二度のあやまち

 いつの頃からか、「過ちは二度繰り返さない」と言うことを頭において過ごしてきた。

二度繰り返さないと言うことは、一度は許すと言うことでもある。

品行方正、学術優秀な人の中には、絶対過ちはおかしたくないということから、自分を縛り、融通が利かず創造性を失っているのを良く見かける。

 もちろん、過ちはおかさないことが望ましい。何事も、新しいことをやる時には、事前に十分調べることも大切である。

しかし、そのような人は調査方法も、「こんなことをするとこんな過ちを犯す、危ない」と言うやり方が多いのではないだろうか。

やっぱり俺が言ったとおり間違ったろう!どうするんだ!」などと言って、自分の頭の良さと先見性を誇示してみたところで問題は解決しない。

こんな過ちがありうるが、こうすれば対処できるだろう」と言う調査方法が必要で、そうしておけば、仮に間違っても「想定の範囲内である」と余裕を持って対処できる。

したがって、調べて致命的な過ちが起こらないと予測できれば、何事にも挑戦できるのである。

 しかし、最近になって、同じような過ちを二度繰り返す。それも一日の内にである。これは、物忘れとシミュレーション能力の衰えであり、明らかに老化現象である。

事例その1

 朝もまだ薄暗いうちに広島のホテルをたって、宮島に向かう。途中、交通事故などで道路が混雑し、いらいらしながら宮島口に7時少し前につく。駐車場には係りもまだ来ていない。
車を止めて宮島に渡船。厳島神社から弥山に向かおうとすると、ロープウエイが動かないという。
仕方が無いので、近くの寺などを見て、9時前に宮島口に戻ると、駐車場の親父が、「ライトがつけっぱなしですよ、一日、行っていたらどうなるか心配でした」と言う。

御礼を言って、岩国へ。錦帯橋の桜はまだ咲いていない。ここから、日本海側に延々と走る。結構、トンネルなども多い。

予定よりだいぶ早いので、途中、日帰り温泉など見つけて、温泉に入り、昼飯を食って休み、さて、出発と言う段階で、またライトがつけっぱなし。

NAVIを見ながら走る時に、トンネルが連続しているとライトをいちいち消さないが、最後に消し忘れたらしい。当然、車から離れる時、警告音があるのだが、それも、二度にわたって無視してしまったと言うことである。

しかし、新しい車は、一定時間で自動消灯となって、ボケても大丈夫。

事例その2

 山陽道を岡山から広島に向かう。快調に飛ばし、西条ICでおり、八本松というところに行く。この辺は山里で、民家の屋根は橙色のかわらを載せ、立派な家が多い。

ここの新広島変電所に、昔、設計した500kV変圧器があるのである。

変電所は無人で変圧器は奥の方にあり、正面からは見にくい。たまたま電力の人が帰るところであったので、横の道が奥まであるか聞くとありますと言うので狭い道だが行ってみることにした。100mほども直進し、そこから直角に曲がると丁度変電所の裏側に着いた。しかし、曲がった先は5mほどで行き止まりになっている。

 そこで写真などとって、帰ろうとしたが、Uターンは、曲がり角でようやっと出来そうである。ということで、ハンドルを切ってバックしようとしたら、後ろに気を取られ左の前輪が側溝に脱輪。側溝が枯れ草で見えなかったこともあるが注意不足。

そこは、4駆の威力で、難なく脱出できた。

 やれやれと、そこから呉に向かう。この後の予定は、江田島の海軍兵学校の見学である。しかし、呉に向かう国道はやたらと混んでいて、当初の予定時間に間に合わないことが分かった。仕方が無いので、江田島の周辺を周回することにする。

例によって、NAVIを見ながら行くと岡の上の集落の中の道を走っていく。ふと、海岸を見ると立派な道が出来ているではないか。NAVIのデータが古いのである。

下に行く道はないかと走っていると横から出てきた軽自動車のおばさんが、狭い農道風の道を下に下りていくので、ここから行けるのだなと行いていくと、下から、別のおばさんの軽自動車が上がってきた。二人とも慣れていて、ちょっとした横の空き地に車を突っ込んだのだが、さて、小生は下り坂をかなりバックしないとよける場所がない。左は石垣の崖、右は壁となっている。少し下がると何とかよけられそうであると下りもしないで軽く判断し、右の壁を気にしてバックしたら左の後輪が脱輪である。

 下りてみると、崖の下までは1m以上あり、ジャッキもうまくかからない。

おばさん連中も来て、まずは、不思議そうな顔をして「何でこんな道に来たの?」などと言い、「無理に下がってもらって申し訳ないわね」などとも言うが心の中では、「下手な運転!」と思っているに違いない。

さて、どうすべきか?と思って崖の下を見ると、そこは、工事機材の置き場になっている。そして、小型のパワーショベルが置いてあった。そして、昼飯を済ませたと思われるおじさんがやってきた。

結局、パワーショベルをタイヤの下にあてがって、簡単に持ち上げ、窮地を脱することが出来たのである。

 この二つの事例を考えるに、まだ、ツキは逃げ去っていないと言うことである。

小生は、くじ引きなどには当たったことがないが、それ以外の場面では、かなり幸運に恵まれる方であった。

 しかし、今後、幸運を当てにして、調査不足、シミュレーション不足のまま物事を進めると必ずや大きな不運にめぐり合うかもしれない。反省させられる旅であった。

こんなことを言っていたのは数年前、今はもっとひどくなっているだろう。
いまや、過ちをお書いたことすら気がつかず、後で分かる始末。