子供動物園 25年も前のことであろうか、中国が技術供与を求めてきて、東北地方の錦州という所にある変圧器工場を訪れた。 この辺りは、昔風に言えば満州で、荒涼とした道を進んでいくと、草木も無い丘の稜線が続き、馬に乗った馬賊が現れそうな所を通る。 途中にある集落に差し掛かると、鶏やヤギや豚などが走り回っており、子供も一緒に遊んでいる。 一緒に行ったK君がまるで子供動物園だと言っていたが、10歳以上も年代が違うとそのように感じるのだろう。 小学校で終戦を迎えた自分には、まさに自分の子供の頃を思い出させられた。 我が家の身近にいた動物と言うと、本格的な農家ではないので、馬や牛は飼っていなかったが、周りの農家にはいて、珍しいものではない。家にいるのは、豚、ヤギ、鶏である。兎を飼っていた家もあった。 鶏は、卵をとるだけではなく、客があったりするとさばいてご馳走にする。ヤギや豚なども、何軒かで共同で、川原でさばいて分けていたようだ。家で飼っていた犬など堤防工事の土方連中が殺して食ってしまったこともある。 その他、猫と犬は、大抵の家にいた。皆放し飼いであり、犬などは飼い主について歩いている。よその犬が家に来て、我が家の猫を追いかけたりすると、我が家の犬が怒ってその犬を追い払う。 犬猫は、愛玩動物と言うよりも、鼠を取ったり、鼬を追い払ったりするのが役目である。見知らぬ人などはめったにこない。 子供がたくさんいるので何処の犬も、子供は自分達と同格と思っている。季節が来れば、相手を求めて遠くまで出かけていく。猫など結構うるさい。 蛇や蛙など何処にでもいるから、なんとも思わない。小学校で昼食の後、蛙を捕まえてきて女の子の弁当箱に入れておいたなどといういたずらもやっている。 鼠は、家が精米所だったので沢山いて、猫は大抵2匹いた。寝小便に効くなどとおばあさんが何処からか聞いて来て、鼠の肉を食わされたこともあった。 自然の中で、遊びまわっていた子供時代と今の子供と比較すると全く違うのに驚く。 戦前までは、殆どの子供が自然の中で育ってきた。縄文の昔から、子供の育つ環境はさほど変わっていなかったと思われる。そのような中で培われてきた日本人の感性は、戦後の社会の中で失われ変わってしまった。これからどうなっていくのだろうか? 昔を回顧して放送されているテレビのダッシュ村は、われわれの子供の頃の風景とよく似ているが、子供が一人も居ない。 |