分で張ってみましたが、なかなかに良い感じですね。
この糸ですと強いテンションをかけずに弛む事無く張れますので、既に製作した後のエッチング系のマストでもバッチリです。
セイル(帆)の展開。
普通ですと各ヤード、スティに風をはらんだ様に接着していくのですが・・・。
映画なんかで見ると暴風に煽られ、マストが折れそうになって慌ててメインのスクエア・セイルを格納しようとし・・・結果できなくてセイルがボロボロになっている感じに写してましたね。
とりあえずいつも通りにPCで印刷した紙を切り抜き、各ヤードに取り付けた後鋏であちこち切れ目を入れてみました。
う〜ん・・・・どんなもんでしょう。
リギングの動索各所に古くて硬くなった接着剤を滑車に見えるように・・・筆でちょこっと細工をば。
海を紙粘土で作った台座に青を筆でべた塗りしました。(一種の目止めですね・・・いじるたび白い粉があちこち散って不快でした)
乾いてからウォーター・エフェクトを面一に塗布。

岩の塗装はなんか難しく、色々と重ねてみたらまっ茶色の塊になってしまいましたので、乾いてから再度塗装をしたのですが、結局最後まで何回も色を重ねる嵌めに・・・・。
船体が入るところは予めマストを装着する前に、船体をラップでくるんで粘土の上に型取りをしてはいましたが、やはりあちこち引っかかるので、少しずつ削りながら合わせていきます。(隙間があってもこの時点では問題ありません)
船体を乗っけてみましたら、最初に盛り上げた白波の高さが足りなかったので、再度石粉粘土で白波を盛り上げ、ウォーター・エフェクトを塗りこみました。
粘土が完全に乾いた頃合いを見て、ウォーター・エフェクトを皿にとって腰の強い大きめに平筆で波目を描くように塗りつけていきます。
(この筆は100均のダイソー等で売っている硬い筆が便利です)
盛り上がった波頭は前に向かって強く線を入れ、波と波の間は叩き付けるように置いて行きます。
塗装は青系統の色を濃いのから薄いのへ4色くらい用意し、表面で混ざり合うように塗っていきます。
塗料が乾いたら波頭を艶消しの白で塗っていき、叩いて皺っぽくなったところは筋のように白をかすらせます。
白も水中の泡を表現するのに少し青を混ぜたものを塗るのもいい感じです。

波しぶきに綿を利用。
今回は強風で吹き飛ぶ波しぶきを再現したく、脱脂綿を使いました。
そのままでは綺麗すぎるかと思い、白塗料を含ませて使おうと思いましたが、思いのほか固まってしまったので止む無く生綿でしぶきを再現しました。
これと同時に船体を台座に固定。
船体が入る場所にたっぷりとウォーター・エフェクトを注入し、溢れる様に船体を押し付けます。
この時にイメージする角度を入れます。
右舷を岩礁にこすって左に傾いた感じの瞬間が出たでしょうか?

 
船体と台座の間にあふれたウォーター・エフェクトにも綿をかぶせ、飛沫を表現しました。
煙突にはやはり黒っぽく染めた綿を煙として取り付けています。
ボイラーに水が入って爆発寸前の状態に・・・・!
最後に艦載艇を船の傾きにあわせて取り付けて完成です。
本当は夜間、漆黒の闇の中での事件なので、海が青いのは変かもしれませんが、一応海色ということで。


 完成写真はこちらから
 
 製作 kudopapa@副長
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